tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

持続的賃上げ実現の方策は?

2023年09月26日 13時36分01秒 | 政治
岸田総理は日本経済を冷(低)温経済から適温経済へと目標を掲げ、些か総花的な政策提示をしていますが、マスコミはその中でも、持続的賃上げの実現が主眼といった報道です。

補正予算の季節に合わせての政策展開なので、中でもパートの就労時間自粛の原因と言われる130万円の壁、106万円の壁、の緩和についての報道が賑やかで、50万円の助成も議論の的ですが、これらは、持続的「賃上げ」の外の問題でしょう。

岸田総理は、言葉の発明はお上手で、「適温経済」というのもその一つかと思いますが、残念ながら、いつも内容の説明がありません。

今回は「持続的賃上げ」が主要な問題ですから、これに絡めて解釈すれば、
・輸入価格上昇でコストが上がっても、インフレを嫌い、出来るだけ製品値上げはしない、というのが低温経済。
・輸入価格が上昇すれば、それに輪をかけて賃上げし、値上し、忽ちインフレを起こす、というのが高温経済。
という事ではないでしょうか。

前者が一昨年までの日本、後者は今のアメリカです。
日本はアベノミクス第1弾で円レートが80円から120円と50%の円安になっても、輸入穀物が値上がりしても、賃金も物価も上がらず、ずっと消費不振の低成長経済でした。

アメリカは(ヨーロッパも)、原油や穀物の輸入価格が上がれば、忽ち輸入インフレは賃上げを触発し、原材料と賃金のコストアップで今回も10%レベルのインフレ景気になり、中央銀行が金利引き上げで景気の過熱を抑えるのに大童です。

日本も、第一次石油危機の時は、今の欧米と同様でしたが、その行き過ぎた反省から、インフレ嫌いの冷温経済になったようです。

「冷温」も良くない、「高温」も良くない、ならば「適温」と岸田流の造語は巧みですが、ではいかにして「適温」に導くか、これが問題です。

岸田さんはその答えの中心に「持続的賃上げ」を置いています。これも「言葉」としては正解です。しかし、どうやって、持続的賃上げを可能にするかの説明はありません。

現実に賃上げをするのは、企業労使です。特に、賃上げを仕掛けるのは労働組合です。

殆どの(今の日本の)経営者は、昔の「労使一体」の「企業は人間集団」という意識はお忘れのようですから、業績好調は「ボーナスの多少の調整」で十分とお考えでしょう。

労働組合も昔の様に大幅賃上げとは言いません。組合の一部には毎年10%の賃上げを掲げるグループもあります。しかし社会的支持は得られないようです。

こうした中で、日銀と共に掲げる「2%インフレターゲット」という安定した「適温経済」に、如何なるシナリオで持って行くのか、それが問われているのです。

今、日本のインフレは疾うに2%を超えています。明らかにインフレですが、その原因には目に見えるものが2つ、潜在的なものが1つあるようです。

目に見えるものは、1つに国際的なエネルギー、穀物その他資源価格の値上がり、2つに異常な円安です。
潜在的なものは、こうした中で、賃金と物価の関係を如何に理解すべきか政府、日銀、アカデミアの解説がなく、国民の意識は混乱し困惑、結果は不安感、不満足感になって、生活必需品などの出来るところが値上げに動いているという現実ではないでしょうか。

という事で、国民は、「政府どうする」、「日銀どうする」と、具体的な、腑に落ちる説明を聞き、対応の仕方を考えようと思っているのではいでしょうか。

そうした十分な説明・情報を得て、労使の国民も、みんな「いかにして持続的賃上げを実現するか」を議論するようになれば、その中から「適温経済」への道が見つかるでしょう。

日本はもともと『コンセンサス社会』です。「持続的賃上げ」は政府から与えられるものではなく、政府が提供する正しい情報をもとに、国民が(労使が)考え出すものでしょう。