tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

ニリンソウ咲く上高地(その3)

2008-06-19 20:52:35 | 上高地

 
 

【撮影地】上高地(田代池,木道)(2008.5月撮影)
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水面には濃い朝霧が立ち込めていた。ただいま、気温3℃。池の対岸はほとんど見えないが、最高に気持ちいい。大勢のカメラマンが、朝霧の晴れるのを待って、カメラを構えている。そのうち、風が出てきて霧が晴れてきた。あくまでも静かな大正池に映る焼岳の姿に見惚れる。池を優雅に泳ぐマガモの群れをぼんやり見つめながら、1時間ほど、ただのんびりした時間を過ごす。そして清浄な空気を胸いっぱいに吸い込んだあと、名残惜しさを振り切って、田代池に向かう湿地の上の木道を歩いた。

木道をしばらく歩き樹林帯を抜けると、梓川の涌き水で出来た田代池に着いた。5月の下旬。北アルプスの山々の雪解けで梓川の水量は豊かになり 木々も新緑で美しい。程良い残雪の穂高連峰と緑の木々、そして清き流れの梓川。ここでは、さらに多くのカメラマンが三脚にカメラを載せて水面に映る山々の写真を狙っていた。


ニリンソウ咲く上高地(その2)

2008-06-18 21:00:40 | 上高地
  
  

【撮影地】上高地(大正池)(2008.5月撮影)
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三宅島で、年にひと月だけ解放されるメガネ岩のダイビング。それに出かける週末の2日前に、予約を入れたダイビングサービスから、低気圧接近による海域のクローズが告げられた。大型の低気圧が西から東に日本列島を横断していき、その影響で週末の海は大荒れの予想だった。だが、低気圧の抜けつつある本州では、週末は快晴の天気予報。ダイビング機材をすでに三宅島に送ってしまっていたぼくは、ダイビングをあきらめて、20年に近い想いを果たすために深夜バスでの上高地行に目的地を、急遽、変えたのだった。

土曜の夜の9時30分に横浜を出た深夜高速バスは、約8時間をかけて上高地に到着した。空は快晴で、車窓から見る雪をいだいた焼岳や、カーブを曲がった途端、目の前に飛び込んできた朝日に輝く穂高連峰にぼくは言葉を失っていた。
終点の上高地バスターミナルのふたつ手前、大正4年の焼岳の爆発で梓川がせき止められてできた大正池でバスを降りる。満員だった乗客のほとんどは終点のバスターミナルまで行くらしく、ほんの数名が大正池で降りただけだった。

ニリンソウ咲く上高地(その1)

2008-06-17 21:44:52 | 上高地

  
  

【撮影地】上高地(大正池)(2008.5月撮影)
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大正池→河童橋→明神池→徳沢キャンプ場(登り:3時間)
徳沢キャンプ場→河童橋→バスターミナル(下り:1時間40分)

「カミコウチ」という響きに憧れていたが、訪れたことはなかった。学生のころ、スキー場でスキーのコーチをした縁で知り合った板前さんを訪ねて白骨温泉へ。その時の旅の記憶はほとんど脳裏から消え去っているのだが、新島々の駅で見たような気がする上高地の観光ポスターはかなり印象的だった。まさに、神降地。人を寄せ付けないような、きっぱりとした清新な雪を抱いた霊峰がそこに写っていた。いつかは、行こう。そう思いながらも、社会人になって暇が無くなり、それから長い年月が過ぎていた。長野へは、スキーに来るばかりで、冬以外のシーズンに訪れる機会はなかった。


サイドカーに犬

2008-06-16 20:42:06 | cinema

人がサイドカーに惹かれるようになるきっかけはなんだろう。おしゃれな中年の男性が、ゴーグルをつけた奥さんをサイドカーに乗せて運転しているのにすれ違う。まれに、この映画のように、犬用ゴーグルをつけた大型犬を乗せたドライバーを見かけたことがあるが、やっぱり初老の男性でお金持ち風。・・・・・・カッコいい。
以前、田舎で雑種の犬を飼っていた頃、サイドカーの購入を考えたことがあった。ロシアのサイドカー「ウラル」のコピー。100万円前後。乗っていたバイクが中古のYAMAHA MR50 7万円。原付モトクロスバイクとサイドカーの組み合わせは、いかに大胆で世間知らずなぼくでも、自分の美意識がそれを許さなかった。その上、犬は乗り物に弱く、吐いちまうし。

このサイドカー。戦争映画などでドイツ軍が使用するシーンをよく見かける。これの名前を取ったカクテルがある。ブランデーの香りがよく、口当たりもいいスタンダードカクテルの名作だ。第1次世界大戦の頃なのだが、フランス軍将校が残ったブランデーにありあわせの材料を混ぜて作ったとか、サイドカーに乗ったドイツ軍将校が占領したフランスの民家にあったもので作ったなどいろいろな説があって、そのレシピの由来は確定はされていないようだ。

さて、この映画の原作は、「猛スピードで母は」で第126回芥川賞を受賞した長嶋有のデビュー作にして、第92回文學界新人賞に輝いた「サイドカーに犬」。

1980年代。母親が家出し、父親と弟の男2人に囲まれて暮らすことになった10歳の女の子、薫。ある日、洋子という女が突然押しかけてきて、家事をやり始める。どこからやって来るのかなど、すべてが謎に包まれている洋子。薫は鈍感なのか、しっかりしてるのか状況をじっと見てる。洋子に言わせれば、「薫はハードボイルドな女」なのだ。
結局、子供っていうのは、孤独っていうものに凄く敏感だ。そして母という存在は、意識的に心の隅に押し込めていても、やっぱり深い。多くの子どもは、少しの不安と臆病さを持って、大人になっていく。だから、薫に共感する部分は多く、ふと、自分の子小学生の日々に引き戻されてしまう。ぼくにも、小さな子どもの世界を広げてくれる、そんな人がいたのかもしれない。。麦チョコかあ。エサって言うなよ。

父が運転するサイドカー。後ろのシートには洋子、サイドカーに薫。サイドカーは、タンデムのように距離が近くないうえ、隣の二人を見上げることができる。それが薫のお気に入りなのだ。
子供の思いや感情には無関係に、家族の運命は決まっていく。父親との別れで、甘えベタな娘が見せた精一杯の表現は、頭突き。そして、犬の鳴き声。サイドカーに乗せられて、凛として座っている犬に薫は憧れていた。
父親も娘の意外な行動にとまどいながらも“ワン”と言い返す。胸が熱くなった。

入り江にあるエメラルドグリーンの静かなビーチ。洋子と薫が夏休みに泊まった場所だ。カメの手を探して、この夏にロケ地になった外浦海岸を歩いてみようと思う。


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明日、君がいない

2008-06-15 20:18:52 | cinema

「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」。
テレビの映画解説で親しまれたおなじみの映画評論家 水野晴郎さんが亡くなった。氏は1957年に20世紀フォックス映画に入社して宣伝マンになった。その後、ヘッドハンティングで日本ユナイト映画の宣伝総支配人になった。

宣伝マン時代に、ノルマンディー上陸作戦を描いた大作「ザ・ロンゲスト・デー」の邦題を「史上最大の作戦」と名付けたほか、007シリーズの「ロシアより愛をこめて」を、日本初公開時の邦題として“危機一髪”ではなく、「危機一発」とするなど抜群のネーミングセンスを発揮したらしい。

今は時代が変わって、家族揃ってテレビで映画を見る時代じゃなくなってしまった。しかし、ぼくが子供のころ映画に夢中になったのは、テレビで彼の名解説を見てからのことだ。「史上最大の作戦」にしろ、007にしろ、ワクワクドキドキしながらブラウン管を見つめたものだった。映画って本当にいい。それを教えてくれた
氏の冥福をお祈りいたします。

さて、「明日、君がいない」を観て、子供の頃に、学校に登校して、友人からクラスメートの死を告げられた日の朝を思い出した。
「誰が?」と湧き上がる疑問と、そして「どうして?」
誰が自殺したと言われても、不思議じゃなかったような気がするし、また、誰が自殺したと言われても絶対に信じられないような気がした。
そして、突然の仲間の死に、背負いきれないほどの大きな後悔が走ったのを覚えている。
「話してくれたら助けられたかも知れない・・・・・・」

「午後2時37分」
詰まった感情が嗚咽とともに吐き出され、自殺者にとって、その瞬間だけが世界中でたった一人の被害者だった。
彼女の時計は止まった。学校の授業はまだ、続いていた。
学校の窓の外は、午後の日差しの中で、道路には陽炎がゆらゆら立ち昇っていた。


2000年には世界中で約100万人が自殺しているが、その数は年々増加する傾向があるらしい。
日本でも、戦後、食糧事情や医療のめざましい進歩により、男女ともに平均寿命は前年の記録を毎年更新し続けているのだが、一方で、自分で命を絶つ人も増加している。若者の自殺は、痛々しさを覚えるばかりだ。だが、実際には、中高年の自殺者が一番多いようだ。


最近、TSUTAYAのレンタル半額クーポンで、まとめて借りた話題のDVDの中に
「それでも生きる子供たちへ」から始まり、エリック・スティール Eric Steel 監督によるドキュメンタリー映画「ザ・ブリッジ」、そしてこの「2:37」の映画。
どれも、「準新作」の作品だった。
「ザ・ブリッジ」は、サンフランシスコにあるゴールデンゲートブリッジ(金門橋)を2004年に一年間定点撮影を続けたことによってカメラが捉えた、投身自殺の現場映像と、遺族の証言から構成されている。

「小説や漫画、音楽などが現実の事件に対して影響がある」というのはウソだとする意見がある中で、影響のない作品やメディアなど本当に存在するのだろうかと疑問が持ち上がる。

いったい、世の中はどっちの方向に向かっているのだろうか・・・・・・。鬱