昨夜から今朝にかけてのマスコミはオバマ大統領就任式一色であった。それはまあ、別にどうってことはない。
しかし、異なる局のキャスターやコメンテーターが同じような気になるコメントをしていた。「アメリカは(たかだか200年ちょっとの)歴史の浅い文明国ですから...云々」
ちょっと待って。オバマは確かに黒人(もっともハーフらしいが)初のアメリカ大統領ではあるだろう。しかし、黒人とてその帰来には不幸な歴史こそあれ、アメリカ大陸にとっては白人より新しい外来民族であることに変わりはない。
アメリカ大陸にももともと先住民がいたという大事な事実を、この方々はまったく認識されていない。
もう20年ほど前、知人の元教師は「帰ってきたナバホ」という本で、“インディアン”のナバホ族の歴史と民俗を世に紹介していた。彼らは、南米のインディオや日本のアイヌ同様文字を持たなかったため、その歴史をたどるには残された遺跡と口伝に頼らざるを得ず、謎に包まれた部分も多く研究する人も少ないが、独自の立派な文明を築き上げていたことは紛れもない事実だ。
私は、西部劇が大好きである。初期の白人礼賛の勧善懲悪、マカロニウェスタンにありがちな荒唐無稽なありえないガンプレイを割り引いても、その大陸的単純明快な娯楽性と開拓者精神には大いに惹かれるものがある。ブーム末期の西部劇映画(「許されざる者」など)や近年製作された新しい西部劇物(「ジェシー・ジェームズの暗殺」など)の中には考えさせられるものもある。
残念なのは、先住民族の視点で作られた西部劇というか“アメリカ先住民族版時代劇”のような作品が、私の知る限りは皆無であることだ(どなたかもしご存知だったらぜひ教えていただきたい)。
アメリカに先住民族の大統領が現れる時代は来るのだろうか。その時こそほんとうの「チェンジ」が始まるだろう。