tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

そごう・西武労働組合のストライキの示唆するもの

2023年09月01日 15時45分53秒 | 経済
今回の「そごう・西武労働組合」のストライキについては、従来の日本企業の在り方、日本的労使関係の在り方の中で考えますと、大変解りにくい事になっているように感じられます。

「そごう・西武」という企業は「セブン&アイ・ホールディングス」傘下の企業です、持ち株会社であるセブン&アイ・ホールディングスが、アメリカの「フォートレス・インベストメント・グループ」というファンドに9月1日に「そごう・西武」という会社を売ることが決まっているのです。

ストライキは8月31日池袋の本店で行われました。マスコミは、池袋の東口の顔がどうなるのか心配とか、長いなじみの西武百貨店はどうなるのでしょうとかいう街の声を拾っていました。

「そごう・西武労組」の最大の心配は当然、雇用の安定です。
日本の企業同士の話であれば、雇用の問題については事前に十分に話し合って、というようなことで、納得ずくの中で労使関係・雇用問題とったことも話し合われ、労働組合の意向も尊重されるのが当然と考えられます。

しかし、この話は、セブン&アイ・ホールディングスとアメリカのフォートレス・インベストメント・グループの間でのことで、「フォートレス」はアメリカのトップクラスの不動産の投資ファンドという事ですから、雇用安定の話も多少はあったようですが、組合の心配は大きいでしょう。

池袋の顔というすぐれた立地です。日本の地価はこれから騰がりそうといった客観情勢も考えれば、不動産投資ファンドの考えることは解っているという意見も多いでしょう。

勿論「そごう・西武」の経営陣がどうなるかという事も含めて、セブン&アイ・ホールディングスが労組のストライキなどは無視して、企業そのものの売却を決めるように、労組の手の届かないところで、物事が決まっていくようなことが当然心配でしょう。

考えてみれば、かつてバブルのころ、アメリカからM&A(企業その物の売買)という概念が入って来て、1997年には、戦後禁止されていた「持ち株会社」が解禁され、環境は整ってきたという事でしょうが、日本における企業の概念は欧米とはいささか違うのです。

欧米の場合、企業というのは、端的に言って、利益を生み出す組織なのです。
ですから、利益を生み出すし企業には高い値段が付き(高い時価総額)利益を生まない企業の場合は逆になります。当然売買の対象として考える物となるわけです。

しかも、会社は基本的に株主のものなのです。ですからファンドというのは、会社の売買で利益を出すのが仕事なのです。(人員削減で利益を出すのも一般的です)

日本の場合は、企業は基本的に人間集団です。人間が集まって、資本を集め、設備を整え生産をして社会の富(付加価値)の生産をするのが企業です。

伝統的には、企業は、経営者と従業員が主体のシステムで、出資者は、投資収益を得るために狙った会社に投資するお客さんなのです。

この違いからいろいろな問題が生じるのでしょう。
バブル当時、日経連会長だった鈴木永二さん(三菱化成会長)が、「M&Aは日本にはあまり向かないのではないか」と言っていたのを思い出します。

「そごう・西武」のストライキについて連合のメッセージは、
「団体交渉において、事業継続や雇用確保のあり方について、納得できる説明がなされていないことなどが実施の理由となっている。組合員が雇用不安や生活不安を抱えている状況を憂慮し、経営側に対し、真摯な労使交渉を通じた早期の事態収拾を強く求める。」です。

些か表面的です。もうすこし突っ込んだメッセージが欲しかったような気がします。