司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「法定養育費」の創設へ検討会が設置

2024-11-23 06:39:22 | 民法改正
日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA222R70S4A121C2000000/

「法務省は22日、父母が離婚後の養育費を取り決めていなくても一定額の支払いを義務付ける「法定養育費」の創設へ検討会を設けると発表した。同日夜に初会合をオンラインで開いた。省令で具体的な金額などを定める。」(上掲記事)

 令和6年改正民法(令和6年法律第33号)による「法定養育費」(民法第766条の3)についての検討が始まる。


改正(新設)後の民法
 (子の監護に要する費用の分担の定めがない場合の特例)
第766条の3 父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合には、父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うものは、他の一方に対し、離婚の日から、次に掲げる日のいずれか早い日までの間、毎月末に、その子の監護に要する費用の分担として、父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額の支払を請求することができる。ただし、当該他の一方は、支払能力を欠くためにその支払をすることができないこと又はその支払をすることによってその生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払を拒むことができる。
 一 父母がその協議により子の監護に要する費用の分担についての定めをした日
 二 子の監護に要する費用の分担についての審判が確定した日
 三 子が成年に達した日
2 離婚の日の属する月又は前項各号に掲げる日のいずれか早い日の属する月における同項の額は、法務省令で定めるところにより日割りで計算する。
3 家庭裁判所は、第七百六十六条第二項又は第三項の規定により子の監護に要する費用の分担についての定めをし又はその定めを変更する場合には、第一項の規定による債務を負う他の一方の支払能力を考慮して、当該債務の全部若しくは一部の免除又は支払の猶予その他相当な処分を命ずることができる。

cf. 父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900355_00001.html
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定款認証手数料の引下げと「定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること」

2024-11-23 05:08:38 | 会社法(改正商法等)
官報
https://kanpou.npb.go.jp/20241122/20241122h01352/20241122h013520002f.html


「公証人手数料令の一部を改正する政令」(令和6年政令第353号)が昨日(11月22日)に公布された。改正政令は,令和6年12月1日から施行される。

 改正後の令第35条は,次のとおりである。

公証人手数料令
 (定款の認証)
第35条 会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項(他の法令において準用する場合を含む。)並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証についての手数料の額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
 一 株式会社又は特定目的会社(資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項に規定する特定目的会社をいう。以下この号及び次号において同じ。)であって、その株式会社の定款に記載され、若しくは記録された資本金の額(定款に資本金の額に関する記載又は記録がなく、かつ、会社法第二十七条第四号に規定する設立に際して出資される財産の価額の記載又は記録がある場合にあっては、当該価額)又は資産の流動化に関する法律第十六条第二項第四号の規定によりその特定目的会社の定款に記載され、若しくは記録された特定資本金の額(次号において「資本金の額等」と総称する。)が百万円未満である場合 三万円(当該株式会社が次のイからハまでのいずれにも該当する場合にあっては、一万五千円)
  イ その株式会社の定款に記載され、又は記録された発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が三人以下であること。
  ロ その株式会社の定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。
  ハ その株式会社の定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと。

 二 株式会社又は特定目的会社であって、資本金の額等が百万円以上三百万円未満である場合 四万円
 三 前二号に掲げる場合以外の場合 五万円


 注意すべきは,第1号ロの「その株式会社の定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。」であろう。

 従来(平成2年商法改正以降),株式会社の設立の大多数は,発起設立で行われているが,定款の記載から,それが明らかな例は稀である。

 例えば,「設立時発行株式の総数」の記載がないのである。

 通常は,全く不都合はなかったのであるが,平成30年11月30日から「実質的支配者となるべき者」に関する申告制度が始まり,「設立する会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人となるべき者」等を把握する上では,「設立時発行株式の総数」と「発起人が割当てを受ける株式の数」が明らかである必要がある。

 私は,従来から,定款には「発起人の氏名又は名称及び住所」のみを記載するパターンを採用しているが,この点に気付いて以降,発起人の決定書の方に,「設立時発行株式の総数」と「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数」等を記載して,申告に際しては,発起人の決定書も提出するようにしていた。

 そこで,今回の改正による「1万5000円」対応であるが,定款に,

1.発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨を明記する(割当てについては,発起人の決定書に委ねる。)。
2.「設立時発行株式の総数」と「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数」を記載する(結果として,「発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける」旨が判ずるようにする。)

のいずれかの対応を採る必要があることになる。

 私は,2でもよいと考えるが,当分の間,公証人は,1の明記を求めるかもである。

「1万5000円」対応に限らず,「発起設立」を採用するのであれば,今後は,上記のような対応が望ましいといえようか。

cf. 「公証人手数料令の一部を改正する政令案」に関する意見募集の結果について
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/1040?CLASSNAME=PCM1040&Mode=1&id=300240902
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