tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費者物価3.2%上昇は「2%インフレ目標」を超えていますが

2023年09月29日 12時10分28秒 | 経済
この所政府の言う「持続的賃上げ」に絡んで、政府、日銀、それに労使の政策や行動に、現実の経済情勢との不適合があるのではないかという点について見てきました。

その中でも大変わかりにくい点は、日銀が「2%インフレ目標」を達成すれば、ゼロ金利政策を見直すと言いながら消費者物価上昇は疾うに3%を超えて未だ上り続けそうだというのに、日銀は「静観」で、特段の動きはないという事でしょう。

つまり政府・日銀の言う「2%」と現実の「3%以上」の物価の上昇は違うという事ですが、ではどうなればいいのか、どうするのかの説明はありません。

ここで物価上昇以上の賃上げをすれば、物価は更に上がる可能性もありますが、何%まで上がればいいのか解らないというのは、国民・生活者にとっては困った事です。
そして、政府からは、持続的賃上げの「具体的な姿」は、全く示されていないのです。

日銀は、「賃上げを伴うインフレが2%」という言い方もしていますが、確かに今のインフレは、賃金が上がらない中で始まりました。そして今、政府は物価上昇を上回る賃上げをと言っています。何か順序が逆です。

では、今のインフレが日銀の考えているインフレとどう違うのか考えてみましょう。
日銀の考えている「2%インフレは」正常な経済状態の中で、実質経済成長が2%ぐらいあり、賃上げが4%あれば、経済成長は賃上げに2%足りませんから、その分はインフレになるという事で、多分、その程度のインフレで経済は巧く回るというのでしょう。

これはその通りで、経済成長しても高い所と低い所があって、そのあたりの調整が必要ですが、ゼロサムの中での調整は困難で、インフレでみんなが増えれば、その中で増え方の大小があっても、「増えている」ので調整がしやすいという事でしょう。

所で、アベノミクス以来10年程の日本は、殆どゼロサムでした「あちらを増やすには、こちらを減らす」というのは大変なことです。

ではどうしたかと言いますと、政府が借金して、「損している」と主張するところに補助金を出し、減らされたという意識を抑え込んでいたのです。
これがいわゆるバラマキの実態ですが、不満を抑え込んだ結果は財政赤字の拡大で、今のインフレは、「財政デマンド・プル・インフレ」の色彩の強いものです。

具体的な現象としては、平常時でも世界は年に2~3のインフレで、食料自給率の低い日本にとって、穀物や飼料、肥料などはじり高ですが、賃金が上がらず、将来不安から消費の伸びない中で、食料品などの値上げは殆ど不可能な状態、つまり賃金も物価も上がらなかったのです。

そうした中でコロナの終息もあり、10万円の一律給付、貧困家庭への援助、節約疲れもあって、2022年あたりから家計の消費意欲が上向き、長年の値上げ我慢への消費者の理解もあったのでしょう、この2年ほど、食料中心に生活必需品値上げの波が起き、一部には行き過ぎも見られる状態というのが、今のインフレでしょう。

つまり、長期の政策上の誤算の集積が今になってその清算を求め噴出という現象、それに加えてこの所のアメリカの金融政策のトバッチリで、予想外に長引きそうな大幅な円安といった複雑な事情の中で起きているのが現状です。

この中で日銀も絡むのが、アメリカの金利引き上げに対して日本銀行が何か取りうる手段はないかという問題です。
しかしこれには経済学者の思考パターンではない、政治的は駆け引きや、投機筋の勘や思考方法が必要でしょう。日銀の政策決定会合とは少し違う回路での思考が必要なようです。

こんな状態の中で、単純な「2%インフレ目標」や一般論で「持続的賃上げ」と言っても、一体如何なるシナリオ、如何なるプロセスで、政策展開ををするべきか、簡単に答えは出そうにもありません。
ならば、混乱した状況が収まるまで、様子を見るかという事で、「注視する」という事になるのでしょう。

しかし、労使はすでに来春闘の準備の時期ですし、国民は、何とか早く(政権維持ばかりでなく)本気で実効ある日本経済の安定、正常化を実現してほしいと思っているのです。
政府・日銀に加えてアカデミア、労使の共通な目的を持った協力が必要のような気がします。