tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

地球柑にも秋の気配

2023年09月13日 12時46分39秒 | 環境
岸田総理は党人事を了えて、今日は内閣改造ですね。もうほぼ決まっているようですが、新しい布陣で、平和を愛好し、豊かで潤いのある日本を作って頂きたいと思います。

今朝起きて窓を開けると真っ青な空がありました。「秋晴れ」とか「日本晴れ」という言葉がありますが、やっぱり秋だなという気がしました。

外気温も24℃で、空気も綺麗、狭い庭は雑草が伸びて先日から気になっていましたが、それはそれとして喜んでいるのは、地球柑(しまだいだい)が、色づき始めた事です。

今年は2度ほど中間報告をしましたが、鉢植えで毎年2~3個実がなる盆栽を、お隣の爺様から頂き、地球儀のような地球柑の実を見ているうちに、これを地植えにして大きくなって、枝々に、この小さな地球儀の様な実が生ったらさぞ面白いだろうと思ったのが事の始まりでした。



南側の窓のすく下に植えたのですが、丈は伸びましたが、翌年から全く花が咲かなくなりました。花が咲かなければ当然実は生りません。

木が大きくなれば実を付けるのではないかと思いながら、今年もダメかという年を重ね、こちらの寿命の方が先かなとも思い始めていました。

そして6年目、卆寿になる年を迎えた春、蕾が出、花が咲き、想像した通りに枝々に実が付いたのです。

秋になれば黄色くなり、緑の縦縞がその名の通りおもちゃの地球儀の様になるのではと思っていた日が、未だ些か暑い秋と共に来たようです。

朝食の後、数枚の写真を撮り、選んで載せたのが下の写真です。



秋晴れの朝の日光が強すぎましたが、小さな地球儀の様な実がご覧いただけると思います。

平和な日本の将来が危ぶまれるような時期ですが、こんな自然の営みを、長い時間を掛けても楽しめるのは、やっぱり人間は自然の子、自然の一部だからでしょうか。

最後にもう1枚。

 



賃金は上がっているのか

2023年09月12日 15時14分47秒 | 労働問題
賃金は上がっているのか
このブログで多用する統計は4半期別GDP統計から消費者物価指数、毎月勤労統計、それに家計調査など、問題・テーマに応じていろいろですが、特に賃金と物価については気になることが多いので、頻繁で、前回も取り上げました。

消費に関しては家計調査が中心です。その中で、2人以上勤労者世帯の「平均消費性向」は最も貴重な数字です。

これは、収入と支出の増減関係が解る数字です。収入が増えて支出が増えるという素直な関係が望ましいのですが収入が増えても支出が伸びないと消費不況、収入より支出が伸びた昨年は消費回復が言われました。

今年は賃上げも少し高かったので、支出も順調に増えるといいなと思っていましたが、物価が上がって邪魔をしています。

それに収入があまり伸びていないのです。日本の家庭は勤労者家庭が太宗ですから、収入は賃金が主体、で毎月収入(賃金)の動きが解るのは、毎月勤労統計と家計調査の勤労者世帯の部分です。

この2つから、今年の4月以降の賃金の動きを見たのが下の図です。

    賃金と勤労者世帯主収入の対前年上昇率(%)

    資料:厚労省「毎月勤労統計」、総務省統計局「家計調査」

毎月勤労統計は事業所調査ですから賃金を払う側の調査、家計調査は勤労者世帯ですから賃金を受け取る側の調査です。前者は「現金給与総額」、後者は、「世帯主の(勤め先)収入」です。

春闘賃上げは3%台でしたが、上記の賃金の「対前年同月上昇率」はそんなに高くありません。
勿論物価が上がっていますから実質賃金はずっとマイナスですが、上の図は名目賃金ですから物価は関係ありません。

現実の統計数字を見ますと、毎月勤労統計では5月が2.9%で最高、6月はボーナスが去年ほど出なかたせいか2.3%です。

一方家計調査の世帯主収入はもっとひどい状態です。名目の収入そのものが3月以来前年より少ないのです。ボーナスの出た6月はマイナス4.1%、これで賃上げがあったのかしらといった感じです。

統計が違い、調査対象も企業の家庭の違いはありますが、物価上昇による実質賃金目減りの前に、名目賃金がこの程度の上昇なのですか(家計調査では下降)?! といった感じです。

直接そのせいかどうかは別として、家計調査では昨年来の平均消費性向の上昇基調に反転下降の感じもあります。

円安でインバウンドは盛況のようですが、日本人自体の消費意欲が出ない事には消費不況はとても脱却できないように思われます。

賃上げか物価抑制か:当面する経済対策

2023年09月11日 16時26分08秒 | 経済
賃上げか物価抑制か:当面する経済対策
毎月勤労統計が発表される毎に、マスコミには「実質賃金今月もマイナス」といった記事が出ます。

もうどのくらいマイナスが続いているのでしょうかグラフにしてみました。

現金給与総額(指数)、消費者物価、コアコアの前年比上昇率(%)

      資料:厚労省「毎月勤労統計」・総務省「消費者物価指数」

図の賃金は5人以上の事業所の全労働者の現金給与総額の指数(名目値)で、消費者物価指数は「総合」と「コアコア」で、数字はそれぞれの指数の対前年同月上昇率です。

青線が名目賃金の毎月の対前年上昇率で、赤線が消費者物価指数(総合)の対前年同月上昇率ですから、赤線が青線の上に出れば、その月の実質賃金は前年に比較して下がった、つまり実質賃金マイナスという事になります。

ご覧頂きますように、昨年4月から赤線が青線の上に出て、その後は、昨年末のボーナスが比較的良かったものですから、微かに赤線の上に出ましたが、それ以外はずっと実質賃金の伸びはマイナスという事です。

賃金指数の青線について気になるのは今年に入って予想よりも上昇率が伸びていない事です。

昨年12月のボーナスの伸びが高かったのは、企業業績の好調や、コロナの終息も見込まれ、2023年の春闘では労使が共に「賃上げが必要」という見方で一致するなど、雰囲気の変化が感じられましたが、実績を見ますと今年5月以外は、賃上げろ値が高まったという様子はほとんど感じられません。

賃上げの雰囲気が盛り上がった割に2023春闘が、実績としてはこの程度のものだったという事は些か信じられないのですが、統計に嘘はないでしょうから、実際の賃金レベルの上昇は名目値で2%まで行っていないという事なのでしょうか。

特に緑の線をご覧ください、これは「コアコア」と書いてありますが、エネルギーと生鮮食品を除く消費者物価指数で、日本の国内事情で起きているものです。
どんな国内事情かと言いますと、最近の主な原因は「円安」です。

円安は円レートが1ドル110円近辺から147円になりました。日銀は一時的なものと言っていましたが、まだまだ長くなりそうです。

ガソリンもアメリカでは下がっていますが日本では上がっています。小麦や、大豆、トウモロコシも同じです。円が安くなった分日本の物価は上がるのです。

それなら日本の賃金も上がればいいのですが、賃金は上がりません。アメリカやヨーロッパでは、こういう時は労働組合が強くなり賃金が上がります。
去年から上がり過ぎて10%前後のインフレになって、大慌てで金利の引き上げです。

何故上がらないのでしょう。日本の産業の生産性は特に変わらないのですから、「円安になった分だけ」経済学的には賃金が上がっても特に問題はないはずです。

少なくとも、物価上昇をカバーするぐらいの賃金上昇がないと、消費が減退、物価上昇も止まって、景気が悪くなり、生産性が下がって縮小均衡になるのが結果(オチ)でしょう。

この辺りのバランス感覚が政府や日銀、それに連合や経団連にないと、日本経済の復活は(アメリカのインフレ次第のようなことになったりして)、容易ではないでしょう。

どうでしょう、騙されたと思って、思い切って、労使で図って「秋闘」をやり、家計を担う非正規労働者の正規化を重点に、平均10%ぐらいの臨時賃上げをやったら ・・・。
日本経済は元気になりますよ。

個人と社会の関係進化の行方を観る

2023年09月09日 15時18分57秒 | 文化社会
個人と社会の関係進化の行方を観る
人間は「社会的動物」と言われます。もともとの言葉は英語で Social Animal というのでしょう。
人間はその本性として「社会を作って生活する」動物のようです。

人間以外でも、オットセイのハーレムやサル山のように、動物が集まって生活する場合もありますが、これは多分本能のままに集まっているのであって、一見、社会を作っているようにも見えますが、人間の作る「社会」とは本質的に違うのでしょう。

人間だけが時間の概念を持ち、その延長線上にあると思われる宗教や文化を持ち、より良い社会を作ろうという目的意識を持つのです。
アリストテレスは、人間は「社会(ポリス)的動物」と言い「人がより良く生きるための社会」といった認識を持っていたようです。

歴史の中で、人間は、確かにより良い社会を創るために努力をしてきています。
但し、その足跡は残念ながら試行錯誤の連続で、今日現在の社会も、ロシアのウクライナ侵攻や核による脅しといった正に試行錯誤の真っ只中です。

しかし、人類の歴史から見れば、長い時間を掛けて、人間の作る社会は進歩してきていると判断してよいのではないでしょうか。

世界中どこに住む人間でも宗教を持ち、成熟した宗教は経典(教典)を持ち、それらは社会の基本となるべき人間の生き方を示しています。
矢張り人間は基本的に「社会的動物」ですから、自分たちの住む社会をより住み易い良いものにするための教えを記しているのです。

人間が「社会的動物」と言われる所以は、こうした所にもはっきりと表れているのではないでしょうか。

そしてこの考え方は次第に広く深くなり、人間社会に共通であるべき行動の指針が世界に広まりつつあると感じ、それが人間社会の進歩と認識されているのでしょう。

基本は世界のあらゆる社会に存在する宗教や文化における「個人の倫理観」でしょう。その中からユニバーサルに、どの社会にも共通しうるのを、国際的な「社会の在り方」として広めていこうという努力が次第に浸透しているのです。

個人の倫理観から、家族間のより良い関係の維持構築、更に、多様な組織、就中企業の在り方の共通した倫理の確立とこの動きは着実に進んできています。

始まりは、欧米でいえば、は権力、経済力を持つ人間に対しての「ノブレス・オブリージュ」という社会規範などだったのでしょうか。

この動きは、今日では、個人より力を持つ組織、特に企業の行動規範としての、CSR:「企業の社会的責任」にまで進んできています。
日本では、経営道義、企業倫理といった言葉で、明治以来、浸透してきていました。

こうした動きは、「社会的動物」である人間の在り方が、個人から権力者へ、さらに大きな力を持つことになった組織、特に企業へと拡大され、より良い人間社会の実現に貢献する進化の道を確実に進んでいることの証左でしょう。

そして今、この動きは、大きな壁に突き当たりつつも、これまでの試行錯誤の経験を活かして、「国家」という最大の社会組織についても拡大されようとしています。

ロシアという国の時代錯誤は、社会的動物である人間も進化にとって大きな試練でしょう。
しかしこの問題を乗り越えた時、「社会的動物」としての基本である人間のあるべき行動指針を、人間は、企業などの組織を大きく超えて、人間の作る最大の組織である「国家」のレベルにまで浸透させる可能性を掴むのではないでしょうか。

「国家の人間社会に対する責任」が、世界の共通の認識になった時、「社会的動物」である人間の望む「あるべき社会」実現の基礎工事が完成することになるのでしょう。

円安と賃金水準の関係への理解を

2023年09月08日 15時33分46秒 | 経済
前回、消費者物価上昇が予想外の幅で続きそうなので、今春闘の賃上げは物価上昇に食われてマイナスという現実から、家計は、改めて節約ムードの逆戻りではないかという懸念を指摘しました。

2022年に至って漸く回復の気配を見せた家計の消費支出でしたが、この4月から急速に
節約ムードが強まった様子が「家計調査」で見られるのです。

生活必需品関係の急速な値上がりの理由として言われるのは、昨年までは「長い間値上げが出来なかったが我慢も限界」といった意見が多かったように思いますが、最近は、急激な円安で輸入原材料はエネルギー価格の高騰という説明になって来ています。

110円辺りだった円レートが140円台という20~30%の円安がさらに続くようなことになれば、日本経済として物価水準全体の見直しが必要でしょうし、そうなった場合の物価水準の上昇と、賃金水準のバランスはどうなのかという問題が当然発生するわけです。

物価水準が上がった時、賃金水準を引き上げなければ、必然的に消費不足経済になり、経済成長は困難になるでしょう。
これは、アベノミクスの中で現実に発生しています、日銀の政策変更で異常な円安状態が解消して、すぐにもインフレ基調の経済なるという安易な予測は外れ、アベノミクスを結果的に失敗に追い込んだ元凶です。

アベノミクスで、円レートが80円から120円と50%の円安になっても、賃金水準は殆ど上がらず、賃金の安い非正規従業員の割合は増えるような状況の中で、加えて、年金財政不安などが言われれば、家計の視点では、将来のために貯蓄を増やし、消費支出は切りつめるという事だったのでしょう。

経済と経営の関係での原則を言えば、円高になった時は、賃金を下げなければなりませんし、逆に円安になった時は賃金を上げなければなりません。

しかし、円安になった時は「賃金を上げられる」とは思っても「上げなければならない」とまでは思わない企業が多いのではないでしょうか。
その理由は、多分、賃金は上げられるが、余り上げない方が国際競争力が強まって経営にプラス、という意識があるからでしょう。

その気持ちは解りますが、もともと競争力がない国ならば、1割自国通貨の価値が下がっても、賃金コストは5%上昇に止め、残った5%は国際競争力の強化に使うという考えもありうるでしょう。
しかし、もともと国際競争力のある国ならば通貨価値が下がった分だけ賃金コストを上げても国際競争力には問題はありません。

さて、円レート110円で国際競争力があった日本で140円台の円安になったらどのくらいの賃上げが可能になるのでしょうか。(140円/110円≒27%という所でしょうか)

問題になるのは円レートは早晩110円に戻るのではないかっという可能性、早晩と言ってもそれはいつごろか、賃上げは出来ても、円高に戻った時賃下げは極めて困難、などの問題を企業は考えて計算しなければならないという事でしょう。

政府日銀は、企業がそういった予測不能の中で経営をしなければならないことに留意して、口先介入から標準金利の引き上げまで、多様な手段を巧みに使って、円レートの安定を図る必要があります。

モタモタしているとまたアベノミクスの低成長の二の舞ではないでしょか。

インフレで国際競争力を多少落とすことになっても、欧米主要国はいつも日本以上のインフレをやりますから、日本が、賃金インフレで景気を刺激する余裕はかなり大きいのではないでしょうか。

7月家計調査、消費支出失速の兆しか?

2023年09月07日 15時22分56秒 | 経済
一昨日、9月5日に、総務省から家計調査の家計収支編の7月分が発表になりました。

今年度に入って前月6月までのデータを見ながら、このブログでは、このままで行ったら2022年から回復してきた家計の消費支出の積極化が腰折れ以なるのではないかとの危惧を感じていましたが、7月の数字はどう見てもその兆候を示している感じです。

アベノミクス以来の消費需要の不足による日本経済の低迷の根源である家計の消費支出の低迷から、ようやく脱出ムードに切り替わるかと見えた途端の消費支出の失速です。
これをこのまま放置することは出来ないとう強い思いから今日のブログを書いています。

GDPの半分以上を占める家計の消費需要ですから、これが伸びなければ日本経済は投資中心か財政主導の片肺飛行です。

その家計消費支出が2022年から、コロナ終息もあり、それまでの節約疲れもあったのでしょうかはっきり堅調に変わってきていました。
2人以上世帯の消費支出の年間伸び率(実質)で見れば2020年マイナス5.3%、2021年にはプラス0.7%そして2022年はプラス1.2%と確り回復基調でした。

2022年の春闘賃上げ率はまだ低迷でしたが、家計に消費意欲が出てきたことが感じられました。
それを見ているのが、このブログで追っている2人以上勤労者世帯の「平均消費性向」(手取り注入の何%を消費支出しているか)です。図示してみます。

     2人以上勤労者世帯の平均消費性向の推移(%)

                   資料:総務省統計局「家計調査」

柱の色は青2021年、赤2022年、緑2023年で、各月の%(平均消費性向)が並んでいます。
2022年赤の柱は、3月と11月を除いて2021年の青の柱より高くなっています。これは収入に比して消費支出が増えた事、つまり、節約ばかりではなく、少し生活を良くしようというムードが出て来た事の表れでしょう。

ところが最近に至って、様子が変わってきました。
今年は春闘賃上げも前年を1ポイント以上上回ったようですし、コロナも5類になったので、人の動きも活発になりました。
しかし昨年、前年比プラス1.2%まで回復してきた年間実質消費支出の伸びが、急速に落ち込み、月毎では、ことし6月は対前年でマイナス4.0%、7月にはマイナス5.2%です。

これは勿論消費者物価が異常な上昇をしているからですが、恐ろしいのはここに来て名目の消費支出も対前年で減って来ている事です。
3月までは名目では増えていましたが、4月以降は名目支出額も一貫して前年比マイナスになり、想像すれば「春闘賃上げもあの程度で、この物価高ではやっぱり節約するしかない」という気分でしょうか。

上の図の勤労者世帯の平均消費性向で見ても、緑の柱が赤い柱より高くなる月が無くなってくる気配です。

これが「1億総節約」への逆戻りの兆しとすれば、日本経済に回復のチャンスはないという事になりかねません。それではあまりに経済無策に過ぎます。

政府も、日銀も、アカデミアも、企業も、消費者も、日本経済の中の何がおかしくてこんな事になるのか、本気で考える必要がありそうです。

直接税(所得税)と間接税(消費税)どう違う

2023年09月06日 15時08分46秒 | 経済
前回、消費税は付加価値税で、各事業所の作った付加価値の額に応じて10%(食品8%)の税金がかかるという書き方をしました。

事業者としては、矢張り売り上げの中から払うので、仕入れの分については控除されますが、事業所の負担になるという見方から、そうした書き方をしました。

しかし税の性格としては、消費税は間接税ですから、本当は、事業所の仕事とは関係ないのです。

皆様が最も付き合い深いガソリン税の場合を考えれば解りますが、間接税というのは、政府の決めた税金を各事業所が「徴税代行」をして、後から纏めて政府にお届けするという作業をしているという事なのです。

ガソリン税の場合は、金額で1リッター53.8円(=揮発油税48.6円+地方揮発油税5.2円)顧客から預かって、後から纏めて政府にお届けするという、いわば「徴収代行」です。
リッター170円というのは、いわゆる内税方式の表示です。(なぜ外税にしないのかは、税金があまり高いので、政府が表示しにくいから?)

消費税の場合はあらゆる物・サービスにかかるので、額でなく率で10%、8%と一律に決まっていますから、事業所本来の価格と消費税分を別にし、この分は税金で、うちの事業所の収入ではありませんと解るように外税が原則になっているようです。

前回のブログでは、そんな意味で、事業所の所得の中から税金を払うという感覚でも容易に理解できることを願って内税方式の表現になっています。

最後のところで、消費税は間接税ですから、課税対象が付加価値で、付加価値は「人件費+利益」で人件費には所得税、利益には法人税がかかっていますが、二重課税とは言わないという説明になっています。

インボイスは、事業所本来のビジネスと、税金の徴収代行の部分を正確に区分しようという「制度の徹底」に必要なものという位置づけになるのです。付加価値を作っているのに付加価値税(消費税)を払わない(徴税漏れ)といったことがなくなります。

また統計上の大きな違いは、消費税の場合は、税率が上がりますと、その分だけ物価が上がることです。消費税2%の増税は消費者物価の2%上昇を齎します。
若し2%上らなければ、「消費税を自腹で負担した事業所がある」事が解ります。

直接税(所得税)か消費税(付加価値税)かの選択は、その国の政策方針によります。
直接税では累進課税などで付加価値(国民所得)の再配分を実現し、資本主義の問題点である格差社会化の阻止が可能です。

付加価値税については、いわばみんなに一律です(逆進性があるという意見もありますが)。しかし世界に共通な意識として、その使途は社会保障中心という、いわばコンセンサスがあり、矢張り格差社会化の阻止に、その使途の面で大きな役割を持ちます。

しかし、所得性にしても付加価値税にしても、課税の対象は、その国の国民所得(人件費と利益)ですから、国民所得が増えない事にはゼロサムの世界になってしまいます。

30年間も殆ど成長がなく、ゼロサムの中での格差拡大で、国民の忍耐強さで何とか支えられてきた日本です。
今後は、その力を前向きの成長、発展、国民所得の拡大に使うという大転換が必要です。その実現のための知恵と力を持つ政府を作ること、これが今、日本国民に与えらえられた最大の課題でしょう。

「インボイス」は解りにくいと言いますが

2023年09月05日 14時24分09秒 | 経済
1988年に消費税が導入 (当時3%) された時からの議論だったインボイス制度が、2023年10月から実施になります。
税金を取るなら「キチン」と取ろうというのがこんなに難しい事とは思いませんでした。

日本では消費税と言いますが本来は「付加価値税」というべきだったのでしょう。インボイス制度を採っていないのはOECD加盟国ではアメリカと日本だけと言われていました。

ヨーロッパ主要億は付加価値税率の高いことで知られていますが、付加価値税は本来社会保障の財源という意識が強く、それだけに確りした徴税をしなければという考え方が強いのでしょう。

日本では、最初に消費税という呼び名で導入された時から、小規模事業者などから制度が解りにくいという意見があって、導入を急ぐ政府が、小規模事業は免税という便法をとったことから、今でも課税売上年1000万円未満の事業者は免税です。

そのため、「益税」が巨額になるといった議論が付いて回りました。
また前回の引き上げで基本税率が10%になってから、食品については8%という2種類の税率が併存することになったため、誤りが多いなどの指摘も増えたようです。

今回のインボイス導入は、複数税率の混乱を避けるという理由が言われていますが、政府としては益税問題の解決も重要なことでしょう。

もともと所得税や財産税が主体だった税制に、付加価値税という新たな税金を導入したのは、弱肉強食の資本主義に社会正義の理念も取り入れて、格差社会化を抑制、社会の安定を図るという重要な政策目標があったのでしょう。

であれば、税の仕組みは出来るだけ簡素で国民に解り易く、しかも納税者に適切公正な制度でなければならないというのがその理念であるべきで、そのためにはインボイス制度は必須だったはずです。

付加価値税はその名の通り、国民の働きで創出された「付加価値」に均等に一定割合を課税し、それによる税収を社会正義を重視する社会保障の財源に、という意識の下に、(GDPから減価償却を差し引いた)「国民所得」=「日本経済の純付加価値」の一定割合を税収として政府が確保するというシステムです。

そのために、原材料の輸入・生産から、材料部品の加工、最終製品の生産、その販売、サービスまで、経済活動の各段階で創出された付加価値に正確に課税する必要があります。
インボイスはその把握のために本来必須な、それぞれの事業所で「創出された付加価値を確認し正確に課税する手段」なのです。

基本原理は「売上-仕入」が付加価値ですから、税率が10%であれば、税額は、【「売上-仕入」×0.1】で、これは売上げの10%から「仕入れ」の10%(仕入れ先が払った分)を差し引いた額になるわけです。

ところで、付加価値は「人件費と利益」に分配されます。
日本全体の付加価値は国民所得で、これは「雇用者報酬と営業余剰」に分配されます。
付加価値を構成する2大要素の人件費には所得税がかかり、利益には法人税がかかります。

付加価値税は、その合計額に改めて課される税金です。しかし、所得税、法人税は直接税で、付加価値税は間接税で、課税の仕方が違うので、二重課税とは言わないようです。

余計なことまで書きましたが、税金はきちんと納めましょう。

PBR狂騒曲:株価が上ればそれでいいのか

2023年09月04日 14時49分25秒 | 経営
事の起こりは、今年3月に東京証券取引所が「日本の株価はもっと高くあるべきだ」という趣旨でしょう、「日本の多く企業ではPBRをもっと高めることが望ましい」という意向を示したことです。

さてPBRとは何でしょうという事になります。 
これは証券用語で「Price Book-value Ratio(株価純資産倍率)」で、Priceは株価、Book-valueは1株当たり純資産額で、解り易く言えば、「今、この企業を解散して、残った純資産を株主で分けると株価より多くもらえる(PBR1以下)、少なくなる(1以上)という事です。

東京証券取引所の発言は、純資産の価値よりも、企業の将来性が評価されて、その期待が、株価に反映されるような企業になってくださいという事なのでしょう。

欧米ではPBR1以上の企業が多いようですが、日本では1以下の企業が上場企業の半分以上(今年3月現在)でそんな状態は異常とみられているとのことです。

そういう事で、その後日本の上場企業では「自社株買い」が増えたようです。
自社株を買えば、市場に流通する株がそれだけ減ります。当然自社株買いの分は消却が前提ですから、配当が増えると判断されて株価が上がり、PBRが上がります。

企業経営でいえば、本来の趣旨は、やっている仕事の割に持っている資金量が多い状態ですから、その資金を生かして、もっと経営を積極化し、その企業の株を買う人が増えて、株価が上りPBRが高くなるというのが望ましいという事なのでしょう

確かに、アベノミクスの第一弾で円安が実現し、企業収益の水準は大きく回復しましたが、その後が上手く行かず、日本経済は低成長を続け、企業はビジネスチャンスの発掘・発見が難しく、企業収益改善の割に、企業活動の不振が続いた事の影響もあったでしょう。

その意味では、これから、日本経済の雰囲気が少し変わってくれば、PBRが高くなる可能性もあるように思います。

しかし、BPRが高ければいいかといいますと、それも問題でしょう。
企業にとって株価が何を表すかを考えてみれば、明らかですが、株価というのは人気投票に似たところもあり、常に会社の実態を適切に反映するものではありません。

乱高下する事もあります。積極経営、リスクテイクに積極的な企業に多いようです。
日本の場合には、「積極経営」も大事でしょうが「健全経営」がより大事という意識が強いという意見もあります。

経営の神様と言われたピーター・ドラッカーが、かつて日本に来て、日本には100年以上も続いている会社がいくらでもあることに驚き、経営の永続性が彼の経営学の柱にもなっていると言われます。

日本では戦後の経済成長期、経営者自身から「企業は公器」という言葉が聞かれました。私企業であっても、社会に役立つ公器で、安定して存続し、社会に貢献し続ける存在でなければならないという意識です。

リスクテイクの精神も発展のためには重要でしょう。しかし、儲けるためにやったのだから自分の都合で売却しても廃業しても自由というのは、日本本では通らないでしょう。

証券業界が、株は高い方がいいという気持ちは解りますが、企業経営者としては、社会的責任を自覚した適切なバランス感覚が大切でしょう。

補助金より減税の方が合理的では

2023年09月02日 13時11分05秒 | 政治
最近与党の政治家の中で活躍している言葉に「寄り添う」というのがあります。
結構頻繁に使われる言葉ですが、私などは、むくつけき、そして偉そうな政治家が「寄り添って」きたら、「気持ち悪いからやめてくれよ」と逃げるでしょう。

言葉には、その本来の「語感」がありますから、そのあたりは日本語の繊細なニュアンスを意識して、自分が使って似合う言葉かどうか考えた方がいいような気がします。

この言葉を政治家が使うのは、大体相手が困っているときで、自然災害で被害を受けたり、政府の閣議決定の結果、不都合が生じたり、何か政府がやらないと評判を落とすという状況があるのが一般的で、「寄り添う」というのは、忙しいけれど出来るだけ顔を出すという事から始まって、決め手は補助金を考えましょうという事でしょう。

最近のガソリン価格高騰についてもリッター170円台を超えないように元売り企業への補助金を継続するというのが、元売りにも、スタンドにもドライバーにも「寄り添う姿勢」という事なのでしょう。

これに対して、「補助金を出すよりガソリン税の減税をした方が合理的では?」という意見も出ていました。

ガソリン税は国・地方税込みでリッタ―55円(50円+5円)程度ですが、この税金分にも10%の消費税がかかります。
「税金にも消費税がかかるの!」と驚く人もいる日本人の「人の好さ」ですが、これは有名な2重課税の代表例です。

こうやって税金を取っている政府が、それでも足りないから国債を出し国民から借金して、それを財源して補助金を出すという仕組みになっているのです。

補助金は一時的で、税金は恒久的だから、そういうことになるのも仕方ないという意見もあるでしょう。

しかし、減税をすればそれは全国民に均霑しますが、補助金は、政権が気にかけている人だけに払われるので、基本的に不公平になる可能性が大きい、という意見もあります。
補助金を当てにせず頑張れば、補助金の対象にはなりません。

この春の決算でも、石油元売り会社のトップの、「補助金もあって、市場最高の決算になりました」などの正直な発言も目にしたとことです。

政権党にしてみれば、陳情があって補助金を出すことが集票にもつながるわけで、そんな気持ちは微塵もないとは言えないでしょう。

大体減税をすれば、カネはそのまま国民の懐から動きません。増税や国債発行で、国民のカネを一度政府の懐に入れて、それを政府の裁量でまた国民に戻すという事になると、余計な手間や手続きが必要になります。

政治家や官僚の人件費は.結構高いので、その余計な手続きのコストが場合によっては効果を上回ることは結構多いかもしれません。

こういう事をできるだけ無くして政治、行政のコストを安くするのは、本来政治家や官僚自身の仕事ですが、有名なパーキンソンの第一法則の様に「官僚組織は常に肥大化する」のです。

改めて言えば、「寄り添う」というのは本来心情の問題で、カネで解決する事ではないというのも、日本語としては本来の意味ではなかったと思うところです。
政治用語は特別かもしれませんが、本来の日本語を正しく使うことも大事ではないかと思ったりするところです。

そごう・西武労働組合のストライキの示唆するもの

2023年09月01日 15時45分53秒 | 経済
今回の「そごう・西武労働組合」のストライキについては、従来の日本企業の在り方、日本的労使関係の在り方の中で考えますと、大変解りにくい事になっているように感じられます。

「そごう・西武」という企業は「セブン&アイ・ホールディングス」傘下の企業です、持ち株会社であるセブン&アイ・ホールディングスが、アメリカの「フォートレス・インベストメント・グループ」というファンドに9月1日に「そごう・西武」という会社を売ることが決まっているのです。

ストライキは8月31日池袋の本店で行われました。マスコミは、池袋の東口の顔がどうなるのか心配とか、長いなじみの西武百貨店はどうなるのでしょうとかいう街の声を拾っていました。

「そごう・西武労組」の最大の心配は当然、雇用の安定です。
日本の企業同士の話であれば、雇用の問題については事前に十分に話し合って、というようなことで、納得ずくの中で労使関係・雇用問題とったことも話し合われ、労働組合の意向も尊重されるのが当然と考えられます。

しかし、この話は、セブン&アイ・ホールディングスとアメリカのフォートレス・インベストメント・グループの間でのことで、「フォートレス」はアメリカのトップクラスの不動産の投資ファンドという事ですから、雇用安定の話も多少はあったようですが、組合の心配は大きいでしょう。

池袋の顔というすぐれた立地です。日本の地価はこれから騰がりそうといった客観情勢も考えれば、不動産投資ファンドの考えることは解っているという意見も多いでしょう。

勿論「そごう・西武」の経営陣がどうなるかという事も含めて、セブン&アイ・ホールディングスが労組のストライキなどは無視して、企業そのものの売却を決めるように、労組の手の届かないところで、物事が決まっていくようなことが当然心配でしょう。

考えてみれば、かつてバブルのころ、アメリカからM&A(企業その物の売買)という概念が入って来て、1997年には、戦後禁止されていた「持ち株会社」が解禁され、環境は整ってきたという事でしょうが、日本における企業の概念は欧米とはいささか違うのです。

欧米の場合、企業というのは、端的に言って、利益を生み出す組織なのです。
ですから、利益を生み出すし企業には高い値段が付き(高い時価総額)利益を生まない企業の場合は逆になります。当然売買の対象として考える物となるわけです。

しかも、会社は基本的に株主のものなのです。ですからファンドというのは、会社の売買で利益を出すのが仕事なのです。(人員削減で利益を出すのも一般的です)

日本の場合は、企業は基本的に人間集団です。人間が集まって、資本を集め、設備を整え生産をして社会の富(付加価値)の生産をするのが企業です。

伝統的には、企業は、経営者と従業員が主体のシステムで、出資者は、投資収益を得るために狙った会社に投資するお客さんなのです。

この違いからいろいろな問題が生じるのでしょう。
バブル当時、日経連会長だった鈴木永二さん(三菱化成会長)が、「M&Aは日本にはあまり向かないのではないか」と言っていたのを思い出します。

「そごう・西武」のストライキについて連合のメッセージは、
「団体交渉において、事業継続や雇用確保のあり方について、納得できる説明がなされていないことなどが実施の理由となっている。組合員が雇用不安や生活不安を抱えている状況を憂慮し、経営側に対し、真摯な労使交渉を通じた早期の事態収拾を強く求める。」です。

些か表面的です。もうすこし突っ込んだメッセージが欲しかったような気がします。