「代表取締役の就任・退任時期とその承諾の要否」について、参事官室で議論がされているようである。
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50923127.html
おそらく、取締役会設置会社への移行の際の現任代表取締役の任期満了&権利義務承継問題等に関する検討等がなされているものと思われる。
葉玉さんは、取締役会設置会社に移行した時点で、従来の代表取締役は任期満了となり、権利義務承継代表取締役となる、しかし、その後の取締役会で代表取締役に再任されれば、特に変更登記は不要である、との見解のようである。
しかし、「任期満了」の点に関して、会社法上明文規定がないことから、法律関係は明確ではない。したがって、取締役会設置会社に移行する時点で辞任→就任が望ましいのでは、との説もある。
私見としては、取締役会設置会社への移行、あるいは取締役会の廃止の際に、代表権は異動しないとの解釈を採るべきではないかと考える。会社の通常の意思として、代表取締役の立場に異動を生じさせることは望んでおらず、また、当然の任期満了あるいは当然の代表権の付与という効果を生じさせる合理性もないからである。
取締役会設置会社においては、取締役会が代表取締役を選定しなければならない(会社法第362条第3項)とされているが、これは新たに代表取締役を選定する場合の規定と解すればよいのであって、取締役会設置会社への移行時に、同規定により現任代表取締役を任期満了させて、改選を要するとまでする必要はないと考える。
取締役会を廃止する場合においても、従来代表権がなかった取締役に当然代表権を付与することを株式会社は意図しないのが通常である。会社法第349条第2項の規定により、一旦各自代表にリセットした上で、新たに代表取締役を定める(同条第3項)ことを余儀なくさせる必要はないと考える。特に代表取締役を定める決議等がなされない限り、代表権については従前どおりと取扱ってよいのではないか。
取締役会設置会社であるか否かは、株式会社の機関設計においてきわめて重要な点であるが、取締役会の設置又は廃止の際に、必ず代表権に異動を生じさせなければならないとする理由はないと考えるものである。