東日本大震災で株式会社の取締役等が死亡し,株式会社が当該取締役等の死亡による変更の登記をしなければならない場合において,当該取締役等の相続人の所在不明等により,死亡届等の提出を受けることができない事態が起こり得る。
このような場合,いわゆる職務上請求用紙の使用が可能であるか否かという問題も生ずる。なんとなく消極に解していた(実際,消極説が有力である感。)が・・。
戸籍法
第10条の2 前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二・三【略】
2~6【略】
本件は,戸籍法第10条の2第1項第1号の「自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合」に該当するわけであるから,当該株式会社は,死亡した取締役等に係る戸籍謄本等の交付の請求をすることができるはずである。そうであるとすれば,司法書士が株式会社の取締役等の死亡による変更の登記を受託したときは,当該事務に関する業務を遂行するために必要がある場合(戸籍法第10条の2第3項)であることから,死亡した取締役等に係る戸籍謄本等の交付の請求をすることができると解されよう。