tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃金は上がっているのか

2023年09月12日 15時14分47秒 | 労働問題
賃金は上がっているのか
このブログで多用する統計は4半期別GDP統計から消費者物価指数、毎月勤労統計、それに家計調査など、問題・テーマに応じていろいろですが、特に賃金と物価については気になることが多いので、頻繁で、前回も取り上げました。

消費に関しては家計調査が中心です。その中で、2人以上勤労者世帯の「平均消費性向」は最も貴重な数字です。

これは、収入と支出の増減関係が解る数字です。収入が増えて支出が増えるという素直な関係が望ましいのですが収入が増えても支出が伸びないと消費不況、収入より支出が伸びた昨年は消費回復が言われました。

今年は賃上げも少し高かったので、支出も順調に増えるといいなと思っていましたが、物価が上がって邪魔をしています。

それに収入があまり伸びていないのです。日本の家庭は勤労者家庭が太宗ですから、収入は賃金が主体、で毎月収入(賃金)の動きが解るのは、毎月勤労統計と家計調査の勤労者世帯の部分です。

この2つから、今年の4月以降の賃金の動きを見たのが下の図です。

    賃金と勤労者世帯主収入の対前年上昇率(%)

    資料:厚労省「毎月勤労統計」、総務省統計局「家計調査」

毎月勤労統計は事業所調査ですから賃金を払う側の調査、家計調査は勤労者世帯ですから賃金を受け取る側の調査です。前者は「現金給与総額」、後者は、「世帯主の(勤め先)収入」です。

春闘賃上げは3%台でしたが、上記の賃金の「対前年同月上昇率」はそんなに高くありません。
勿論物価が上がっていますから実質賃金はずっとマイナスですが、上の図は名目賃金ですから物価は関係ありません。

現実の統計数字を見ますと、毎月勤労統計では5月が2.9%で最高、6月はボーナスが去年ほど出なかたせいか2.3%です。

一方家計調査の世帯主収入はもっとひどい状態です。名目の収入そのものが3月以来前年より少ないのです。ボーナスの出た6月はマイナス4.1%、これで賃上げがあったのかしらといった感じです。

統計が違い、調査対象も企業の家庭の違いはありますが、物価上昇による実質賃金目減りの前に、名目賃金がこの程度の上昇なのですか(家計調査では下降)?! といった感じです。

直接そのせいかどうかは別として、家計調査では昨年来の平均消費性向の上昇基調に反転下降の感じもあります。

円安でインバウンドは盛況のようですが、日本人自体の消費意欲が出ない事には消費不況はとても脱却できないように思われます。