分泌科。いやもとい、文筆家というものどんな一文からも、それを元に掘り下げてドラマを作り出すことができる。だから、言葉の奇術師を自称している私にもそれぐらいのことはできるはずだ。これは、”できたらいいなあ”という私の夢の話ではない。現実にできるという話だ。絶対に妄想なんかではない。今回はプライドを賭けてこれに挑戦してみたいと思う。
ここに、有名な宮崎あおいのダイイング・メッセージがある。
It was the only kiss, the love, I have ever known...
この英文を解説してみよう。まずは"the only kiss"のtheだ。なにしろ「あのキス」なのである。英語では特定されるものにtheをつけるのが一般的だ。誰もが知っているはずの「あのキス」とは、どのキスのことだろう。映画「シネマパラダイス」でたくさんの映画のキスシーンがあった。この場合の「あのキス」は、そのうちのどれかなんだろうか?残念ながら、すぐに思いうかぶものはない。
そして、「あのキス」にはonlyという単語が間についている。どう訳すのだろうか?
私の考えでは、これは「オンリー・キス」、すなわち、「キスだけよ。それ以上のオイタしちゃだめよ」というメッセージだと思うのだが、なにかまちがっているだろうか。このようにさりげなく、エッチを断られると、大抵のオトコどもは萌えるのである。そうなんだよなあ、宮崎あおいは多くのオトコどもを萌えさせてるんだよなあ・・・・・・。いかん。妄想は置いておく。
アメリカのキラーズと言うバンドは、80年代風のシンセを駆使して恍惚感を重視したサウンドで人気だが、デビュー作のアルバムにMr. Brightsideと言う曲があり、その歌詞に”Yeah it was only a kiss (oh yeah)”というフレーズがある。これは、”ただのキスだったね”、あるいは、”たった一回きりのキスだったね”という意味なのだが、宮崎あおいが書いたメッセージとは構文が異なることがおわかりであろう。
次に、難解なのは、kissのあとの ”,the love”の部分だろう。この”,the love”という言葉がどこにかかるのかが不明だ。私の考えでは、これは次に来るのがI have ~だから、そちらにかかっていると考える。つまり、"The love, I have ever known..."文法的には関係代名詞のwhichが省略されている。つまり、"The love which I have ever known...(私がかつて知った愛)"だ。
宮崎あおいは仏文科だった。だから、彼女は英語があまり得意ではないのかもしれない。まあ、それでよく1人でニューヨークまで行けたと疑問に思う点がないわけではないが。
私の推測をもとに彼女のダイイングメッセージを正しい英文に書き直してみよう。
"It was the only kiss. I have ever known the love.(キスだけよ。それ以上のオイタしちゃだめよ。私は愛を知ってるんだから)"
・・・・・んー。萌える。宮崎あおい、最高っすね。ところで、彼女はどんな愛を知ってるんだろうか?
(明日へ続く)