旬刊金融法務事情2007年8月25日号(金融財政事情研究会)に、特集「新信託法とその利用-担保的利用を中心に」があり、その稿の一として、山田誠一(神戸大学大学院法学研究科教授)「セキュリティ・トラスト」がある。
セキュリティ・トラストは、債権と担保権を分離して、担保権のみを信託する制度。すなわち、担保権の担保権者と、その被担保債権の債権者とが異なる仕組みである。「現行法のもとでもできるはずであるというところを前提としながらも、条文上の手当てがあった方が安心して使える・・・」(上記21頁脚注20)らしいが、事実上は新信託法の下でスタートするものである。
しかし・・・不動産登記における実務上の取扱いは未だ明らかではない。このあたりに関する登記事務の取扱いについての通達は、9月28日(金)までには当然発出されるものと思われるが。
なお、金融法委員会の「セキュリティ・トラスティの有効性に関する論点整理」に拠れば、不動産登記において、「いったん債権者が抵当権設定者(債務者又は物上保証人)から抵当権の設定を受けてから、当該抵当権を被担保債権から切り離して受託者に移転することによって信託を設定すること(「二段階設定方式」)ができるのはもちろん、当初から、抵当権設定者が債権者を受益者と指定したうえ受託者に抵当権を設定することによって信託を設定すること(「直接設定方式」)も可能」だとし、「直接設定方式をとったときは、抵当権設定者と受託者が抵当権の設定登記を信託の登記とともに申請することとなるため、登記手続に関しては当初の債権者の関与が不要となる。このような登記の先例はないと思われるが、抵当権設定の登記原因として『平成○年○月○日金銭消費貸借契約同日担保権信託設定』又『「平成○年○月○日信託(同日金銭消費貸借担保)』などという記載が認められうるのではないか。」と論じている。
cf.
平成17年7月10日付「担保権の信託可能(法制審部会方針)、不動産登記ではどう対処?」