8月13日に、「平成29年度入試からは、統一問題ではありません。」で取り上げた学校選択問題。学力検査問題と学校選択問題を比較してみた。
サンプル問題は県教委ウェブサイトにもあるように、「平成25年度入学者選抜の数学と英語の学力検査問題をベースに作成」されている。また、「英語のリスニング問題は共通」である。リスニングに関しては、これまでにもブログで取り上げている。今回はそれ以外の記述式問題の共通ではない部分を中心に比較・考察した。
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問題構成は以下の通り。
①学力検査問題 |
②学校選択問題 |
問題1(共通) リスニング問題(28点) |
問題2 適語補充問題(12点) レストランの広告を英語で作成する問題。 日本語の広告を参考に空欄4ヶ所に英単語を入れる。 |
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問題3(長文問題) (20点) 英文を読み、設問に答える。 語数361語(6問) |
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問題4(長文・会話問題)(30点) 登場人物4名。 英文を読み、設問に答える。 語数634語(7問) |
問題2(長文・会話問題)(30点) 登場人物4名。 英文を読み、設問に答える。 語数634語(7問) |
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問題3(長文問題) (32点) 英文を読み、設問に答える。 語数709語(7問) |
問題5 英作文(10点) |
問題4 英作文(10点) |
①の問題3と問題4、②の問題2と問題3の問題文の語数は、空欄等を模範解答例で補充したものをオリジナルの問題文と考え、語数をカウントした。
以下は共通と明示されているもの。
①と②のリスニング(28点)
以下は設問が同じもの。
①の問題5と②の問題4の英作文(10点)
英作文は指示が①②とも、「自分の考えや気持ちなどを含め,まとまった内容の文章を英語で書きなさい。」であり、書くべき文の数、採点基準、模範解答とも例示がない。現時点では設問が同じとする。
以下は問題文が同じもの。
①の問題4と②の問題2の長文・会話問題(30点)
設問はすべて同じだが、脚注数が異なる。①は16、②が14である。14は共通で、①にもう2語脚注が加えられている。
①と②を実施する学校で、条件に差違がある。
以下は問題文・設問とも全く別のもの。
①の問題2と問題3(12点と20点)、②の問題3(32点)
①の問題3は脚注5、②の問題3は脚注が21。
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問題を見てみよう。
①の問題2
さいたまレストラン
7月の月曜日と水曜日の特別なランチメニューのお知らせ!
月曜日・・・カレーライス 水曜日・・・スパゲッティー
*ランチタイム 11時から2時まで
*学生の方はドリンクが一杯無料
*どちらも500円
ここまでの日本語を読み、(1)~(4)に1語ずつ入れて、メニューを完成させる。一つ3点。赤字は模範解答である。
Saitama Restaurant
Special lunch menu on every Monday and (1 Wednesday) in (2 July)!
Monday...Curry and rice (1 Wednesday)...Spaghetti
*Lunch time is from 11 a.m. to 2 p.m.
*Students can (3 get) one free drink.
*Every lunch is five (4 hundred) yen.
これはかなりやさしいと思う。
長文読解問題、①の問題3と②の問題3の構成を比べてみる。
①の問題3 |
②の問題3 |
問1 書き換え (go)を適切な形に書き換える。【記】 問2 空所補充 四者択一 1語補充【選】 問3 空所補充 熟語完成 1語補充【記】 問4 内容把握 【記:日本語で】 問5 文補充 三者択一【選】 問6 内容に関する英作文【記:英語で】 Where does Ayako want to go for work experience? 解答例 She(wants to go to an elementay school) for work experience. |
問1 空所補充 現在完了の疑問文を作る)3語【記】 問2 空所補充 四者択一 前後関係が分かるように、1文選ぶ。【選】 問3 内容把握 主題である「sustainable development」について【記:日本語で】 問4 内容に関する英作文【記:英語で】 Where did Mayumi and Ayako want to make green curtain? 解答例 They wanted to make them at their houses and school. 問5 並べ替え 五つの語句の並べ替え。【記】 問6 英作文【記】 「私たちは持続可能な社会をつくるための道を選ぶことができるということを覚えておくべきだ。」 解答例 We should remember that we can choose the way to build a sustainable society. 問7 会話の内容に関する七つの英文から、内容に合致するものを二つ選ぶ。【選】 |
【記:記述】【選:選択】
分量が違うので一概に比べられないが、①は例年並み。②は①と比較すると以下の点が目につく。
問1
答えさせる語数が多い。
問2
選択させるのが文であり、単語ではない。
問3
脚注がついているsustainable[持続可能な]development[開発]について、Mr. Ogawa(先生)が生徒のMayumiに説明したことを読み取り、それを日本語で書かせる。
問4
英作文は①の問6と同じ”Where”の疑問文だが、空所補充型作文ではない。
問5
並べ替えは主語を含まないものなので、動詞がきちんとわかってないと書けない。さらに、過去分詞の後置修飾を含むものなので、難易度もやや高い。
問6
「私たちは持続可能な社会をつくるための道を選ぶことができるということを覚えておくべきだ。」という日本語は、英語に直す場合、かなり「主語」と「(助動詞)+動詞」に距離がある。読点もない。動詞句が見つけられるだろうか。
問7 英文は以下の七つ。
ア There are already a lot of sustainable societies around the world.
イ Mayumi and Ayako guessed that more trees in the small forest would be cut down.
ウ Mr. Ogawa was growing morning glories for class because he was a science teacher.
エ Mayumi and Ayako told their classmates about green curtains, but they weren’t interested.
オ Buses with rooftop gardens run all over the world because they can run with little fuel.
カ Urban farming is good for people who like fresh vegetables, and it is also good for the environment.
キ The writer gave the example of urban farming because he sells the vegetables to supermarkets.
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〔感想〕
条件がやや違う①の問題4と②の問題2の長文・会話問題よりも、①の問題2と問題3・②の問題③(32点分)で差がでることを目指した構成である。全体として学校選択問題は、それなりに難しい(点数の出にくい)ものになることは予測できる。
専門学科理数科と外国語科設置校でも、数学と英語の学校選択問題を実施しない学校がある。(専門学科設置校だから実施義務があるわけではない。)
理数科設置校で普通科・理数科とも実施しないのは、松山とさいたま市立大宮北の2校。外国語科設置校で普通科・外国語科とも実施しないのは、春日部女子、越谷南、坂戸、草加南、南稜の5校。普通科に理数系を設置する伊奈学園総合、普通科に外国語コースを設置する大宮光陵も実施しない。英語の問題と同程度の「難しさの違い」が数学の問題にもあるとしたら、学校選択問題2教科の実施は、かなり真剣に考えなくてはならない。熟考すべきだろう。
学校選択問題を平成30年度以降に実施する学校は、相当の検討(覚悟)が必要だと思える。
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サンプル問題は、埼玉県総合教育センターウェブサイトで公開されている。
http://www.center.spec.ed.jp/ (新しいウインドで開きます。)
(メニューの「入試情報・説明会案内」から)