商業登記の申請があった場合,登記官は,原則として,登記申請書,添付書面及び登記記録以外の書面を審査の対象とすることができない(商業登記法第23条の2第1項に該当する場合を除く。)。
商業登記法が添付書面を要求するのは,「登記すべき事項の内容」及び「実体上の手続が適正か否か」を証するためであり,登記官は,申請があった「登記の事由」及び「登記すべき事項」につき,これらの書面から「登記すべき事項の内容」及び「実体上の手続が適正か否か」を判断するのみである。
ところが,今般の「株主リスト」は,商業登記法が「証する書面」の添付を要求している趣旨に鑑みて,「登記すべき事項の内容」を証するものではなく,また「実体上の手続が適正か否か」を判断するためのものであるとも言えない。
もちろん,株主総会議事録と「株主リスト」を照らし合わせることによって,株主総会の決議が法定の要件を充足しているか否かを確認することができる補足資料という一面もないではないが,登記官が,申請があった「登記の事由」及び「登記すべき事項」を審査するにあたり,「株主リスト」によってする必要があるとは考えられない。
したがって,「株主リスト」は,商業登記法が要求する添付書面として適格性を有するものとは言えないであろう。
今般の改正により中小企業において株主名簿の整備が促進される効果が期待される反面,上記のとおり,添付書面の適格性の観点からは,疑問の余地が残るところである。