高高度フライトにより太平洋と東京湾を同時に見おろし半島を一望にできるここのテイクオフは、この季節では午前中に風が吹き荒れていても午後にはゆるやかになり、夕方にはベタなぎに変わる。冬の季節風であるナレェが吹き荒れる時は、このようにいつも決まったパターンで風が変化する。だからテイクオフに集まった10数名のフライヤー達は、午前中の風が強くて飛べなかった腹いせに、午後になって風が弱まってきたら一斉にキャノピーを立ち上げて飛び発っていった。
いままでに、このテイクオフに何回か通ったのだが、今日のように空に10数機のパラグライダーが乱舞するのを見たのは初めてだった。あいにく曇り空なのだが、色とりどりの機体が自由気ままに飛ぶ様子を見るのは大きな感激だった。
そのうち、強風の中を飛んでいたインストラクターがテイクオフの上空に戻ってきて、風のチェックを始める。テイクオフにそのままランディングするというトップランを決めて、下で恨めしそうに見ていたパイロット見習い僕に「そろそろ行こうか?」の言葉。
すでに、キャノピーに繋がっている沢山のラインのチェックを終えて、いつでも飛び立てる準備を終えていた僕は2つ返事でテイクオフの位置へ移動。
風はまだ強く、一発目のライズアップで右に引きずられたが、すぐにライズアップを中止して位置を戻して再びライズアップ。この辺のライズアップの多少の失敗でもパニックにならずに冷静にやり直せるようになったのが、年末から取り組んだライズアップの自主トレの成果だ。
キャノピーに正対し、クロスハンドライズアップをやり直すと、今度はキャノピーは頭上でぴたりと停止。インストラクターの指示に従い、体を反転させて崖下と直面。体を前傾させて地面を蹴ると、それだけで体は空中に持ち上げられて僕は静かに滑空しだした。
斜面に沿って何度も180°ターンを繰り返し、斜面上昇風を捕らえてソワリングしていたが、10分ぐらいの飛行で上昇風が弱まり高度が落ちて、テイクオフの崖のすぐ下の山道に不時着。ランディングへ向かう前の不本意な不時着だったが、それでも結構長く飛べたから自分でも満足のいくまずまずのフライトだった。