tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

Gの夏祭り(6)

2007-08-08 19:51:27 | 日記
頭の弱そうな女の子に、明日の晩、また会うことを約束した。その子は、家が近くのようだ。明日は花火大会だが、この夜店にまた遊びに来ると言う。オレは、指切りをしてその子と別れると、少し離れたところから興味深そうに見ていた若い男を捕まえた。
「おまえ、バイトしないか?」
日本語で話しかけたのに、相手の男は何を思ったのか英語で答えてきた。
「What kind of job are you offering?」
確かにオレは日本人離れした体格と容貌だが、日本人ではないと見抜かれたのははじめてだった。なかなかするどい観察眼をしている。しかし、こんな田舎で英語で会話していたら、人目を引いてしまう。オレはあえて、そいつの英語の問いかけが理解できないフリをして会話を続けた。
<明日の8時ちょうどに、この夜店であのミッキーマウスをめがけて射的をすること。謝礼は10万円。ミッキーを打ち落とせたら、必ずあの女の子を探し出してそれを渡すこと>
金に困っていそうな若い男は、2つ返事でOKだった。なぜ、明日かなどと余計な事は聞いてこない。きっと、なにかその男は勘違いでもしているに違いないが、あえてそれを聞き出そうとはしなかった。オレはその場を離れると路肩にとめておいた車に戻り、街中のビジネスホテルに走らせた。さて、これから忙しくなる。
週末の夜なので、探し当てたビジネスホテルは空き部屋があった。そして、そこのホテルは、望みどおりISDNの接続が可能で、部屋からインターネットにアクセスが可能だった。おれは、自分の無料メールアカウントから、なんどか注文をしたことがある香港の会社へメールした。いつものことで、すぐに連絡はついた。オレの使う銃は『アーマライトM16改造銃』で、元々はフェアチャイルド社のアーマライト事業部製のAR-15であるものの、アメリカ軍制式採用にあたりコルト社が製造権を取得し、アメリカ軍名称のM16として納入したものだ。この銃弾の弾頭部分をシリコンゴムにする。そうすることで、ターゲットを傷つけずに打ち落とすことができそうだ。ただし、いつもの火薬量を使うと、ゴムが焼けるし、弾丸速度が速すぎて、ターゲットを破壊しかねない。だから火薬量をいつもの数分の一にする必要がある。火薬量をどれぐらいにするかはターゲットとの距離にもよるが、火薬量を極端に少なくするとその場合に不発になる確率が増大するから、試行錯誤での調整が必要だ。だから、オレはシリコンゴム製の特注の弾頭を発注した。
なお、注文をインターネット経由でするのは、注文のやり取りをすべて最新の暗号化技術を駆使して送受信できることと、国際携帯電話では、発信記録が漏れてしまうからである。プロは連絡方法として携帯は使用しない。シリコンゴム製の弾頭は、明日の一番のキャセイパシフィックで14:30頃に成田に到着する。弾頭を受け取って、すぐに高速を飛ばせばなんとか夕方ごろまでに帰ってこれるだろう。もちろん、途中で山の中に出て、火薬量を変えて試射を行い、ベストな量を決める。射撃位置は、もう、目星をつけてある。人に見られない林のなかだ。プロに抜かりはない。
(明日に続く)