印鑑登録証明書の記載事項から「性別」を削除する動きが広まっているようだ。
cf.
川崎市
「性同一性障害者に配慮し、また、印鑑証明書の目的に照らして、性別情報が必須ではないため」というのが理由とされているようだが、印鑑証明書の目的というのは、重要な契約書等に押印したのが契約当事者本人であることを証するため、印鑑登録した印鑑で押印し、かつ、その証として交付を要求されるのが常である実態に鑑み、「本人確認の重要な資料、証拠となる」ことであろう。
印鑑登録制度というのは、法律上根拠があるわけではなく、旧自治省通知に基づき、各自治体の条例で定められている制度である。旧自治省通知は、①氏名、②住所、③生年月日、④性別を記載事項として挙げ、ほとんどの自治体がそれに倣っていたものであるが、性別が挙げられているのは、他の3つと並んで本人を特定するためのミニマムの要素であるからである。
最近あらゆる分野で中性化が進み、名を聞いただけでは男か女か判別し難いことも多いが、憲法第14条が禁止しているのは、性別に基づく「不合理な差別」であって、「合理的な区別」は「個人を尊重」する意味でも逆に要請されることが多いものである。なんでも隠せばいいというものではない。不動産の取引に立会い、登記義務者の本人確認を要求されることがきわめて多い立場である司法書士としては、本人を特定するための重要な要素である性別を印鑑証明書の記載事項から削除することには賛成し難い。
ちなみに、京都市の印鑑登録証明書には性別が掲記されている。