毎日、1000件以上のアクセス、4000件以上の閲覧がある情報発信ブログ。花や有機農業・野菜作り、市民運動、行政訴訟など
てらまち・ねっと



                           (転送、転載大歓迎)
 岐阜県庁の長年の裏金作り。いろんな問題や課題を含んでいる。
 ともかく、納税者である県民としては、やってはいけないことをやった人たち、責任ある人たちに返せるだけは返して欲しいという素朴な思い。

 その一つの「かたち」が、5000人による住民監査請求になった。 住民監査請求の提出のこと

 しかし、監査委員は、あっさりと却下。 その却下の内容

 そこで、県内の12人の弁護士が代理人となって、20年間の裏金を、その歴代の知事、副知事、出納長、監査委員らに返還するよう求める住民訴訟を12月7日に提訴した。原告は325人。利息を含めて約80億円、相手方は最終的に70人ほどになる。

 同時に、知事、副知事、出納長らの常勤特別職の退職金の返還を求める住民訴訟
も提訴。こちらは、私を選定当事者とする本人訴訟。

 10年ほど前、全国の約半数の都道府県で裏金が発覚。そのとき、ほとんどが2から3年分の返還を職員ら関係者に求めて、決着させた。

 昨年2005年2月に新しく就任した岐阜県の古田知事。知事は、今年2006年7月の裏金発覚で、大規模に調査し、「1994年の1年で4億6600の裏金が作られた」と認定し、類推して1992年、93年も同額と認定、92年以降の全額を返還させる、とした。

 その手法、方針、そして決意は高く評価している。
 ついていけない一部の職員たち、自殺者も2人、反撥する県議会多数派・・・知事の心中は察する。踏ん張って、がんばって欲しい。

 しかし、納税者としては、返せるだけは返すべきだという、当然の思い。

 それを実現するための全国に例の無い住民訴訟。争点は、個別の裏金作りの違法性がどうこうではなく、「裏金作りがあったことを知っていた」と認めた知事らの職務としての責任の問題。弁護士の皆さんに期待する。
 
 この2つの住民訴訟の訴状や関連データを、市民運動体の くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク のWebページと、事務局の私のこのブログでまとめて掲載する。
 なお、この「gooのブログ」は「1記事は最大1万文字」という制限があるのでいくつにも分けることになるので、詳しくは、それぞれのリンク先を見て欲しい。

 このページでは、全体の説明やリンクの設定、提訴の新聞記事などを紹介する。

人気ブログランキングに参加中
ワン・クリック10点
→→←←


 まず、80億円という額になったことの説明
● 《県知事の確定した裏金》 《裏金の返還》
 1994年の1年で作った裏金 約4億6600万円=■ (=基本単位)
 1995年から現在までの裏金 約3億円=▲  
     わかりやすい新聞記事の図示 岐阜新聞・特集

 つまり
 (知事が返させるという分)=(過去1992年までの約17億円)=      ■■■▲
 (原告が返すべきという分)=(過去1986年までの約45億円)=■■■■■■■■■▲
 
●《利息のとらえ方》
 知事は、3年定期預金の金利、1年普通預金の金利をからませて複利計算
       その理由付けは 報告書の41から42ページに    同報告書添付の「計算書」
 原告は、民法所定の5%   損害計算書 印刷用PDF版 2ページ 463KB

 つまり
  (知事が付加した分) 上記約17億円に対する約2億1千万円を上乗せ
  (原告の主張する分) 上記約45億円に対する約35億万円を上乗せ

● 提訴のことは新聞記事が分かりやすい  12月8日 新聞各紙

●20年間の裏金の返還請求の住民訴訟の訴状関係
訴状の1ページ目と2ページ目
 
(どの写真もクリックすると拡大。写真右下あたりのクリックでさらに拡大)


3ページ目。請求の趣旨=判決で言い渡しを求める内容。
 

 訴状の全文はこちらに掲載。  前    中    後 
 (gooブログが「1記事は最大1万文字」という制限があるので3分割)

    訴状・本文 印刷用PDF版 27ページ  257KB 



        損害計算書
(知事部局+教育委員会分)と(公安委員会・警察分)
 

      相手方目録 印刷用PDF版 1ページ  58KB
       (この相手方中の「4」には歴代監査委員約50人を、後日追加することになる)
      損害計算書 印刷用PDF版 2ページ 463KB
      代理人目録 印刷用PDF版 1ページ  62KB


● 知事ら常勤特別職の20年間の退職金の返還請求
  


  訴状の全文はこちらから。  前    後 
   (一人歩きするのは「訴状」なので、引用を含めて、長めに作った) 
     訴状・本文 印刷用PDF版 19ページ 280KB

     相手方や支給額などの一覧 印刷用PDF版 1ページ 137KB

人気ブログランキングに参加中
ワン・クリック10点
→→←←


コメント ( 0 ) | Trackback ( )




 岐阜県の裏金や知事ら退職金の返還の住民訴訟などのデータのまとめは 12月10日
 ここは、提訴の報道のこと
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 岐阜県の裏金事件で80億円の返還、知事らの退職金の返還などを求める住民訴訟を12月7日に提訴。
 そのことの概要は、新聞記事が分かりやすい。

 ● 県裏金80億円返還請求 住民グループが提訴  12月8日 岐阜
 県の裏金問題で、県が予算を執行する中で長年にわたって裏金がつくられたのは歴代の県幹部に責任があるとして、住民グループ「くらし・しぜん・いのち県民ネットワーク」(代表・寺町知正山県市議)のメンバーら県民325人が7日、古田肇知事を相手取り、梶原拓前知事ら過去20年間の知事や副知事、出納長らに裏金計約80億円を返還させることを求める訴訟を岐阜地裁に起こした。
 訴状によると、返還を求めるのは梶原前知事と歴代の副知事、出納長、監査委員の計約50人。これらの役職者は予算執行の適正確保に注意、監督義務があったとして、民法に基づき過去20年分の裏金の返還を求めている。
 裏金の損害額は、県のプール資金問題検討委員会の算定に基づき、1986(昭和61)年度から2005年度を約45億円と試算。さらに県公安委員会と県警にも裏金計約7500万円があるとし、遅延損害金も加え約80億円とした。
 7日に会見した原告代理人の山田秀樹弁護士は「裏金をつくる行為よりも、監督義務を怠った県組織の方に問題がある」とし、寺町市議は「過去にさかのぼって返還を求める県民の声は強かった」と話している。

 同時に寺町市議ら14人は古田知事を相手取って、県の退職金支出は違法として、歴代12人の知事、副知事、出納長に退職金計約3億1700万円を返還させるよう求める訴訟も同地裁に提訴した。住民グループは今年9月、2件の訴訟に関する住民監査請求をしたが、ともに県監査委員に却下されている。古田知事は「訴状の内容を見て対応を検討したい」とのコメントを出した。


 ● 市民団体、81億円賠償求め提訴 岐阜裏金 前知事退職金返還も  12月8日 中日
 岐阜県庁の裏金問題で、市民団体の呼び掛けに賛同した県民らが7日、古田肇知事を相手に、独自に推計した過去20年分の裏金など約81億円の損害賠償と、過去20年間に県3役に支払われた退職金約3億2000万円の全額返還を、それぞれ梶原拓前知事らに請求するよう求める住民訴訟を岐阜地裁に起こした。
 訴訟を呼び掛けたのは「くらし・しぜん・いのち県民ネットワーク」の寺町知正代表ら。
 県民325人が名を連ねた損害賠償請求では、梶原前知事と歴代の副知事、出納長、監査委員について「裏金づくりを放置、容認した」と主張。1986年度から20年分の裏金を計45億7000万円と試算し、遅延損害金を加えた約80億8500万円を支払うよう求めた。

 古田知事に対しても、92年度分以前の裏金づくりを不問にしたなどとして、86-91年度分の裏金など計53億4000万円を支払うよう請求した。
 一方、県民14人による退職金返還請求は、3役の退職金支出に関する現行の県の条例を「額や方法の明記がなく違法」と指摘。この条例に基づいて支払われた退職金はすべて違法な支出とし、梶原前知事を含む過去20年の歴代3役は全額を返還するべきだと主張した。
 古田知事は「訴状が届いておらず、訴状の内容を見て対応を検討したい」とコメントしている。
 ■一般OBの返還 今月から始まる

 古田肇岐阜県知事は7日、県庁の裏金問題で、約7億8000万円に上る一般の県職員OB負担分の返還が始まり、今月1日付で18人から計1446万円の返還があったことを明らかにした。県議会の一般質問で答えた。
 利息を含む裏金返還総額約19億2000万円のうち、現職分などOB負担分以外はすでに返還されている。
 OB負担分は約8億7000万円で、うち最も責任が重いとされた梶原拓前知事ら元幹部8人は計8700万円を支払い済み。
 残る一般OBの裏金返還には法的拘束力がなく自発的な返還を求めるしかないため、全額が返還されるかどうかが焦点になっている。
 
■岩佐容疑者、懲戒免職に

● 岐阜裏金 古田知事を提訴 市民団体 「前知事らに80億請求を」  12月8日 読売
 岐阜県庁の裏金問題で、裏金作りに対する注意監督義務を怠り、県民に損害を与えたとして、市民団体「くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク」(事務局=寺町知正・山県市議)のメンバーら県民325人が7日、古田肇知事を相手取り、梶原拓・前知事や歴代の副知事、出納長、監査委員ら約80人に、総額約80億8500万円の支払いを請求するよう求める訴訟を、岐阜地裁に起こした。
 請求しない場合は、古田知事が約53億4200万円を弁済するよう求めている。
 請求額は、民法の「損害賠償が求められるのは過去20年」との規定に基づき、1986年度から2005年度までに作られた裏金の推定額約45億円に、利息や遅延金などを加えて算出した。
 古田知事は「訴状の内容を見て対応を検討したい」とコメントした。
(2006年12月8日 読売新聞)

人気ブログランキングに参加中
ワン・クリック10点
→→←←



コメント ( 0 ) | Trackback ( )




 岐阜県の裏金や知事ら退職金の返還の住民訴訟などのデータのまとめは 12月10日
 ここは、裏金返還の訴状の(1)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

平成18年(行ウ)第25号・岐阜県庁裏金損害賠償履行請求等住民訴訟
原 告;寺 町 知 正 他324名
被 告;岐 阜 県 知 事

訴    状

岐阜地方裁判所 御 中

2006年12月7日
上記原告ら訴訟代理人
弁 護 士   安   藤   友   人 

同     鷲   見   和   人 

同     仲   松   正   人 

同     林       真 由 美 

同     岡   本   浩   明 

同     御 子 柴       慎 

同     山      則   和 

同     横   山   文   夫 
同     笹   田   参   三 

同     山   田   秀   樹 

同     綴   喜   秀   光 

同     冨   田   武   生 

訴訟物の価額 算定不能(160万円)
貼用印紙額  金1万3000円


【 当 事 者 の 表 示 】

原 告  別紙原告目録及び原告代理人目録記載のとおり

被 告  岐阜市薮田南2丁目1番1号(〒500-8570)
        岐 阜 県 知 事   古  田    肇


【 請 求 の 趣 旨 】

1 被告は、別紙相手方目録記載の相手方らに対して、連帯して、金80億8502万1897円及びうち金45億6960万1000円に対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。

2 被告が、別紙相手方目録記載の相手方らに対して、連帯して、金80億8502万1897円及びうち金45億6960万1000円に対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求することを怠ることは違法であることを確認する。

3 被告は、古田肇に対して、金53億4269万7859及びうち金28億7238万円に対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。

4 訴訟費用は被告の負担とする。
 との判決を求める。

【 請 求 の 原 因 】

第1 当事者
1 原告らは、岐阜県の住民である。
2 被告は、岐阜県知事である。
3 原告らが被告に対して損害賠償請求を求める相手方は、次のとおりである。
(1)相手方梶原拓
 1985年4月17日から1988年10月15日まで岐阜県副知事、1989年2月6日から2005年2月5日まで岐阜県知事の職にあった者である。
(2)相手方秋本敏文他
次の期間、岐阜県副知事の職にあった以下の者である。
 秋本 敏文  1989年4月1日から1991年10月14日まで
 岩崎 忠夫  1991年10月15日から1993年9月15日まで
 篠田 伸夫  1993年9月16日から1996年1月18日まで
 森元 恒雄  1996年3月1日から1999年7月8日まで
 大野 慎一  1999年7月9日から2002年3月31日まで
 桑田 宜典  1995年4月3日から2001年3月31日まで
  奥村 和彦  2001年4月1日から2003年3月31日まで
  棚橋  普  2003年4月2日から2006年11月20日まで
(3)相手方森川正昭他
次の期間、岐阜県出納長の職にあった以下の者である。
 森川 正昭  1985年4月1日から1988年6月10日まで
 足立 綱夫  1988年6月23日から1989年3月31日まで
 土屋 文男  1989年4月2日から1992年3月31日まで
 永倉 八郎  1992年4月2日から1995年3月31日まで
 藤田 幸也  1995年4月3日から2001年3月31日まで
 高橋 新藏  2001年4月1日から2002年10月15日まで
 日置 敏明  2002年10月16日から2004年3月31日まで
杉江  勉  2004年4月2日から2006年11月20日まで
(4)相手方監査委員ら
 1986年度から2006年度までの間に岐阜県監査委員の職にあった者である。個人名については追って特定する予定である。
(5)相手方古田肇
 現在、岐阜県知事の職にある者である。
人気ブログランキングに参加中
ワン・クリック10点
→→←←




コメント ( 0 ) | Trackback ( )




 岐阜県の裏金や知事ら退職金の返還の住民訴訟などのデータのまとめは 12月10日
 ここは、裏金返還の訴状の(2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第2 岐阜県庁における裏金作り
1 2006年7月5日、新聞報道を契機に、岐阜県庁におけるいわゆる「裏金作り」が発覚した。岐阜県では、「資金調査チーム」を設けて調査を開始するとともに、弁護士3名による「プール資金問題検討委員会」を設けて調査結果の検討を行った。

2 プール資金問題検討委員会がまとめた「不正資金問題に関する報告書」(以下、単に「報告書」という)などによると、裏金作りの概要は次のとおりであるとされている(なお、上記報告書では裏金作りのことを「資金づくり」と表現しているが、実態を反映していないので、裏金作りと言い換えた)。

(1)1994年度(情報公開条例施行直前)以前の裏金作りの経緯

 ア 1994年度以前の全庁的な裏金作り
1994年度以前は、岐阜県組織のほぼ全体にわたって不正な経理による裏金作りが行われていた。
(ア)1994年度の総所属数
  ①知事部局等が264所属(本庁86、現地機関178)
  ②教育委員会が115所属(本庁11、現地機関19、県立学校85)
  ③総数は、379所属(本庁97、現地機関197、県立学校85)
(イ)1994年度に裏金作りをしていた所属数(金額不明の回答等により推計される所属を含む)
  ①知事部局等が186所属(本庁73、現地機関113)
  ②教育委員会が58所属(本庁9、現地機関16、県立学校33)
以上のとおり、不正な経理による裏金作りをしていた所属は、知事部局等分においては、約7割を超える(約70.4%)所属で行われていたことになる。裏金作りをしていなかった旨の回答をした所属は、予算や職員数等の規模が小さく、裏金作りが困難なところが多いようである。
また、教育委員会においては、現地機関や県立学校を含めると、不正な経理による裏金作りをしていた所属の割合は約50.4%であるが、本庁のみでは81.8%、旅費等の予算が少なく不正な経理による裏金作りが困難であった県立学校を除外すると、不正な経理による裏金作りが行われていた所属は8割を超える(約83.3%強)。
以上のように、1994年度及びそれ以前においては、全庁的に組織ぐるみで不正な経理による裏金作りが行われていたといえる。

 イ 不正な経理による裏金作りが行われ始めた時期
いつ頃からこのような不正な経理による裏金作りが行われるようになったのかは、はっきりしないが、相当以前から行われていたと考えられる。
アンケート調査の結果やプール資金問題検討委員会が行ったヒアリングの結果によれば、遅くとも昭和40年代の初め頃には、既に不正な経理による資金が作られていたことが窺われる。しかしながら、それ以前の何年頃から不正な経理による裏金作りが行われていたのか、昭和40年代初め頃において既に県組織の全体にわたって行われていたのか否か、そのようにして作られた裏金の総額がどの程度の金額であったのか等については、必ずしも明確ではなく、正確な調査は困難である。

 ウ 裏金作りが行われた背景
このような不正な経理による裏金作りが行われた背景には、その要因として、一方で、正規の予算には計上できないが、当時の県の各所属の業務を遂行していくために必要と考えられていた費用(たとえば官官接待費用、土産代、予算措置が講ぜられなかった備品等の購入費用等)を捻出する必要性があったこと(裏金作りはこのような費用に充てるための必要悪という意識があったと考えられる。)、他方で、いわゆる予算使い切り主義の予算執行が行われていたため、予算を年度内に使い切る必要があったこと(予算を全額使わず、これを余して返還することになれば、次年度の予算が減らされる可能性が高く、また、その担当者の予算見積の甘さを指摘される可能性もあったこと)等の事情により、いわば一石二鳥的な発想で、このような不正な経理による裏金が作られてきたものと考えられる。
また、たとえば現地機関等の方が旅費の予算が多く、不正な経理による裏金作りが容易で、他方本庁の主管課の方がこのような裏金作りが困難な場合、本庁主管課の庶務係から頼まれて現地機関の庶務係が不正な経理による資金を作って、これを本庁主管課に回すようなことをしていた部署もあった。

 エ 裏金作りを行った担当者
不正な経理による裏金作りは、各所属の庶務係等を中心として行われてきた。各所属の庶務係に配属された職員は、やむを得ず職務として、前任者から不正な経理による裏金作りを引き継いでいた。庶務係長(総務係長)ないし庶務係長のいない所属においては庶務主任(通称)が、このような不正な経理による作られた資金を管理することが多く、裏金作り自体は、庶務係長や庶務主任自ら行う(人数の少ない部署)こともあれば、庶務係長や庶務主任の命を受けて、庶務係の実際の担当者(旅費請求の担当者、食料費の担当者等)が行うこともあった。

 オ 所属長ないし幹部職員
1994年度以前においては、所属長をはじめとする幹部職員は、当然にこのような事実を知りながら、その費消について指示し、あるいは黙認していた。

(2)1995年度以降の裏金作りの状況
 ア 1995年度ないし1997年度
1995年度から情報公開条例が施行されたことにより、不正な経理による裏金作りは、相当程度制限されていった。1995年度の夏以降に、裏金作りを辞めていった所属が相当数を占めるが、各所属によって様々(本庁より現地機関の方がより遅くまで裏金作りが行われた傾向がある)であり、以前と余り変わらず裏金作りをしていた所属もあった。
また、このような裏金作りの手法の大半が旅費請求によるものであったところ、1997年6月1日から旅費請求の場合の請求受領代理人制度を改め、旅行者本人の銀行口座振込の方式に変更されたために、架空の旅費請求をするのが難しくなり、1997年度には不正な経理による裏金作りは激減した。

 イ 1998年度ないし2000年度
1998年度に新たに裏金作りが行われたのは、全部で5所属であり、衛生専門学校、高冷地農業試験場、中山間地農業試験場のほか、農業総合研究センター、伊自良青少年の家の2所属である。
1999年度に新たに裏金作りが行われたのは、全部で4所属であり、高冷地農業試験場、中山間地農業試験場のほか、農業技術研究所(旧農業総合研究センター)、伊自良青少年の家の2所属である。
2000年度に新たに不正な経理による裏金作りが行われたのは、農業技術研究所の1所属のみである。

 ウ 2001年度以降
2001年度に新たに不正な経理による裏金作りがなされたと認められるようなものは発見することができなかった。
2002年度及び2003年度に新たに不正な経理による裏金作りが行われたのは、いずれも地方労働委員会事務局の1所属のみである。
2004年度以降に新たに不正な経理による裏金作りがなされたと認められるようなものは発見することができなかった。

(3)裏金の総額
 ア 1994年度に作られた裏金の総額(推計額)
1994年度の1年間に、不正な経理により作られた裏金の総額は、以下のとおり、約4億6526万円と推計することができる。
調査チームの調査の報告は、4億6600万円(知事部局等・4億3000万円+教育委員会・3600万円=4億6600万円)であり、上記金額の100万円未満を切り上げれば、金額が一致する。これは、1994年度当時の経理担当職員約850人(教育委員会を含む)へのアンケート調査の結果によるものであり、担当職員の記憶に基づいて記載された金額を合計し、金額不明の回答等については平均額によって計算したものである。
したがって、そもそも担当者の記憶による金額を根拠にして、金額不明の所属については、その所属の業務の内容、規模や予算額等を考慮せずに、その平均額(ただし、教育委員会の現地機関ならばその平均額であり、県立学校であればその平均額)として算出したものであるから、アバウトな数字であることは否定できないが、1994年度は既に11~12年も前のことであり、当時の会計書類は当然のことながら保存期間が過ぎて存在せず、また、金額が不明と述べている所属について、さらに所属の規模や予算を考慮して個別的に不正な経理による資金額を推計するのは困難であると考えられることからすれば、調査チームによる推計額は妥当なものであると判断する。
(ア)知事部局等の各所属の金額
   総務部          1880万0000円
   企画部          1566万7000円
   民生部          2322万2000円
   衛生環境部        1772万2000円
   商工労働部        1235万0000円
   農政部          2208万9000円
   林政部          1069万4000円
   土木部          2980万0000円
   現地機関        2億6484万1000円
   開発企業局         660万0000円
   出納事務局         500万0000円
   議会事務局          40万0000円
   人事委員会事務局      120万0000円
   監査委員事務局       100万0000円
   地方労働委員会事務局     20万0000円
    総  計       4億2958万5000円(≒4億3000万円)
(イ)教育委員会の各所属の金額
   本庁事務局         1785万0000円
   現地機関          878万0000円
   県立学校          904万0000円
    総  計         3567万0000円≒3600万円
(ウ)総合計          4億6525万5000円≒4億6600万円

 イ 1995年度に作られた裏金の総額(推計額)
   知事部局等       1億9145万5000円
   教育委員会         1292万3000円
    合   計      2億0437万8000円

 ウ 1996年度に作られた裏金の総額(推計額)
   知事部局等         6210万3000円
   教育委員会          730万3000円
    合   計        6940万6000円

 エ 1997年度に作られた裏金の総額(推計額)
   知事部局等         1227万2000円
   教育委員会          50万0000円
    合   計        1277万2000円

 オ 1998年度に作られた裏金の総額
前記のとおり、1998年度に新たに裏金作りが行われたのは、以下の5所属(そのうち、衛生専門学校、高冷地農業試験場、中山間地農業試験場については、既に処分・返還済みである)であり、その合計額は689万円である。
  【内訳】
   (ア)衛生専門学校         51万6000円(返還済み)
   (イ)高冷地農業試験場       295万9000円(返還済み)
   (ウ)中山間地農業試験場      161万3000円(返還済み)
   (エ)農業総合研究センター     160万2000円
   (オ)伊自良青少年の家        20万0000円
      合  計          689万0000円

カ 1999年度に作られた資金の総額
1999年度に新たに裏金作りが行われたのは、以下の4所属(そのうち、高冷地農業試験場、中山間地農業試験場については、既に処分・返還済みである。)であり、その合計額は558万2000円である。
  【内訳】
   (ア)高冷地農業試験場       367万9000円(返還済み)
   (イ)中山間地農業試験場       74万2000円(返還済み)
   (ウ)農業総合研究センター      96万1000円
   (エ)伊自良青少年の家        20万0000円
      合  計          558万2000円

 キ 2000年度に作られた資金の総額
2000年度に新たに裏金作りが行われたのは、以下の1所属であり、金額は約12万3000円である。
    農業技術研究所         12万3000円

 ク 2001年度以降
2001年度以降については、以下の1所属を除き、新たな裏金作りは見当たらなかった。
    地方労働委員会事務局   (旅費)2001年度  なし
                     2002年度  約5万8000円
                     2003年度  約1万2000円

(4)裏金作りの手法
 ア 総論
旅費、食糧費、消耗品費、燃料費、印刷製本費、日々雇用の職員の賃金、会議室の使用料、タクシーの賃借料、修繕費、講師謝金などの架空請求により裏金作りが行われてきた。現地機関などでは、農産物等の売却代金を正規の収入として掲げずに保管するなどして裏金作りをした所属等もあった。
そのうち、大半は旅費によるものである。次が相当少なくなって食糧費によるものである。

 イ 旅費による裏金作りの方法(架空請求)について
 (ア)1997年5月末までに行われた方法
当時の旅費の支払のうち精算払いは、すべての出張について事後的に請求受領代理人に対して一括現金払いされていた。所属の職員全員が、年度初めに、その所属の庶務係長等を請求受領代理人とする旨の届出をしていた。
旅費請求の担当の庶務係員は、その月毎に、その所属の職員全員の精算払いの旅費請求(合算請求書)をするが、実際にあった職員の出張に架空の旅費請求を加えて請求し、請求受領代理人に一括現金で支払われ、請求受領代理人から実際に行った出張分が職員に支払われ、残りの額(不正な経理により作られた資金)を保管していた。
   この手続きのためには、所属長名の旅行命令書及び旅行者の旅費請求書を作成する必要がある(出張の場合、通常は「出張伺い」という書面を旅行者が作成していたが、必要な添付書類とされておらず任意の書類という扱いだったため架空の請求の場合には「出張伺い」は作成されていなかった)が、多くの場合は、旅費請求をする時期に全職員の私印が庶務係等へ集められ、庶務係員が、まず所属長(旅行命令権者)名の旅行命令書を作成し、さらに、集められた職員の私印と職員名の入ったゴム印を使って職員(旅行者)の架空の旅費請求書を作成し、支出金調書を作成して旅行命令書に記載された職員に代わって、旅費を現金で受け取っていた。
   旅費の担当者が架空の旅費請求書を作成するにあたっては、職員の休暇、実際の出張と日程が重複しないよう留意して作成する必要があり、その所属の職員の出勤簿も、架空の旅費請求と矛盾しないように、旅費請求の担当者が集められた職員の私印を使用して作成していた。
 (イ)1997年6月1日以降に行われた方法
   1997年6月1日からは、旅費支払方法が改められ、請求受領代理人方式を廃止し、旅行者本人への口座振替になったため、前記(ア)のような方法による裏金作りは困難となり、旅費の架空請求による裏金作りは激減した。
   しかし、極めて稀なケースであるが、口座振替になった後も架空の旅費請求をした例があった。所属長らが所属の職員の協力を求めた上で、各職員の旅費振込用の口座の通帳を預かって、その都度職員に記名押印してもらった払出請求書で、架空の請求分の金額を引き出したり、あるいは、実際の旅費と架空の請求分の旅費が各職員の口座に振り込まれた後、指示された返納額(架空請求分)を返納させたりしていた。
   このような方法により裏金作りをしたのは、既に処分・返還済みの衛生専門学校のほか、畜産課(約10万円)及び岐阜家畜保健衛生所約40万円。ただし、1997年4、5月の従来の方法による裏金作りの分を含む金額である)がある。ただし、畜産課及び岐阜家畜保健衛生所については、1998年度までで、1998年度は行っていない。
   また、2002年度、2003年度に地方労働委員会事務局が行った方法は、自家用車同乗で出張した分について、公共交通機関で出張したかのような旅行命令書を作成し、個人の口座に振り込まれた旅費のうち、交通費分を資金として集めるという方法であった。

 ウ 食糧費による裏金作りの方法について
   食糧費について、1996年度に細分化されるまでは、正規の食糧費として支払えるのは、祝賀会・記念式典等の飲食、来客用飲食、会議用コーヒー、情報交流会経費等であった。また、1995年2月に時間外勤務手当が実績支給されるようになったが、それまでは実績支給されていなかった。
   そのため、正規の予算から支出できない職員の残業用弁当や会議用コーヒー 、 各種交流会経費等に充てる資金を捻出し、併せて正規の予算の使い切りのため、食糧費による不正な経理による裏金作りが行われた。

  その方法は、庶務担当者が、あらかじめ、いろいろな飲食店(レストラン、食堂、弁当屋、料理屋、料亭等)から白紙の請求書用紙(飲食店の記名押印があるもの)をもらっておいて、正規の予算で支払われる架空の会議、来客用飲食、情報交流会等の経費として、架空の請求書を作成(全く架空の場合もあり、人数や金額を水増しする方法もあった)し、これによって支払の決済(支出金調書の作成)をとり、それぞれの飲食店に支払っていた。その支払代金は、実際に飲食を行っていないものであるから、飲食店に対する「預かり金(貸し分)となり、その後、正規の予算では支出できない同店での飲食(対外的な懇談会の経費、幹部ら職員間の飲食費)のために使われるなどしていた。また、飲食店から各所属へ現金をバックさせていた例もあった。

   なお、1995年2月に時間外勤務手当が実績支給されるようになったことから、職員の残業用弁当の支払はなくなった。また、世間で官官接待が問題とされた1995年度(1995年8月)に、出納長を総括責任者とする岐阜県対外交流予算管理委員会を設置して食糧費の総点検を行い、1998年度(1996年4月1日)からは、食糧費について、式典費、対外交流費、会議費、給食費等に細分化されたが、その後も食糧費による不正な裏金作りがなくなってはいない。
 エ 消耗品費、燃料費、印刷製本費、修繕費、役務費(切手代)による裏金作りの方法について

   これらについても、基本的には食糧費と同じように、業者から白紙の請求書(納品書、領収書)をもらっておき、計画する請求書、納品書を作成し、支出金調書を作成し、支払証によって現金を受領して、実際の費用分のみを業者に支払い、残額を不正な経理による資金として保管する場合と、業者への口座振込の場合には、業者への「預かり金」としたり、場合によっては業者から現金をバックさせていたこともあった。

   1998年度、1999年度に新たに裏金作りをしていた伊自良青少年の家は、燃料費(暖房等に使用するボイラーの燃料であるA重油)について、上記のような水増しをした請求書により、現金払いを受けて裏金を作っていた。

   プール資金問題検討委員会においては、上記「ウ」「エ」記載の食糧費、印刷製本費、消耗品費等の預かり金があったと思われる飲食店、事務用品店、印刷会社、タクシー会社等に対し、無記名回答の照会(照会先は13軒)をしたが、回答があった10軒のうち、かつて預かり金があったと回答したものが4軒あったがいずれも1995、1996年頃あるいは2000年頃にはなくなったと回答している。その余は、預かり金は過去も現在もないという回答である。この調査については、万一にでも現在も「預かり金」が残っていることが判明すれば、その返還を求める必要があるために実施したものであるが、現在も残っている先はないと考えられる。
   かつて「預かり金」があったか否かについて、その半数以上がかつても存在しなかった旨回答しているが、この調査につき業者が正直に述べてはくれないだろうことは想定済みであり、かつては相当広い範囲で「預かり金」が存在したと思われる。

 オ 外郭団体等への預かり金について
   上記「ウ」、「エ」記載の食糧費、消耗品費、燃料費等による預かり金については、飲食店、関係の民間業者のみならず、外郭団体や県と密接な関係のある団体に対しても1997年度までは存在した(1998年度には預かり金はなくなっている。プール資金問題検討委員会の調査によれば、1997年度までに預かり金が存在した外郭団体等は3団体(財団法人岐阜県市町村行政情報センター、財団法人岐阜県建設研究センター、財団法人岐阜県職員互助会)であり、パンチ委託料、設計等委託料、消耗品代等の架空請求分を預かり金としたが、予算使い切り主義から行われたものであり、預かり金をバックさせたような事情はなく、これを業務以外の目的で使用されたことがなく、翌年度以降に預かり金となった分について業務委託するような方法をとっていたものであり、不正な経理による裏金作りというよりは、不適切な経理処理がなされたという評価ができる。

 カ 農産物等の売却代金
   試験研究実施に伴って生じた生産物(野菜等)を販売した代金は、正規には県収入に払い込むべきところ、これとは別に農協等を通じて出荷し、その売上金を別口座に入金して裏金作りをするという方法によるものである。
   1998年度以降に新たに裏金作りをしていた高冷地農業試験場、中山間地農業試験場、農業総合研究センター等は、この方法によっていた。

(5) このようにして作られた裏金は、各所属の庶務係長ないし庶務主任らが、現金又は預金で管理していた。そして、総括課長補佐(本庁)や総務課長(現地機関)の承認を得て、費消されていった。
裏金の費消は、業務に関連するものもあるが、職員間における飲食や餞別代にも費消されている。

(6) 各所属で保管されていた裏金は、1998年度から進められた岐阜県庁の組織再編を契機に、職員組合の銀行口座に移し変えられ、隠蔽が図られ、今回の発覚に至った。

人気ブログランキングに参加中


コメント ( 0 ) | Trackback ( )




 岐阜県の裏金や知事ら退職金の返還の住民訴訟などのデータのまとめは 12月10日
 ここは、裏金返還の訴状の(3)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第3 裏金作りに対する責任
1 裏金作りとは何か
 「裏金作り」とは、旅費、食糧費などの架空請求を主な方法とする不正な経理(多くは架空請求による不正な支出であるが、一部に収入に上げるべきものを上げないなどの方法によるものもあるので、支出と収入を含む意味で不正経理と表現する)による資金作りということができる。
 このような裏金作りが行われるときには、岐阜県における予算が適正に執行されていない状態となる。作り出された裏金がどのように使用されたかは本質的な問題ではない。予算執行の適正が確保されていない状態が問題である。
 従って、裏金作りに関わった職員に責任があるのは当然であるが、それにとどまらず、予算執行の適正確保に責任を負うべき者もまた、裏金作りの責任を負うべきである。そのような者とは次のとおりである。

2 知事
(1)知事部局等
 知事には、普通地方公共団体における予算の作成とその執行、会計の監督などの財務権限が集中されている(地自法147条、149条)。従って、当然に、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務がある。
(2)委員会等
 現行法上とられている執行機関の多元主義から、教育委員会などの独立行政委員会に対して、知事は指揮監督権限を有しない。しかし、予算執行の調査権(同221条)にもとづいて調査を行い、必要な措置を講ずることができる。従って、知事部局等に属するのと同様に、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務があるといえる。
(3)小括
 従って、知事は、知事部局に属するか否かを問わず、地方公共団体の予算の執行の全部に対して、その適正が確保されるように注意・監督すべき義務があるものである。

3 副知事
 副知事は、知事を補佐し、職員の担任する事務を監督するなどの職務を行う(同167条)。従って、知事が負うのと同様に、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務がある。この中には、個々の職員が、裏金作りを行わないように注意監督する義務も当然に含まれるものである。

4 出納長
 出納長は、現金の出納及び保管を行うなど、普通地方公共団体の会計事務をつかさどる(同170条)。これは、予算支出に関する命令機関と支出機関が分離されていることを表している。従って、出納長は、支出の面から、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務を負う。

5 監査委員
 監査委員は、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行などを監査する(同199条)。従って、監査に伴う当然の義務として、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務がある。

第4 履行請求の相手方の責任(不法行為責任)
1 相手方梶原拓
(1)裏金作りの認識
 相手方梶原拓(以下、単に「梶原」という)は、知事時代には「岐阜県には裏金はない」と表明し続けていたが、裏金作りが発覚した後の2006年8月8日、自ら設定した会見において、「知事就任当時、裏金作りは半ば公然の秘密となっていた。十分承知していた」旨を発言した。そうすると、副知事時代から裏金作りが行われていることを認識していたことになる。
 また、1996年度に三重県や愛知県などの近県で裏金作りが次々と明らかになり、実態解明が進んでいたころ、森元副知事は、問題が表明化する前に知事がイニシアティブをとって総点検すれば、知事のために苦労してきた職員から批判が起きたり職員の動揺や相互不信などが生じて県庁全体が混乱すると考え、梶原に対して、知事の出張旅費の一部に裏金が使われているとの一例を挙げて庁内事情を説明し、事態の推移を見守ることを進言し、その結果、梶原もこれを了承し、しばらく様子を見ることになった。
 その後、裏金問題に関して全国市民オンブズマン連絡会議が行った全国調査(1997年12月)に対して、岐阜県は「自主調査は行わない」旨を回答した。さらに、1997年2月のイベント実行委員会による裏金作り、2000年6月の衛生専門学校による裏金作り、2001年3月の中山間地農業試験場による裏金作りがそれぞれ発覚した際にも、全庁調査を実施しなかった。
ところで、梶原は、上述した期間、副知事及び知事の職にあっただけでなく、これに先立つ1977年から2年間、岐阜県企画部長の職にあった。
これらを総合すれば、梶原は、少なくとも副知事に就任したときから一貫して、裏金作りを知悉していたということができる。

(2)注意義務違反
 梶原は知事、副知事として、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべきもっとも重い責任を負っている。
 前記「報告書」で指摘されているように、岐阜県庁においては全庁規模で裏金作りが行われていたものであるが、それは梶原が上記注意義務を怠り、裏金作りを放置し、容認し、何の調査もしなかったことによるものである。

(3)不法行為責任
 その結果、後述するとおりの損害を岐阜県に生じさせたものである。
 従って、梶原は、不法行為による損害賠償義務を負うものであり、地方自治法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお、知事には、同243条の2の適用はないので(最高裁昭和61年2月27日判決)、民法上の不法行為責任の問題となる。よって、同236条の適用もなく、除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。

2 相手方秋本敏文他の副知事
(1)裏金作りの認識
 相手方秋本敏文他の副知事(以下、総称して「副知事ら」という)のうち、相手方森元恒雄(以下、単に「森元」という)は、梶原に対して、裏金問題が表明化する前に知事がイニシアティブをとって総点検すれば、知事のために苦労してきた職員から批判が起きたり職員の動揺や相互不信などが生じて県庁全体が混乱すると考え、梶原に対して、知事の出張旅費の一部に裏金が使われているとの一例を挙げて庁内事情を説明し、事態の推移を見守ることを進言しているが、これは裏金作りが行われていることを十分に認識していたものに他ならない。
ところで、森元は、職員の移動や退任の際に多額の餞別が行われていることや予算にはない宴席が多いことなどから、裏金の存在に気づいた旨を述べている。従って、他の副知事も当然気づいてしかるべきである。しかも、副知事のうち自治省あるいは総務省出身の者は、自身が多額の餞別を受け取っている者でもある。また、副知事のうち一般職職員出身の者は、自身が裏金作りに関与した経験を有するものである。これらの副知事らは、裏金作りの全庁調査も行っていない。従って、森元を除く副知事全員もまた、裏金作りを認識していたものである。

(2)注意義務違反
 副知事らは、前述したように予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき注意義務を負う。
 前記「報告書」で指摘されているように、岐阜県庁においては全庁規模で裏金作りが行われていたものであるが、それは副知事らが上記注意義務を怠り、裏金作りを放置し、容認し、何の調査もしなかったことによるものである。

(3)不法行為責任
 その結果、後述するとおりの損害を岐阜県に生じさせたものである。
 従って、副知事らは、不法行為による損害賠償義務を負うものであり、地方自治法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお、副知事に同243条の2の適用があるか一応問題となるが、副知事は同条に規定されている「職員」とは性格を異にするし、そこに列挙されている行為を行うものでもない。よって、同条の適用はなく、民法上の不法行為責任の問題となると解するべきである。その結果、同236条の適用もなく、除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。

3 相手方森川正昭他の出納長
(1)裏金作りの認識
相手方森川正昭他の出納長(以下、総称して「出納長ら」という)は、もと岐阜県の一般職職員であり、裏金作りに関与してきた者たちである。従って、岐阜県庁において全庁的に裏金作りが行われていることを知悉していた者たちである。

(2)注意義務違反
 出納長らは、前述したように予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき注意義務を負う。
 前記「報告書」で指摘されているように、岐阜県庁においては全庁規模で裏金作りが行われていたものであるが、それは出納長らが上記注意義務を怠り、裏金作りを放置し、容認し、何の調査もしなかったことによるものである。

(3)不法行為責任
 その結果、後述するとおりの損害を岐阜県に生じさせたものである。
 従って、出納長らは、不法行為による損害賠償義務を負うものであり、地方自治法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお、出納長には同243条の2の適用があるが、同条は民法上の不法行為責任の特別規定であり、行為が列挙されていることから、これは限定して解釈されるべきである。ところで、裏金作りに関する責任は、個々の行為についてではなく、出納長が負う予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務を根拠とするものであるから、同条は適用されないと解すべきである。よって、同条の規定にも関わらず、出納長に対しても民法上の不法行為責任の問題となると解するべきである。その結果、同236条の適用もなく、除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。

4 相手方監査委員ら
(1)注意義務違反
 相手方監査委員ら(以下、「監査委員ら」という。個人名については追って特定する)は、前述したように予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき注意義務を負う。
 前記「報告書」で指摘されているように、岐阜県庁においては全庁規模で裏金作りが行われていたものであるが、それは監査委員らが上記注意義務を怠り、裏金作りを放置し、容認し、何の調査もしなかったことによるものである。
 監査委員は、不正経理が行われていないかどうかを監査することが本来的な職務であるから、裏金作りを発見しえなかったことそれ自体が問題であり、裏金作りの認識の有無は問題とならない。

(2)不法行為責任
 その結果、後述するとおりの損害を岐阜県に生じさせたものである。
 従って、監査委員らは、不法行為による損害賠償義務を負うものであり、地方自治法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお、監査委員に同243条の2の適用があるか一応問題となるが、監査委員は同条に規定されている「職員」とは性格を異にするし、そこに列挙されている行為を行うものでもない。よって、同条の適用はなく、民法上の不法行為責任の問題となると解するべきである。その結果、同236条の適用もなく、除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。

5 相手方古田肇
 相手方古田肇(以下、単に「古田」という)は、岐阜県知事の職にある者であり、岐阜県の財産の管理権限を有する。この財産の管理権限の中には、岐阜県が被った損害については、これをその相手方に対して請求し、回復すべき義務が含まれる。これを怠るときには、違法な財務会計行為として、自身が損害を賠償すべきことになる。
 ところで、古田は、知事部局等及び教育委員会について、1992年度分より前の裏金作りを不問にし、上記の相手方らに対して損害賠償請求をしないことを表明している。また、公安委員会・県警本部については、調査すら行っていない。これは、岐阜県の損害の回復を違法に怠るものである。そこで、知事部局等及び教育委員会については1986年度から1991年度までの6年分について、公安委員会・県警本部については過去20年間の全額について、賠償の義務を負う。
 従って、地方自治法242条の2第1項第4号前段の履行請求の相手方となる。

6 相手方古田肇を除く相手方らの連帯責任
 相手方古田肇を除く相手方らの行為は、共同不法行為に該当するので、その損害賠償義務は不真正連帯債務となる。

第5 怠る事実の違法確認
 被告は、岐阜県の財産の管理権限を有し、そこには岐阜県が被った損害については、これをその相手方に対して請求し、回復すべき義務が含まれる。従って、上記相手方らに対して損害賠償請求すべき義務がある。
 しかし、被告はこれを行わず、財産の管理を怠っている。
 そこで、地方自治法242条の2第1項第3号により、請求の趣旨記載のとおりの怠る事実の違法確認を求めるものである。

第6 損害
1 過去20年分の裏金が対象
(1) 岐阜県としては、2006年7月5日の発覚以来、「資金調査チーム」の内部調査及び「プール資金問題検討委員会」の検討などを経て、裏金作りの実態を覚知することができた。従って、この経過をもって損害及び加害者を知ったものと扱うべきである。
その結果、民法の不法行為に関する除斥期間である20年間を損害賠償請求の対象期間とすべきこととなる。従って、1986年度分からの裏金が損害となる。

(2) なお、梶原以外の相手方については、就任期間との関係で賠償義務の範囲が問題となる。この点、①就任期間中の裏金作りが含まれるのは当然である。②就任以前の分についても、裏金作りの調査・点検をせずに損害賠償請求を怠ったという意味において、賠償すべき損害の範囲に含まれると解すべきである。さらに、③退任後の分についても、裏金作りの調査・点検を怠ったために、裏金作りが継続されたという意味において、賠償すべき損害の範囲に含まれると解すべきである。結局、相手方全員について、過去20年分の裏金が損害賠償の範囲に含まれることになる。

2 裏金の金額
(1)知事部局等及び教育委員会
ア 1994年度以前の裏金の額
   前記「報告書」によれば、1994年度に作られた裏金は知事部局等で4億3000万円、教育委員会で3600万円、合計4億6600万円とされ、それが、情報公開条例の施行された1995年度は知事部局等で1億9145万5000円、教育委員会で1292万3000円、合計2億0437万8000円になり、以降減少していったとされる。
ところで、裏金作りは昭和40年代から行われるようになり、それが全庁的に広がっていったものとされている。
そうすると、全庁的に広がった裏金作りが、1994年度までは継続して行われており、情報公開条例の施行という外在的要因で減少に転じたにすぎないとみるべきである。従って、少なくとも1986年度から1994年度までは同額の裏金作りが行われていたとみるのが相当である。
1986年度から1994年度の9年間の合計
     年間4億6600万円×9=41億9400万円
イ 1995年度以降の裏金の額
   前記「報告書」による金額を相当なものとする。
1995年度から2005年度の11年間の合計  2億9922万1000円
 ウ 上記の合計  44億9322万1000円

(2)公安委員会・県警本部
 「資金調査チーム」及び「プール資金問題検討委員会」は、公安委員会・県警本部についての調査を行っていない。しかし、全国各地の警察本部に関する裏金作りの実態を考慮すると、岐阜県においもて公安委員会・県警本部について裏金作りが行われていたものとみるべきである。そしてその額は、知事部局等及び教育委員会と同程度とみるべきである。
 そこで、公安委員会・県警本部の裏金作りを、教育委員会の裏金作りから次のとおり推定する。
 前記「報告書」p41によれば、教育委員会の1992年度から1994年度の裏金率は全体の7.7%、1995年度は6.3%、1996年度は10.5%であるから、これを7%とみなす。2006年度における岐阜県全体の予算に占める教育委員会の割合は約25%であり、警察費は約6%であるから、1.7%≒6÷25×7を公安委員会・県警本部の裏金の基本率とみなす。その結果、公安委員会・県警本部の過去20年分の裏金の推計額は、次のとおりとなる。
   44億9322万1000円×1.7%≒7638万円

(3)遅延損害金
 上記は不法行為にもとづく損害であるので、発生のときから年5分の遅延損害金が発生する。裏金作りは、単年度毎に行われていることや、予算消化のためにも行われていることから、各年度の末日までには行われたものと推測することができる。そこで、当該年度の末日である3月31日を遅延損害金の起算日とする。その結果、別紙損害目録①、同②のとおり計算される。

(4)裏金及び遅延損害金の合計
 ア 裏金の合計
知事部局等及び教育委員会 合計44億9322万1000円
公安委員会・県警本部   合計   7638万円
  合   計        45億6960万1000円
 イ 遅延損害金を含めた合計
  知事部局等及び教育委員会 合計79億4987万4038円
公安委員会・県警本部   合計 1億3514万7859円
 合   計        80億8502万1897円

3 相手方古田肇に対する請求額
(1)知事部局等及び教育委員会
 別紙損害目録①のとおり、1986年度から1991年度の6年間分の裏金の額は27億9600万円(=4億6600万円×6)、遅延損害金を含む合計は52億0755万0000円となる。

(2)公安委員会・県警本部
 別紙損害目録②のとおり、裏金の額は7638万円、遅延損害金を含む合計は1億3514万7859円となる。

(3)合計
 裏金の合計は28億7238万円、遅延損害金を含む合計は53億4269万7859円となる。

第7 監査請求
 原告らは、2006年9月29日もしくは同年10月25日に、岐阜県監査委員に対し、地方自治法242条1項にもとづいて、本件と同旨の住民監査請求を行った。
 しかしながら、岐阜県監査委員は、同年11月7日付けをもって上記住民監査請求を却下する旨の通知を行った。
 
第8 まとめ
 よって、原告らは被告に対し、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める次第である。

(別紙)原告目録
(別紙)原告代理人目録
(別紙)相手方目録
(別紙)損害目録①、同②

【証拠方法】
甲第1号証  住民監査請求について(通知)
甲第2号証  不正資金問題に関する報告書

【添付書類】
1 甲号証写し    正副各1通
2 訴訟委任状     325通

人気ブログランキングに参加中
ワン・クリック10点
→→←←


コメント ( 0 ) | Trackback ( )




 岐阜県の裏金や知事ら退職金の返還の住民訴訟などのデータのまとめは 12月10日
 ここは、退職金返還の訴状の(1)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  岐阜県知事等退職金返還請求事件
訴訟物の価格 金1.600.000円
貼用印紙額     金13.000円
予納郵券代金    金10.000円

訴      状  
原告 寺町知正 外13名(目録の通り)
被告 岐阜県知事古田肇
    岐阜市薮田南2-1-1 
                             2006年12月7日
岐阜地方裁判所民事部御中

             請 求 の 趣 旨
1. 被告は、別紙「岐阜県常勤特別職の退職金」一覧表中、「相手方」欄記載の梶原拓らに対して、岐阜県に、「退職金合計額」欄記載の各金額(計3億1千7百万円)及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。

2. 被告は、古田肇に対して、金3億1千7百万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。

3. 被告が、過去20年間、知事、副知事、出納長の職にあったものに対して、金3億1千7百万円を支払うように請求することを怠ることは違法であることを確認する。

4. 被告は、棚橋晋及び杉江勉に対して、常勤特別職退職金を支給してはならない。

5. 訴訟費用は、被告らの負担とする。
  との判決、ならびに仮執行宣言を求める。

           請 求 の 原 因
第1 当事者
1. 原告は肩書地に居住する住民である。
2. 被告は岐阜県知事古田肇(以下、被告という)である。
3. 原告らが被告に対して損害賠償請求もしくは不当利得返還請求あるいは差止め等するよう求める相手方は、以下である
(1) 岐阜県の副知事から知事を4期努めた梶原拓、副知事2人、出納長7人の個人
(2) 現在、岐阜県知事の職にある古田肇個人
(3) 2006年11月20日に退職した副知事、出納長の個人

第2 住民監査請求前置と本件提訴
1. 前知事梶原拓分
 原告らは、2006年9月29日もしくは10月23日に岐阜県監査委員に対して、まったく同一の本文で次の措置を求めて住民監査請求を行った。

「第9 求める措置
 岐阜県庁ぐるみの長年の裏金作り、隠し、費消した事件にかかる支出及び財産の管理に関して、違法もしくは著しく不当であるから、裏金作り・隠し・費消に関与した現職員や前知事ら退職職員に次の趣旨の措置をとるよう住民監査請求する。
1.(略)  2.(略) 
3.梶原前知事は、16年間の知事として退職金全額を返還すること
4.以上3項につき知事等権限ある者の違法な怠る事実を是正すること
5.(略) 」
これに対して監査委員は11月7日付で請求を却下した(監査結果/甲第1号証)。

2. 知事(前知事梶原拓分を除く)、副知事、出納長分
 原告らは、2006年10月12日に岐阜県監査委員に対して、次の措置を求めて住民監査請求を行った。
「第5 監査委員に求める措置
  過去20年間において、岐阜県知事、副知事、出納長ら常勤の三役特別職職員に支給した退職金につき、次の趣旨の措置をとるよう(外部)監査委員に求める。
1.過去20年間に支給した退職金の全額の返還(含む利息)(「梶原知事職」分を除く)
2.前項につき、各交付時の知事及び交付決定者と受益者に対して、各自に対応する退職金相当分の損害(含利息)の返還請求・賠償請求をしない場合の知事の違法な怠る事実の是正
3.退職金支出の根拠が欠如した状態での常勤の特別職三役への退職金支出の差し止                 
4.現状で支給した場合は、知事及び交付決定者と受益者が弁済する義務を負うとの通告」
これに対して監査委員は11月7日付で請求を却下した(監査結果/甲第2号証)。

3. 併合請求
 本件は、原告及び被告を一とし、岐阜県の常勤特別職3役の退職金という対象物も制度も同一であるから、関連請求であることは明らかであり、地方自治法第242条の2の第11項において準用する行政事件訴訟法第43条が準用する同法第17条《共同訴訟》の原始的主観的併合の請求の場合に当たるといえる。

第3 退職金の制度
1. 県庁ぐるみの裏金作りと裏金隠しの発覚
2006年7月5日、岐阜県に長年、多額の裏金作りとその費消があったことが発覚した。被告らは、調査を進め、その報告書には「遅くとも昭和40年代の初めの頃には、既に不正な経理による資金が作られていたことがうかがわれる」と記載された。
被告は、1992年以降の約19億円(含む利息)の返還を現在の県職員及び退職した職員らに求めた。前知事ら幹部の悪意に起因する県庁ぐるみの裏金作りと費消や裏金隠しは甚だしかった。

2. 県議会質問で初めて明らかになった退職金制度の問題点
 「平成18年第4回岐阜県議会定例会(2006年9月21日開会、10月12日閉会)」の一般質問で、岐阜県の常勤の特別職三役(知事、副知事、出納長)の退職金にかかる規定に関して、裏金事件絡みで問題が指摘された。
県民は、10月4日の議会でのやりとりの報道(10月5日付け朝刊)で初めて、当該退職金の根拠等が条例に明記されず、内規において示されているという「給与月額の0.7」を根拠としていたと知らされた。県は条例改正の意向も答弁した。
なお、12月1日開会の県議会に改正条例案を提案している。

第4 本件退職金支出の違法性 
1. 地方自治法は、「額と支給方法」を条例で規定することとしている
退職金支出の根拠を条例に明記すべき理由は、以下のとおりである。
(1) 法律が、条例にその具体的内容を定めることを委任している場合、条例は法律が個別的、具体的に委任した事項について定めを置くことができるにすぎず、条例の規定が法律による委任の限界を超えたり、その趣旨に反する場合には、当該条例は当該法律に反して無効となる。その範囲は、法律で明示されている場合はそれにより、明示されていない場合にはその法律の構造や趣旨・目的、他の法令との整合性等を勘案して解釈することになる(後記(5)引用判決)。

 (2) 地方自治法第204条第1項は、「普通地方公共団体は、普通地方公共団体の長及び・・常勤の職員に対し、給料及び旅費を支給しなければならない」、同第2項「普通地方公共団体は、条例で、前項の職員に対し、・・手当又は退職手当を支給することができる」、同3項は、「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」として各種給付を条例で明記・規定することを定めている(給与条例主義という)。
第204条の2は、「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、これを第203第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない」としている(第203第1項の職員とは、県議や各種委員など非常勤職員)。

(3) この制度の目的は、住民の代表者である議員によって構成される議会が、支給に関する条例を制定する過程で、その必要性、合理性を慎重に審議することで、当該自治体の財政の健全化及び透明化に資することにある。また、その支給基準が条例によって定まることにより、支給の対象となる職員の身分が安定する効果もある。
 前記地方自治法は、「額」を条例で定めなければならないと規定しているから、条例自体にその金額を明記するか、その具体的算出方法を定めるなどして、少なくともその規定によって、誰が見てもその金額を同一のものとして確定し得ることが不可欠な要件である。

 (4) 講学上も、「額と方法の条例明記」は定説である
「新版・逐条地方自治法 第一次改訂版」(松本英昭著/学陽書房)の解説は以下である。

 (204条関連、同626ページ)
「本条では、給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法を条例事項としており、かつ、給与その他の給付はすべて法律又はこれに基づく条例に基づかなければならない(法二〇四の二)から・・・条例中には・・・諸手当についても、規定すべきことはもちろんである・・・額を定め、・・・その支給方法としては・・・期間計算、支給期日等を定めるべきものである。」

 (204条の2関連、同628ページ)
「本条は、昭和三十一年の改正によって新設され、普通地方公共悼体がその職員に対して支給する給与その他の給付は法律(前二条の規定を含む。)に直接根拠を有するか、又は法律の具体的根拠に基づく条例によって給与を支給する場合に限るものとし、それ以外の一切の給与その他の給付の支給を禁じ、給与の体系の整備を図ったものである・・・非常勤職員に対しては報酬及び費用弁償(法二〇三(改正前))、常勤職員に対しては、給料及び族費(法二〇四(同上))の支給を義務づけ、それぞれ該当条文において、これらのものについてはその額並びに支給方法を条例で定めることは要求はしていたが、これらの種類の給与以外の給与その他の給付については、なんら規定がなかった。したがって、一般職の職員については、条例で規定しさえすれば如何なる種類の給与をどのような方法で支給しても差しつかえなく、また、特別職の職員については、条例の規定すらも必要とせず、単なる予算措置のみで極めて曖昧な給与が支給されていても、適当不適当の問題は別として何ら違法の点はなかったため、一般職及び特別職を通じて、給与の実態は地方公共団体ごとに極めて区々であり混乱していた。このような給与体系の欠陥を抜本的に一掃すべく昭和三十一年に改正が行われたのであり、本条の新設は第二百三条及び第二百四条の改正と相まって、給与体系の公明化を図ったものである。

ニ「法律又はこれに基く条例に基」づき支給するとは、法律上直接に給与の種類、額、支給方法等について規定があり、これによって直ちに給与が支給できるような場合に、これに基づいて支給すること、及び法律においてある種の支給について根拠があり、この法律の授権に基づいて条例で具体的に種類、額、支給方法等を定め、それに基づいて支給することをいう。「これに基く条例」と規定したのは、具体的に地方公共団体の職員の給与に関して法律の特別の定めがあり、その法律によって、すなわち当該規定に基づいて条例が内容的に給与の種類、額及び支給方法等を定めることを意味する。これは本法中「法律又はこれに基づく政令」(例 法二2、九六1Ⅳ等)という場合に、具体的に法律に根拠があり、その根拠に基づいて政令が制定される場合に限定しているのと全く軌を一にして解釈されるものである。」

(同、629ページ)
「四 本条に違反する給与その他の給付の支出は、違法であり、その支給を行った職員は地方公共団体に損害を与えた場合損害賠償の責に任じなければならないのみならず、支給を受けた職員も本来請求権のない者であるから、返還の義務があるものである。」

(5) 判例も「額と方法の条例明記」を示している
平成14(行ウ)24事件名/市議費用弁償返還請求事件/平成14年11月18日判決 /名古屋地方裁判所は、次のように判示した。

「法203条3項は,『第1項の者(普通地方公共団体の議会の議員等の非常勤職員)は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。』と規定するとともに,同条5項は,『報酬,費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない。』と規定し,いわゆる各種給付の条例決定主義を定めている。その主たる目的は,同様の規定である法204条3項,204条の2とともに,住民の代表者である議員によって構成される議会が,支給に関する条例を制定する過程で,その必要性,合理性を慎重に審議し,もって普通地方公共団体の財政の健全化及び透明化に資することにあると解され,副次的に,その支給基準が条例によって定まることにより,支給の対象となる職員の身分が安定する効果ももたらされる。
 そして,『費用の額』を条例で定めなければならないと明定していることも考慮すると,条例自体にその金額を明記するか,又はその具体的算出方法を定めるなどして,少なくともこれによってその金額を確定し得るものであることを要すると解するのが相当である(最高裁判所昭和50年10月2日第一小法廷判決・集民116号163頁参照)。
 この見地から検討すると,本件条例5条3項は,『前項に定めるものの外,議長,副議長及び議員が職務を行うについて費用を必要とするときは,その費用を弁償するものとし,その額は,予算の範囲内で市長が定める。』と規定し,費用弁償の額の決定を市長に一任し,かつその支給方法について何ら触れるところがないから,本件条例は,これによって支給金額等を確定し得るものとは到底いえず,明らかに,法203条5項の趣旨に反し,無効というほかない。したがって,本件条例に基づく本件費用弁償の支出は,その時点においては法242条の定める『違法な公金の支出』に当たるといわざるを得ない。」

(同事件の控訴審) 平成14(行コ)67等/市議費用弁償返還請求控訴,同附帯控訴事件/平成15年07月31日/名古屋高等裁判所は、次のように判示した。
「本件条例は,これによって支給金額等を確定しうるとはいえず,法203条5項の趣旨に反し無効であって,本件条例に基づく本件費用弁償の支出(平成13年6月分から11月分までの費用弁償)は,その時点においては法242条の定める『違法な公金の支出』に当たるといわざるをえない」

人気ブログランキングに参加中
ワン・クリック10点
→→←←



コメント ( 0 ) | Trackback ( )




  岐阜県の裏金や知事ら退職金の返還の住民訴訟などのデータのまとめは 12月10日
 ここは、退職金返還の訴状の(2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2. 岐阜県の条例は違法で無効
(1) 本件条例の規定 
「岐阜県の知事、副知事及び出納長給料その他給与条例」(以下、「本件条例」という)の第4条第2項は、「知事等が任期を満了した場合は、予算の範囲内において退職給与金を支給することができる。」と規定し、退職金の支給の有無及び支給の額の決定について、予算執行権を専権的に有する知事に一任しているのである。
本件条例第4条の規定によっては退職金の支給金額を確定することはできないから、明らかに、法第204条第3項の趣旨目的及び同規定に反している。
 地方自治法は、「地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて・・これを解釈し、及び運用するようにしなければならない」(法2条12項)、法令に違反してその事務を処理してはならず(同16項)、前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は無効である(同17項)。
結局、本件条例における退職金の規定は地方自治法に反する違法なもので、無効である。

(2) 他に例が無い規定
 このような規定の仕方は、全国でも岐阜県だけである。

(3) 国から出向した副知事には、原則として支給していない。が、梶原拓は、国家公務員を辞職して1985年に副知事になったので、副知事退職金も得ていた。

3. 地方自治法及び地方財政法の原則
 地方自治法第2条14項(最小経費で最大効果を挙げなければならない原則)に違反し、地方財政法第4条(必要かつ最小限度を越えて支出してはならない原則)に違反する。

4. 退職金の究極の隠し方
 この条例に明記しないということは全国都道府県でもほとんど例が無い。「究極の隠し方」のひとつというしかない。退職金を県民に見せないことは極めて意図的というしかない。
例えば、自治体の長らの退職金は、通例48ヶ月+就任月の49ヶ月が基本となることから一層問題視されている。しかし、岐阜県の場合は、制度上、そのような「1ヶ月加算」を行うことができるかできないかすら分からない。

第5 本件退職金の額と県の損害
1. 常勤特別職三役の職員に支給された退職金の額
 (1) 11月27日に情報公開された資料によれば、運営方針の基本は、知事は「給料月額×就任期間×0.7」、副知事は「同0.5」、出納長は「同0.3」であるという。
しかし、個別の人物について、「1ヶ月加算」したかしていないか県民には分からないし、「百万円切り上げ」との規定の時期にどうであったかも不明であるなど、正確な額は特定しがたい中で、支給したと推測される額を列記する。

 (2) 梶原拓
 1985年4月17日から1988年10月15日まで岐阜県副知事、1989年2月6日から2005年2月5日まで岐阜県知事の職にあった。
 なお、上松陽助は、1977年2月8日から1989年2月5日まで3期知事を務めたが死亡したので、除く。

(3) 副知事 (国から出向の副知事には、退職金が支給されていない)
 桑田宜典は、1995年4月3日から2001年3月31日まで
 奥村和彦は、2001年4月1日から2003年3月31日まで
 なお、坂田俊一は、国から出向、2002年4月1日に副知事に就任したが、2005年7月27日に岐阜県病院からの退院の朝に自殺したことで、最終在職団体である岐阜県が国に就職した時から通算の退職金を支給したと記録されている。が、死亡であるので、除く。

  (4) 出納長 (全員、県の一般職からの就任である)
森川正昭は、1985年4月1日から1988年6月10日まで
足立綱夫は、1988年6月23日から1989年3月31日まで
土屋文男は、1989年4月2日から1992年3月31日まで
永倉八郎は、1992年4月2日から1995年3月31日まで
藤田幸也は、1995年4月3日から2001年3月31日まで
高橋新藏は、2001年4月1日から2002年10月15日まで
日置敏明は、2002年10月16日から2004年3月31日まで

(5) 合計額の算出 
 以上の(2)(3)(4)の合計は、3億1千7百万円である。
本件条例に基づく本件退職金の支出は、公金支出の根拠を欠いている。「退職金」の性質をどう捉えるかに関係なく、岐阜県における常勤特別職三役の職員に退職金について、法的根拠のないままに支出された同退職金はすべて違法な支出である。よって、当該支出と同額の損害がある。
 原告は、民法の定める20年分の当該損害につきその回復の措置を求めるものである。

2. 差し止め請求が無視された場合の損害
 本件住民監査請求においては、本件条例においては退職金は支出できないから、今後の支出の差し止めも請求した。つまり、11月20日に退職した棚橋晋副知事及び杉江勉出納長に対して、現在の規定、つまり条例根拠の無いまま、状態で差し止め請求分が支給された場合は、「各交付時の知事及び交付決定者」と「受益者」が弁済する義務を負う。
 棚橋普は、2003年4月2日から2006年11月20日までの副知事として
 杉江勉は、2004年4月2日から2006年11月20日までの出納長として

3. 遅延損害金
今回発覚の岐阜県庁の裏金使途の一つに「幹部の退職時のせん別」に充当したとされていることからすれば、それは許されない二重退職金であるし、本件退職金隠しに悪意があることは疑いないから、少なくとも民法規定の年5%の遅延損害金をつけて返還すべきである。

第6 不法行為責任と返還義務
1. 知事の責任の原則
 (1) 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を代表する者であり(法第147条)、当該地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務その他公共団体の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し及び執行する義務を負い(法第138条の2)、予算の執行、地方税の賦課徴収、分担金、使用料、加入金又は手数料の徴収、財産の取得、管理及び処分等の広範な財務会計上の行為を行う権限を有し(法第149条)、予算を調整し議会に提出する権能がある(法第211条1項)。したがって、当該長は、財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものであるといえる。
 当該長は、当該地方公共団体から委任を受けた者として、当該地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務その他の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し執行する義務を負っている(法148条、149条)。
 また、普通地方公共団体の長は、補助機関たる職員に対して一般的な指揮監督権を有し(法第154条)、会計事務を監督する義務を負う(法149条5号)。 
以上述べたところから、当該長が一定範囲の財務会計上の行為を委任した場合であっても、当該長はその財務会計上の行為の適否が問題とされている代位請求住民訴訟においては、当該職員に該当するというべきであり、当該長に民法上の不法行為責任があれば、当該長は地方公共団体に対し損害賠償義務がある。

(2) 裏金を容認した知事の責任として
 知事の公務は広範である。梶原拓前知事は、知事時代は「岐阜県には裏金は無い」と表明し続けていたが、2006年8月8日に自ら設定した会見において、「1989年(平成元年)知事就任当時は、裏金づくりは半ば公然の秘密となっていた。十分承知していた」と認めた。その認識に加え、1981年度は建設省大臣官房会計課長も務めて国の会計に熟知していたこと、梶原氏が知事就任前の1977年から2年間県企画部長、1985年(昭和60年)からは副知事を務めたことからすれば、1989年の知事就任以前の岐阜県においても裏金作りがなされていたことを十二分に認識していたと断定することに不合理はない。
 森元恒雄前副知事も、知事の考えによる隠ぺいを認めている。
本件裏金作りが県庁ぐるみの事態であったからこそ、その責任は看過しがたい。
 「給与及び期末手当等」と「退職金」は、別物と認識されている。例えば、前者には返納の規定はないが、後者には、地方公務員法や刑法に抵触した場合に返納する定めがあることをみても、位置づけは異なっている。
 よって原告は、給与及び期末手当などまでは返還すべきとは言わないが、知事在任中の県庁ぐるみの裏金作りを容認した同義的責任、政治的責任、社会的責任として、かつて、支給を受けた退職金全額の返還をすべきである。

2. 副知事の責任の原則
 副知事は、知事を補佐し、職員の担任する事務を監督するなどの職務を行う(法167条)。従って、知事が負うのと同様に、適正な条例を策定・維持し、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務がある。

3. 出納長の責任の原則
 出納長は、現金の出納及び保管を行うなど、普通地方公共団体の会計事務をつかさどる(同170条)。これは、予算支出に関する命令機関と支出機関が分離されていることを表している。従って、出納長は、支出の面から、予算執行の適正が確保されるように注意・監督すべき義務を負う。

4. 損害賠償義務
 条例の提案権を有する知事やその補佐の副知事、会計における支出の法令適合性の審査権限と監督責任を有する出納長が、地方自治法の定めに反して違法で無効な条例を制定しもしくは改めずに、県民に隠して自らの退職金の支給を受けてきたのであるから、歴代の岐阜県の常勤特別職の職員には、職務怠慢と不法行為責任があり、各自の退職金の受取分につき損害賠償義務がある。
 
5. 不当利得返還義務
 前記のとおりの職責を有しているにもかかわらず、適法な制度の実現を怠るままに自ら「退職金」を受領してきた。他県の条例規定を見れば、これら岐阜県の常勤特別職職員には本件退職金制度の誤りに関して、故意があるというべきである。各自の退職金の受取分につき、不当利得として返還する義務がある。
今回の裏金使途の一つに「幹部の退職時のせん別」に充当したとされていることからすれば、それは許されない二重退職金であるし、本件退職金隠しに悪意があることは疑いないから、少なくとも民法規定の年5%の遅延損害金をつけて返還すべきである。

6. まとめ
 原告は、被告に対して、相手方に、前記過去20年間に法令の根拠なく支給された退職金の全額を、岐阜県に返還するよう請求することを求める。
 以上のことから、原告は、請求の趣旨-1につき地方自治法第242条の2第1項4号後段の請求、請求の趣旨-2につき法第242条の2第1項4号前段の請求、請求の趣旨-4につき法第242条の2第1項1号の請求をする。


第7 被告の怠る事実の違法確認と対象期間
1. 損害の回復を怠ることの違法
本件違法な支出により岐阜県に損害が生じているから、被告は関係職員に損害賠償請求もしくは賠償命令しなければならない。損害賠償請求権は「財産」に当たるところ、被告が請求権を行使していないことは、被告の「財産の管理を怠る事実」として違法である。
 本件支出に関して財産の管理を怠る事実の違法があるから、原告は請求の趣旨-3につき地方自治法第242条の2第1項3号に基づき、違法確認を求めるものである。

2. 過去20年間を対象とすべき
 前記過去20年間に法令の根拠なく、時の特別職らの判断で極め情緒的、任意的に支出された退職金の全額は、返還されねばならないところ、職員には地方自治法による時効はあるが、知事の賠償責任は民法が適用される。
被告知事が、過去20年分のきわめて任意な意思決定に基づき支給された退職金につき、「各交付時の知事及び交付決定者」と「受益者」に対して、各自の該当する退職金相当分の損害(含利息)の回復を怠ることは違法である。

第8 本件住民監査請求の特質(正当理由の存在及び期間制限の無いこと)
1. 財務会計行為としての正当理由の存在
 (1) 本件において住民監査請求が支出から1年を途過したことには正当理由がある。
 岐阜県の特別職三役の退職金にかかる規定に関しては、2006年9月の県議会の一般質問で問題とされ、県が条例改正の意向を答弁した。県議会本会議において県議会議員が初めて指摘するほどであるから、退職金額とその支給の方法が定められていない、そのような状態で退職金が出されていた、という事実は県民が知ることができることではない。
仮に条例を見たとしても、「支給する」ではなく「支給することができる」との規定であるから、実際に退職金が支給されているかいないかも県民にはとうてい知ることができない。
支給した場合であっても、その額も「内規」として秘密にされてきたのである。地方自治法に「額と方法」を明記することが定められ、実際に全国の自治体が明記していることからみても、岐阜県における本件支出が意図的に県民に見えないように制度として秘密にされてきたのである。

  (2) 速やかに情報公開請求した
本件住民監査請求で監査委員が、本件退職金支出の額や相手方を明らかにしない可能性もあったことから、請求人の一部は、10月12日の住民監査請求と同じ日に、岐阜県に情報公開請求した。県は、11月27日に関係文書の(一部)を公開した。

  (3) 正当理由に関する最近の判例
 平成10年(行ツ)第69号平成14年09月12日最高裁判所第一小法廷判決(判例集56巻7号1481頁)は、以下である。

 「・・各支出は,市議会の議決を経た上昭和63年度市一般会計予算から種別,科目及び支出理由を明らかにしてされていること,上記各支出に係る支出決定書及び支出命令書が虚偽文書であるということはできないこと,本件各支出金の使途は領収書及び第1審被告Aが京都市会計規則に準じて作成した金銭出納帳によりおおむね明らかにされていることからすると,上記各支出が秘密裡にされたということはできない・・」との高裁判決を破棄し、次のように判示した。
「『正当理由』の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁昭和62年(行ツ)第76号同63年4月22日第二小法廷判決・裁判集民事154号57頁参照)。そして,このことは,当該行為が秘密裡にされた場合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合にも同様であると解すべきである。したがって,・・・客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである。
 ・・・平成元年12月12日,毎日新聞及び朝日新聞は,同月11日開催の市議会普通決算特別委員会において・・・不明朗な支出である旨が指摘された事実を報道したこと,・・・同月13日,京都新聞は,同月12日開催の市議会厚生委員会において・・・不明朗な支出である旨が指摘された事実を報道したことが明らかである。
 そうすると,遅くとも平成元年12月13日ころには,市の一般住民において相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件各財務会計行為の存在及び内容を知ることができたというべきであり,第1審原告らが同日ころから相当な期間内に監査請求をしなかった場合には,法242条2項ただし書にいう正当な理由がないものというべきである・・・」としている。

 この判決等を根拠に東京地方裁判所 平成18年06月16日平成16(行ウ)204違法公金支出金返還(住民訴訟)請求事件は、情報公開制度との関連で次のように判示した。

「東京都の住民がある財務会計上の行為について同条例に基づく開示請求をするのが相当であると考えるべき事情,又はそのように考えるべき端緒となり得る事情が存在しないにもかかわらず,当該住民が当該財務会計上の行為について監査請求をする前提として,同条例に基づく開示請求をしていなければ,当該住民が相当の注意力をもって調査したとはいえないと解するのは,住民に過度の要求をすることになり,ひいては財務会計上の行為の法適合性の確保の要請を害することとなり妥当ではない。
一方,東京都の住民が,マスコミ報道等によって受動的に知った情報も含め,東京都情報公開条例に基づく開示請求をする端緒たり得る情報を有していたにもかかわらず,開示請求をしなかった場合にまで『正当な理由』があると解するのは,財務会計上の行為の法的安定性を確保しようとした地方自治法242条2項の趣旨に反することになる。
そこで,財務会計上の行為の法的安定性の要請とその法適合性の確保の要請との調和を図るという地方自治法242条2項ただし書の趣旨を考慮すると,東京都の住民が東京都情報公開条例に基づく開示請求をする端緒となり得る程度に財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたような場合には,当該行為に関する公文書の開示請求をすることもまた,相当の注意力をもってする調査の範囲内に含まれるというべきである。」

(4) まとめ
 以上、岐阜県の常勤特別職の退職金の支出の方法やその支出額は、県民が知ることができないように秘密裏にされてきたのであって、今般の県議会ではじめて明らかになったのだから、住民監査請求の期間が途過したことには正当理由がある。
 かつ、10月5日の県議会の議論の報道を知ってから後の速やかな期間といえる10月12日に住民監査請求しているから、判例に照らしても、要件は満たしている。
 本年10月4日ころに明らかになった本件につき、過去20年を対象とすることに不適法は無い。

2. 怠る事実に関する請求には期間制限が無い
条例の提案権を有する知事やその補佐の副知事、会計における支出の法令適合性の審査権限と監督責任を有する出納長が、地方自治法の定めに反して違法で無効な条例を制定しもしくは改めずに、県民に隠して自らの退職金の支給を受けてきたのであるから、歴代の岐阜県の常勤特別職の職員には、不法行為責任がある。他県の条例規定を見れば、岐阜県職員の悪意は間違いない。
本件条例が違法か適法か、無効か有効かに関係なく、本件条例には、支給する額の明示が無いばかりか、「予算の範囲内において」「支給することができる」と著しく任意性の高い枠組みである。実際、過去の岐阜県政史において、退職金を支給していない知事もいた事実がある。
すると、(内規にはなんら拘束力も無いのだから)、当時の特別職らの任意の意思決定に、言葉を変えれば「談合」によって退職金を支給してきたというしかない。このことは、実際に、議会に諮らずに、内規を策定、変更などして、支給してきた歴史が如実に示している。
本件住民監査請求には、前記1項の「退職金の支出」という個別の財務会計行為についての請求(住民監査請求書第5の1)とともに、このような不法行為に基づいて、支出の根拠のない「退職金」を支給し、相手方が「受領」してきたことによる岐阜県の損害の回復を怠ることについての請求(同第5の2)があるところ、後者の怠る事実の回復の請求には期間制限は及ばない(最高裁第3小法廷平成14年7月2日判決平成12年(行ヒ)第51号、同第1小法廷判決平成14年10月3日平成9年(行ツ)第62号等)。
よって、過去20年間の損害の回復を求める請求は適法・正当なものである。
以上
《添付書類》 
  別紙 原告目録

《証拠書類》
◆甲第1号証 2006年9月29日もしくは10月23日の住民監査請求に対する11月7日付けの岐阜県監査委員による却下の通知 (原本あり)

◆甲第2号証 2006年10月12日の住民監査請求に対する11月7日付けの岐阜県監査委員による却下の通知 (原本あり)

 その他及び本文引用の学説や判例などは、口頭弁論において、必要に応じて提出する。
                                     以上
人気ブログランキングに参加中
ワン・クリック10点
→→←←



コメント ( 0 ) | Trackback ( )