司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

婚外子相続分訴訟最高裁決定を受けた今後の実務対応について

2013-09-04 21:44:39 | 民法改正
 今後の実務対応について,検討してみた。基準時があいまい不明確であることもあり,なかなか厄介である。登記実務に与える影響も大であるので,可及的速やかに,民事局長通達が発出されることが期待される。家裁実務においても,何らかの指針が示される必要があろう。


○ 基準時(平成13年7月▲▲日)以降に開始した相続について

 本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係は,覆らない。

 法律関係が確定的なものとなっていないものについては,本件規定を適用することはできない。

 可分債権又は可分債務に関して,債務者から任意に支払を受け,又は債権者に任意に弁済をした事案については,「法律関係が確定的なものとなった」とみることはできず,消滅時効が完成しない限り,不当利得返還請求が可能である。

 したがって,これから遺産分割協議等をする場合には,もちろん本件規定は「無効」であることを前提に行うことになる。例えば,遺産分割協議を経ずに,法定相続分で登記をしようと申請されたものが,本件規定によっている場合には,当該登記申請は,受理されない。



○ 基準時(平成13年7月▲▲日)前に開始した相続について

 最高裁決定は,何ら判断していない。

 本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係は,覆らないと推認される。

 法律関係が確定的なものとなっていないものについては,本件規定は「推定合憲」であるとして実務を行うべきであるが,訴訟等により争うことはもちろん可能であり,最高裁が新たな決定をする等により,当該相続開始の時点において「違憲無効」であったとされ,「基準時」が繰り上がる可能性がある。

 可分債権又は可分債務に関して,債務者から任意に支払を受け,又は債権者に任意に弁済をした事案については,「法律関係が確定的なものとなった」とみることはできず,消滅時効が完成しない限り,不当利得返還請求が可能である。

 したがって,これから遺産分割協議等をする場合には,本件規定は「推定合憲」であることを前提に行うことになるが,訴訟等により争われる余地があると考えておく必要がある。例えば,遺産分割協議を経ずに,法定相続分で登記をしようと申請されたものが,本件規定によっている場合,当該登記申請は,受理されるが,後日の訴訟で「基準時」が繰り上がって「違憲無効」の射程が及ぶことになる場合等には,「錯誤」により抹消の登記をしなければならない可能性がある。
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婚外子相続分訴訟最高裁決定全文

2013-09-04 17:09:02 | 民法改正
最高裁平成25年9月4日大法廷決定
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83520&hanreiKbn=02

 最高裁決定が早速アップされている。

「1 民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた
2 本決定の違憲判断は,平成13年7月当時から本決定までの間に開始された他の相続につき,民法900条4号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産分割審判等の裁判,遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさない」

 「先例としての事実上の拘束性」に関して判示しており,極めて異例であるが,今後の違憲判決においては,必要不可欠な説示となりそうである。

 ところで,この決定によれば,平成13年7月以前に開始した相続に関して,今後遺産分割協議等を行う場合,「合憲」として実務を行え,ということになりそうである。やむを得ないのかもしれないが,この「基準時」による区別により,実務の現場で混乱は必至である。

 「平成13年7月▲▲日」と伏字になっているので,「基準時点」である「Aの相続開始時」が不明である。いつの「時点」を基準に実務を行えばよいのであろうか?

 また,

「可分債権又は可分債務については,相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,債務者から支払を受け,又は債権者に弁済をするに当たり,法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから,相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である」(12頁)。

ということから,債務者から任意に支払を受け,又は債権者に任意に弁済をした事案については,「法律関係が確定的なものとなった」とみることはできず,消滅時効が完成しない限り,不当利得返還請求が可能となりそうである。
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婚外子相続分訴訟,最高裁が違憲決定

2013-09-04 15:19:16 | 民法改正
毎日新聞記事
http://mainichi.jp/gougai/news/20130904urgitr090001000c.html

 大方の予想通り(?),最高裁は,民法第900条第4号ただし書の規定が違憲であるとの決定をした。

cf. 中村心東京大学法科大学院客員准教授・判事「もしも最高裁が民法900条4号ただし書の違憲判決を出したら」
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-lr/07/papers/v07part10(nakamura).pdf
※ 中村判事は,過去に最高裁裁判所調査官を務めたことがある方である。

 実務に与える影響は,もちろん大である。

 遺産分割協議を経ずに,法定相続分で登記をしようと申請され,審査中の事件は・・・やはり取下げでしょうね。
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腰パン禁止条例~米国で相次ぎ制定

2013-09-04 11:49:26 | いろいろ
産経新聞記事
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20130901530.html

 幸福追求権との相克で,これも憲法問題になるのでしょうね。
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