旬刊商事法務2017年4月15日号に,商事判例研究「取締役としての地位に基づく会計帳簿等閲覧謄写請求」がある。東京地判平成23年10月18日(金融・商事判例1421号60頁)の判例評釈である。
東京地裁は,
「会社法及び関連法令上,取締役の会社に対する会計帳簿等閲覧謄写請求権の根拠となる規定は,存在しない」
「取締役からその会社に対する義務の履行に必要な行為であるとして会計帳簿等の閲覧等を求められた会社が,正当な理由なしにこれを拒む場合において,当該不当拒絶により取締役の義務の履行が不能となったときには,その履行が不能となった義務の違反に基づく取締役の責任が会社又は第三者から追及される局面において,当該不当拒絶の事実を取締役のために斟酌し得るものと解すれば足り,取締役の利益が不当に損なわれることがないようにするために,訴えをもって履行を求めることができる権利としての取締役の会計帳簿等閲覧謄写請求権をあえて観念するまでの必要はなく,相当でもない」
と判示して,請求を棄却している。
下記の通説的立場に則ったものであるようである。
「取締役会設置会社の取締役は,取締役会や代表取締役から権限を付与されない限り,業務執行をする権限はない。こうした取締役(非業務執行取締役)は,取締役会の構成員として議事・決議に参加するほかは,特に会社法が認めたもの(会社訴訟の提訴など。会社法第828条第2項等参照)を除き,会社の運営・管理に関与する固有の権限は持たない。たとえば,会社の会計帳簿(会社法第432条)を閲覧するといった,会社の業務や財産の調査権も有しない」(田中亘「会社法」(有斐閣)235頁)
これに対し,江頭教授は,
「閉鎖型のタイプの会社を念頭に置くと,取締役は,大株主又は大株主の派遣者である場合が多いので,強い監督権限を認めることが望ましいこと(会社法第592条参照),及び,取締役会設置会社であっても,監査役設置会社(会社法第2条第9号)以外においては,監査役による調査がないこと(会社法第327条第2項ただし書・第389条第1項)に鑑み,指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社以外においては,『取締役会を構成する個々の取締役が単独で調査権を行使することができる』の見解を支持すべき」(江頭憲治郎「株式会社法(第6版)」(有斐閣)412頁以下参照)であるとする。
通説の立場は,もっともであるし,大株主であれば,会社法第433条第1項の規定に基づく閲覧謄写請求が可能であるわけであるが,江頭説を支持したい感である。
東京地裁は,
「会社法及び関連法令上,取締役の会社に対する会計帳簿等閲覧謄写請求権の根拠となる規定は,存在しない」
「取締役からその会社に対する義務の履行に必要な行為であるとして会計帳簿等の閲覧等を求められた会社が,正当な理由なしにこれを拒む場合において,当該不当拒絶により取締役の義務の履行が不能となったときには,その履行が不能となった義務の違反に基づく取締役の責任が会社又は第三者から追及される局面において,当該不当拒絶の事実を取締役のために斟酌し得るものと解すれば足り,取締役の利益が不当に損なわれることがないようにするために,訴えをもって履行を求めることができる権利としての取締役の会計帳簿等閲覧謄写請求権をあえて観念するまでの必要はなく,相当でもない」
と判示して,請求を棄却している。
下記の通説的立場に則ったものであるようである。
「取締役会設置会社の取締役は,取締役会や代表取締役から権限を付与されない限り,業務執行をする権限はない。こうした取締役(非業務執行取締役)は,取締役会の構成員として議事・決議に参加するほかは,特に会社法が認めたもの(会社訴訟の提訴など。会社法第828条第2項等参照)を除き,会社の運営・管理に関与する固有の権限は持たない。たとえば,会社の会計帳簿(会社法第432条)を閲覧するといった,会社の業務や財産の調査権も有しない」(田中亘「会社法」(有斐閣)235頁)
これに対し,江頭教授は,
「閉鎖型のタイプの会社を念頭に置くと,取締役は,大株主又は大株主の派遣者である場合が多いので,強い監督権限を認めることが望ましいこと(会社法第592条参照),及び,取締役会設置会社であっても,監査役設置会社(会社法第2条第9号)以外においては,監査役による調査がないこと(会社法第327条第2項ただし書・第389条第1項)に鑑み,指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社以外においては,『取締役会を構成する個々の取締役が単独で調査権を行使することができる』の見解を支持すべき」(江頭憲治郎「株式会社法(第6版)」(有斐閣)412頁以下参照)であるとする。
通説の立場は,もっともであるし,大株主であれば,会社法第433条第1項の規定に基づく閲覧謄写請求が可能であるわけであるが,江頭説を支持したい感である。