清算が終わった株式会社の利害関係人が、商法の規定に基づき保存されている会社の帳簿などの閲覧ができるか争われた訴訟の上告審で、最高裁は「商法に規定がないので閲覧請求はできない。」との判断を示した。
平成16年10月04日 第二小法廷判決 平成14年(受)第1289号 書類閲覧等請求事件
しかし、この判決は大いに疑問である。
清算が結了すれば、会社は消滅する。清算結了については登記がなされるが、これは清算結了の事実を公示するものに過ぎないから、清算事務が未だ終了していない(たとえば、残余財産の分配が未了であった等)限り、会社が消滅するものではなく、清算結了の登記を抹消した上で、清算人を選任し、清算事務を遂行しなければならない。実務上も、稀とは言えない程度に生じる事態である。資料保存者選任の趣旨は、こういった問題に対する対処方を含意していると解するべきであり、清算結了後の閲覧請求は認容されるべきである。
したがって、「商法429条は,文言上は,利害関係人の保存者に対する帳簿・重要資料についての閲覧謄写請求権を規定していない。しかしながら,同条が解散した株式会社の帳簿・重要資料を保存することとした趣旨は,当該会社の存続中における業務執行や解散後の清算手続の適否を利害関係人において検証し,その権利ないし利益が侵害された場合には,清算人に対し,その責任を追及することを容易にし,ひいては当該会社の存続中における業務執行や解散後の清算手続の適正化に資することにあるとみられるから,当該会社とかつて利害関係を有した株主等の利害関係人は,同条により,保存者に対し,帳簿・重要資料の閲覧及び謄写を請求することができるものと解すべきである。」として請求を認容した原審の判断を是とすべきである。
江頭憲治郎著「株式会社法・有限会社法【第3版】」(有斐閣)最終頁には、「その閲覧については、会社と利害関係を有した者に請求権を認める見解と、裁判所の認可を得た者に請求権を認める見解とが、対立している(山口賢・新注会(13)429頁注釈9)。」とあるが、いずれにせよ請求権は認められるとする立場であろう。
なお、現行は、資料保存者は清算人その他の利害関係人の請求により裁判所が選任する(商法第429条後段)とされているが、会社法制の現代化作業においては、「原則として清算結了時の清算人がその義務を負う」ものとされる方向である。
平成16年10月04日 第二小法廷判決 平成14年(受)第1289号 書類閲覧等請求事件
しかし、この判決は大いに疑問である。
清算が結了すれば、会社は消滅する。清算結了については登記がなされるが、これは清算結了の事実を公示するものに過ぎないから、清算事務が未だ終了していない(たとえば、残余財産の分配が未了であった等)限り、会社が消滅するものではなく、清算結了の登記を抹消した上で、清算人を選任し、清算事務を遂行しなければならない。実務上も、稀とは言えない程度に生じる事態である。資料保存者選任の趣旨は、こういった問題に対する対処方を含意していると解するべきであり、清算結了後の閲覧請求は認容されるべきである。
したがって、「商法429条は,文言上は,利害関係人の保存者に対する帳簿・重要資料についての閲覧謄写請求権を規定していない。しかしながら,同条が解散した株式会社の帳簿・重要資料を保存することとした趣旨は,当該会社の存続中における業務執行や解散後の清算手続の適否を利害関係人において検証し,その権利ないし利益が侵害された場合には,清算人に対し,その責任を追及することを容易にし,ひいては当該会社の存続中における業務執行や解散後の清算手続の適正化に資することにあるとみられるから,当該会社とかつて利害関係を有した株主等の利害関係人は,同条により,保存者に対し,帳簿・重要資料の閲覧及び謄写を請求することができるものと解すべきである。」として請求を認容した原審の判断を是とすべきである。
江頭憲治郎著「株式会社法・有限会社法【第3版】」(有斐閣)最終頁には、「その閲覧については、会社と利害関係を有した者に請求権を認める見解と、裁判所の認可を得た者に請求権を認める見解とが、対立している(山口賢・新注会(13)429頁注釈9)。」とあるが、いずれにせよ請求権は認められるとする立場であろう。
なお、現行は、資料保存者は清算人その他の利害関係人の請求により裁判所が選任する(商法第429条後段)とされているが、会社法制の現代化作業においては、「原則として清算結了時の清算人がその義務を負う」ものとされる方向である。