司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

日経の全面広告が増えている(その後)

2013-02-25 16:37:22 | 会社法(改正商法等)
 本日の日経朝刊第8面に,女性誌CanCamの全面広告が掲載されており,おっと目を引くが,若干場違い感が・・・。

 しかし,日経を読む20代女性も一定数いるのであろうから,そういった方々向けに広告効果がある,という出版社の判断なのであろう。日経は,来る者は拒まずか。

 平成17年2月施行の改正商法で,電子公告制度が採用されるまでは,株式会社が決算公告等の法定公告を行う場合,特に上場企業の大多数は,定款で定める公告方法として「日本経済新聞に掲載する」と定め,同紙に掲載していた。よって,日本経済新聞社が公告掲載収入に依存するところは大きかったと思われる。

 しかし,電子公告を採用する上場企業が増加すると共に,それと反比例して,同社の公告掲載収入は激減した。日経の全面広告が激増しているのは,そのためである。

 平成19年1月頃で,既に全面広告が紙面の4分の1を占めていたが,本日の朝刊では,40面中15面(37.5%)である。他面においても下3分の1,あるいは下2分の1が広告だったりするので,紙面の半分以上が広告,である。経済紙というより,広告紙の中に経済記事がある,と言っても過言ではあるまい。いやはや。

cf. 平成19年1月7日付け「日経の全面広告が増えている」
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「花形」法学部,今は昔

2013-02-25 16:24:23 | いろいろ
日経電子版(有料会員限定)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2401I_V20C13A2CC0000/

 おそらく,本日の夕刊記事であると思われるが。

 ロースクール導入による法曹偏重により,大学研究者,行政,民間企業等に進む有為の人材が不足し,人材の空洞化が進むと見られていたが,法学部への進学自体が減少傾向にあり,拍車がかかりつつあるようだ。
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司法書士が知るべき最近の相続・遺言判例

2013-02-25 10:09:10 | 民法改正
 昨日(2月24日),京都司法書士会会員研修会「司法書士が知るべき最近の相続・遺言判例」が開催。講師は,本山敦立命館大学法学部教授。

 取り上げられた判例を紹介しておく。

○ 相続人の範囲の確定
最高裁平成21年12月4日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=38224&hanreiKbn=02
「養親自身が婚姻又は養子縁組により家に入った者である場合に,その養親が家を去ったときは,民法(昭和22年法律第222号による改正前のもの)730条2項により,その養親と養子との養親子関係は消滅する」
※ 相続事件では,今日なお,旧法が問題となることがある。

○ 相続財産の範囲の画定
最高裁平成22年10月8日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=80749&hanreiKbn=02
「共同相続人間において定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えには,上記債権の帰属に争いがある限り,確認の利益がある」
cf. 月報司法書士2011年9月号「青竹美佳/定額郵便貯金債権の共同相続において同債権が遺産に属することを確認する訴えの利益」
http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/publish/monthly_report/201109/data/201109_11.pdf

東京地裁平成24年1月30日判決
https://www.tains.org/tains/tainswk/free/zeihou_bbs/bbs.cgi?page=&ope=v&num=5137
「被告税理士は、原告らの相続税の申告に際して海外財産が相続財産から漏れることがないように、原告らに対して、海外財産に関する資料の提出を求めるとともに、そのような資料が手元に存在しないのであれば、海外財産の存否及びその内容を調査するよう指示すべきであったのに、これらの措置を何ら執ることなく漫然と、原告から交付を受けた国内資産に関する資料のみに依拠して本件申告書を作成し、原告らの相続税を申告しているのであり、このような行為は、税務の専門家として適正に相続税の申告をすべき注意義務に違反したものであるといわざるを得ない」
cf. 月報司法書士2012年10月号

○ 相続分の調整(特別受益,寄与分)等
最高裁平成21年9月30日第2小法廷決定
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=38052&hanreiKbn=02
「民法900条4号ただし書前段は,憲法14条1項に違反しない」

最高裁平成24年1月26日第1小法廷決定
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81945&hanreiKbn=02
1 遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には,遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が,その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される。
2 特別受益に当たる贈与についてされた当該贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の被相続人の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合,当該贈与に係る財産の価額は,上記意思表示が遺留分を侵害する限度で,遺留分権利者である相続人の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除される。
cf. 月報司法書士2012年9月号「青竹美佳/特別受益となる生前贈与につき持戻し免除の意思表示がある場合において相続分の指定に対して遺留分減殺請求が行われたときの遺留分額の算定方法」
http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/publish/monthly_report/201209/data/201209_08.pdf

最高裁平成22年3月16日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=38703&hanreiKbn=02
※ 判決文からは明らかではないが,偽造された遺言書が司法書士事務所に持ち込まれ,当該司法書士が開封してしまった事案だそうである。

広島高裁岡山支部平成23年8月25日判決
cf. 弁護士江木大輔のブログ
http://ameblo.jp/egidaisuke/entry-11281578653.html
※ 未成年者の特別代理人に選任された弁護士が,相続財産の調査を怠り,漫然と遺産分割協議書案どおりの遺産分割協議を成立させたことに過失があるとされた事案である。
※ 月報司法書士2013年4月号掲載予定だそうである。
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取締役の辞任の「時点」

2013-02-25 01:05:11 | 会社法(改正商法等)
 辞任届において,取締役等の辞任の「時点」が明確でないものが少なくないようである。

 取締役が辞任しようとする場合に,いつから辞任の効力が生ずるかというと,次のパターンがある。

1 口頭の意思表示の場合
(1)即時辞任の意思表示の時
(2)意思表示において定めた将来の日

2 辞任届を提出した場合
(1)辞任届が株式会社に到達した時
(2)辞任届に記載された将来の日(当該日を経過後に到達した場合は,(1))

 また,「平成25年3月1日付け辞任」と「平成25年3月1日をもって辞任」が混同して用いられている嫌いがある。

 前者は,「平成25年3月1日0時」に,後者は,「平成25年3月1日24時」に,辞任の効力が生ずると解するのが正しい理解であるが,逆を意図して辞任届が作成されているケースもまま見受けられるからである。なお,前者の意図からすれば,「平成25年2月28日終了時」と解するのが妥当であろう。

 したがって,辞任によって権利義務関係が生ずる場合を別にすれば,例えば平成25年3月1日10時開催の取締役会の時点においては,前者の場合は既に取締役ではなく,後者の場合は取締役として在任中であるから,定足数への算入の要否,議決に加わることの可否の相違が生ずるものである。

 確かに,登記記録には「辞任の日」が記録されるのみで,「時点」は不明であるが,株式会社と取締役との委任関係がいつ終了したかによって,ある時点において取締役の権利義務が存するか否かという重要な区別が生じるわけであるから,辞任届等を作成する際には,もっと「時点」が明確になるように意識すべきである。

 子供の遊びではないが,「何時何分何秒?」を意識すべきなのである。

 とは言え,難しいことではない。上記の場合分けを意識して,「平成○年○月○日終了時に」「平成○年○月○日開催の株主総会の終結の時に」「平成○年○月○日開催の取締役会の終結の時に」を明確に記載したらよいだけなのである。「時点」に関する特段の意思表示がなければ,「辞任届が株式会社に到達した時」ということになるが,後日の紛争を避ける意味では,受領する株式会社の側において,「受領した時」をきちんと記録しておくべきであろう。

 なお,電話による意思表示については,もちろん上記1の場合であり,電子メールによる意思表示については,上記2に準ずることになるが,登記実務においては,辞任した取締役作成の辞任届の提出がほぼ不可欠であるので,辞任の効力が生じた「時点」を明確にした辞任届を作成するようにすべきである。
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