会社法施行時の司法書士にとっては,常識の類であったが,「去る者,日々に疎し」であろうか。当時の記事を再掲しておく。
会社法第2条第9号
監査役設置会社 監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。
会社法第2条第9号において,「この法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社」とは,公開会社(第327条第1項第1号、同条第2項)又は大会社(第328条第1項、同条第2項、第327条第3項)である。
公開会社でない株式会社であり,かつ,大会社でない株式会社においては,監査役は,任意の機関(第326条第2項)であり,取締役会を置くことで会社法第327条第2項の適用を受けるとしても,それは「取締役会+監査役」を任意に置いている,ということになる。したがって,「監査役を置く会社」であり,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある場合には,監査役設置会社の範疇に属しないことになる(第2条第9号かっこ書)。
会社法施行時の整備法第53条により,既存の小会社であり,かつ,株式譲渡制限の定めがある株式会社は,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものとみなされたので,監査役設置会社に該当しない(ただし,定款変更により,いつでも限定を外して,監査役設置会社となることができる。)。
しかし,このような場合であっても,登記上は「監査役設置会社である旨」の登記(第911条第3項第17号)がなされ,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるか否かは明らかでないので,定款で確認する必要がある。
監査役設置会社に該当するか否かにより,会社法上異なる取扱いとなるので,留意しておく必要がある。
cf.
平成24年4月10日付「会計監査限定監査役と監査役設置会社の登記の問題~会社法制の見直しの裏事情?」
平成18年4月3日付け「監査役設置会社」
会社法
(定款の定めによる監査範囲の限定)
第389条 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第381条第1項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
2~7 【略】
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年7月26日法律第87号)
(監査役の権限の範囲に関する経過措置)
第53条 旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第1条の2第2項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第66条第1項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第389条第1項の規定による定めがあるものとみなす。