tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカではUAWが対「ビッグ3」で一斉ストライキ

2023年09月16日 21時46分40秒 | 労働問題
昨年の4月、原油価格の上昇をきっかけにして、アメリカの消費者物価が急上昇、FRBが金融引き締めに走る中で、アメリカのアマゾンの倉庫や物流拠点で労働組合結成の騒ぎが報道されました。

それから1年余り、今度はUAW(全米自動車労組)がスト突入のニュースです。

アメリカの労働組合運動と言えば、UAW(全米自動車労組)はいわば代表格で、相手はいわゆる「ビッグ3」、GM、フォード、クライスラーで、このうちの1社を相手に勝ち取った賃上げが、自動車産業全体の賃金を決め、全米労働者の労働条件に影響すると言われたところです。

しかし、1970年代からのスタグフレーションの中で、自動車産業の都、デトロイトは、ラストベルトの代表的存在となり、AFL-CIOの中でも、製造業中心の伝統的巨大産業の労働組合の動きがマスコミのることも少なくなっていました。

ところが、新しい産業の組合結成問題から1年以上遅れましたが、UAWが、GM、フォード、ステランティス(クライスラーの親会社)のビッグ3の3社を相手に一斉ストに入るという史上初の労使紛争に突入しました。

直接の原因は、なんといっても全米労働者の代表という意識のあるUAWでしょう。近年は4年協定で9月14日に協定の期限が来るという事で今後4年間の交渉に入っていました。

GMの経営者は、電気自動車増える中でも「GMは雇用拡大を目指す」と雇用面で組合を牽制したようですが、組合の賃金要求は今後4年間の賃上げは初年度(9月15日から)20%、24年度からは年5%というもので4年間では39%になります。

労使双方理屈はあるでしょうが、初年度20%で、4年で40%近いというのは 経営サイドにとっては受け入れ難かったのでしょう。
交渉は決裂、3社一斉にスト入りという事になったようです。

3者一斉という今までなかったことで、アメリカのマスコミでもキャスターの説明も力が入っているようです。

勿論マスコミの論調には政治の視点も入っていて、もともとUAWは民主党支持、大統領選ではバイデン支持という事ですから、事は微妙です。

マスコミによれば、バイデン大統領はUAWの要求について「労働者がが不満足なことは理解できる」と発言したとのことです。
かといって、FRBがインフレ抑制に眦を決しているのに、今年20%の賃上げではインフレ容認です。

UAWも、対3社一斉ストと言っても、スト入りの工場は各企業の一部で、「最終組み立て部門は殆ど動いている」といった報道もあり、全面対決ではないようです。

アメリカやイギリスの労使関係も、かつての「敵対的であることが正しいあり方」といった意識は薄らいでいるようです。

しかし、インフレと賃上げに関してバイデン政権とFRBの目指す方向が食い違う可能性も出て来るわけで、この収拾に、自動車産業労使、それに政権と中央銀行が、如何なる貢献をするのか注目してみたいと思っています。