「登記の抹消の申請書に添付すべき書面について」(法務省民商第897号平成24年4月3日付法務省民事局商事課長通知)が発出されているが・・・。
「登記の抹消の申請書には,登記された事項につき無効の原因があることを証する書面を添付しなければならないとされているところ,無効原因証書の作成者が,当該申請書に記載された抹消すべき登記事項に係る登記の申請書に添付された書面の作成者と異なる場合には,裁判書の謄本その他の公務員が職務上作成した書面が添付されている場合を除き,当該登記の抹消の申請は受理することができない」
この商事課長通知は,無効原因のある事実が生じた当時の取締役でなかった者等が無効原因について証明できるものではない,という立場に立つものであろう。
しかし,例えば,株主総会の決議の内容が法令に違反する場合には,当該決議は当然に無効であり,誰から誰に対しても,何時いかなる方法でも,無効を主張できるというのが判例・通説の立場である。
株式会社の取締役は,株式会社に対して,忠実義務(会社法第355条)を負っており,登記された事項につき無効の原因があることを発見したときは,直ちに,これを是正すべき義務があるというべきであろう。
上記商事課長通知は,この場合の是正策につき,限定的に解しており,訴えによることを事実上強制するものである。これは,訴え以外による瑕疵主張を禁止するに等しく,岩原紳作東大教授の説によれば,「弊害が大きい」と批判されているものである(江頭憲治郎「株式会社法(第4版)」(有斐閣)353頁)。
仮に,取締役が,登記された事項につき無効の原因がないにもかかわらず,あたかもあるかのごとく装って,登記の抹消を申請し,当該登記が抹消された場合には,当該取締役は,株式会社に対して,任務懈怠による損害賠償責任(会社法第423条第1項)を負い,また刑事的には,電磁的公正証書原本不実記録の罪(刑法第157条第1項)に該当するのである。これらの真正担保策で十分ではないだろうか。
商業登記法第134条第1項第2号ただし書は,「訴えをもってのみその無効を主張することができる場合」を除いており,それ以外の場合には,株式会社は,無効な登記の抹消を申請することができるのである。真正担保策を講じようとするのは,わからなくもないが,必要以上にハードルを上げ過ぎると,訴え以外による瑕疵主張を禁止するに等しい。
疑義を呈しておく。
「登記の抹消の申請書には,登記された事項につき無効の原因があることを証する書面を添付しなければならないとされているところ,無効原因証書の作成者が,当該申請書に記載された抹消すべき登記事項に係る登記の申請書に添付された書面の作成者と異なる場合には,裁判書の謄本その他の公務員が職務上作成した書面が添付されている場合を除き,当該登記の抹消の申請は受理することができない」
この商事課長通知は,無効原因のある事実が生じた当時の取締役でなかった者等が無効原因について証明できるものではない,という立場に立つものであろう。
しかし,例えば,株主総会の決議の内容が法令に違反する場合には,当該決議は当然に無効であり,誰から誰に対しても,何時いかなる方法でも,無効を主張できるというのが判例・通説の立場である。
株式会社の取締役は,株式会社に対して,忠実義務(会社法第355条)を負っており,登記された事項につき無効の原因があることを発見したときは,直ちに,これを是正すべき義務があるというべきであろう。
上記商事課長通知は,この場合の是正策につき,限定的に解しており,訴えによることを事実上強制するものである。これは,訴え以外による瑕疵主張を禁止するに等しく,岩原紳作東大教授の説によれば,「弊害が大きい」と批判されているものである(江頭憲治郎「株式会社法(第4版)」(有斐閣)353頁)。
仮に,取締役が,登記された事項につき無効の原因がないにもかかわらず,あたかもあるかのごとく装って,登記の抹消を申請し,当該登記が抹消された場合には,当該取締役は,株式会社に対して,任務懈怠による損害賠償責任(会社法第423条第1項)を負い,また刑事的には,電磁的公正証書原本不実記録の罪(刑法第157条第1項)に該当するのである。これらの真正担保策で十分ではないだろうか。
商業登記法第134条第1項第2号ただし書は,「訴えをもってのみその無効を主張することができる場合」を除いており,それ以外の場合には,株式会社は,無効な登記の抹消を申請することができるのである。真正担保策を講じようとするのは,わからなくもないが,必要以上にハードルを上げ過ぎると,訴え以外による瑕疵主張を禁止するに等しい。
疑義を呈しておく。