おてんとうさんのつぶやき & 月の光の思案 + 入道雲の笑み

〔特定〕行政書士/知的財産管理技能士/国家試験塾講師等が生業の巷の一介の素浪人の日常

参考になればよいのですが・・・

2024-12-23 | ◆ 国家試験受験サポート 〔 全 般 〕

おおよその国家試験が終了しているといえるでしょう。

再学習をスタートしている方も多い時季になりましたでしょうか?

 

さて、次の条文は、特に不動産関連試験の受験者さんから、

本試験後も、質問が多い条文です。

 

今年度の〈管理業務主任者試験〉の問一 についての質問が続いているので、以下に参照すべきことの
概略を記しておきます。

一番多い質問は、全部 とか 持分 とか、どのような場面を想定してのことなのか、混乱してしま
っていて、試験講評をなさる方や塾講師さんの説明も、そのあたりのことがアイマイ?で・・・』
というあたりですので、そのあたりがハッキリしない方は、例となるような具体的場面を想起しながら、
よければ、参考にしてみてください。

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第二百五十八条の二 
共有物の全部又はその持分相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又は
その持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分
割をすることができない

2 共有物の持分相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項
の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることがで
きる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共
有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない

3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定によ
る請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしな
ければならない。

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共有者の1人が亡くなり、当該共有持分権を複数の相続人(共同相続人)が承継すると、被相続人が
有していた共有持分権をさらに共有(複数人で所有)するということになる。
物権共有の中に遺産共有が含まれている状態となる。

一般的な共有=物権共有であった  その後、共有者の1名に相続が生じた  物権共有と
遺産共有の両方が含まれる状態になる

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《例》

共有者=A・B・C
Cが死亡した(Cの相続人C1・C2・C3

共有者=   A ・ B ・ C1・C2・C3
遺産共有と物権共有が混在している(相続人以外の共有者もいるのだ、ということ)
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全体遺産共有であるとはいえない状態なので、分割手続として遺産分割を使えない。
消去法的に共有物分割の手続を用いることになる。
共同相続人(相続人グループ)の有する持分遺産共有なので、遺産分割によって分割
することになる。具体的には、共有物分割の中で、共同相続人全体が得た財産を、改め
て(次の手続として)遺産分割によって分割する、ということになる。

 

(1項とは違って2項では)条文上「持分が」(相続財産に属する)という文言になっ
ている
「共有物の全部(が)」は除外されている
遺産共有物権共有が  混在している  ことを意味している

 

民法258条の2のメインは2項〔原則(改正前の判例)に対する例外を新たに作った条文〕。
例外とは、共有物分割訴訟の中で遺産共有の解消をする(できる)という処理のこと。

例として、
AB共有の甲土地があり、Aが亡くなった。その結果、Aの相続人A1A2とBの共有となるが、
このうちA1A2」の持分は遺産共有(分割未了)となっている。
相続から10年経過後に、A1が甲土地について共有物分割の訴訟の提起をした。
A2の立場で考えてみると、地裁から訴状の送達があって初めて訴訟が提起されたことを知る。
この場面で2つの選択肢が想定される。
まず、そのまま、甲土地についての共有物分割を進めるという選択肢。この場合は特別な手続
をすることはない。通常の共有物分割として、分割方法の希望を答弁書として裁判所に提出す
ることになる。
もう1つは、他の遺産(たとえば乙土地や預貯金、金融資産)を含めた遺産分割の調停(また
は審判)を家裁に申し立てて、地裁の共有物分割について異議を出すというもの。
異議を出した場合は、例外は発動することなく、原則(改正前と同じ)の扱いになる。
具体的には、共有物分割の中ではA1・A2持分の解消はできず、遺産分割の中で甲土地のA持分
(A1・A2持分)も含めて分割することになる。

異議を出しても(出さなくても)、共有物分割訴訟が却下や棄却になって終了する、というわ
けではなく、2つの分割手続が同時に進行する(並走する)ことになる。
(詳細を知りたい方は、専門書・インターネットなどにある参照すべきもの、などで充たして
 ください)。




〈参考・・・とばしてもよいのですが、知識欲がありそうなら読んでみてください〉

例外が発動した状況、は2つに分けられます。共有物分割訴訟だけが進行する(単独進行)の状況と、
共有物分割訴訟と遺産分割調停(か審判)が並走する状況です。並走するとは、被告が異議を出せる
のに意図的に出さないという状況です。
この例外発動、かつ、2つの分割手続並走の状況では、遺産共有の持分については、どちらの手続で
も解消できる、ということ〔当然ですが、一方の手続で解消した場合は(すでに共有ではなくなった
ので)他方の手続で解消することはできませんが〕。
先ほどの具体例でいえば、A1・A2は異議を出していない状況です。相続人全員(A1・A2)が、甲土
地のA1・A2持分共有物分割訴訟で解消したいと考えているといえる場合。そうだとすると、遺産
分割(家裁)としては、甲土地のA1・A2持分の共有解消は共有物分割訴訟(地裁)に委ねる(それ
以外の遺産だけを分割する)ことが想定される。
さらに、共有物分割訴訟の原告A1自身が、例外発動を望まない(甲土地のA1・A2持分は共有物分割
訴訟では分割せず、並走している遺産分割手続の中で解消したい)と表明している時は、共有物分割
訴訟の裁判所(地裁)は希望どおりにA1・A2持分は共有を残存させるのが妥当と考えられよう。


 

                 シンプルなメモ
令和3年改正で新たに作られた民法258条の2の第1項には、原則が規定されている。原則の中身は、
共有物分割遺産共有の解消をすることはできないというもので、昭和62年最判が示した解釈。
1項は、改正前の扱いと同じ。
2項で例外を定めることになったので、前提として原則を示した

民法258条の2において主要なのは2項です。原則(改正前の判例)に対する例外を新たに作った条文。
例外とは共有物分割訴訟の中で遺産共有の解消をする(できる)という処理のこと。
例外が発動する要件は3つにまとめることができる。3つのうち1つでも当てはまらない場合には、例外
は発動しない(原則どおりになる)。原則どおり、とは、共有物分割訴訟の申立ができない、という意味
ではありませんが。
(詳細を知りたい方は、専門書・インターネットなどにある参照すべきもの、などで充たしてください)。


例外の適用(遺産共有の解消を認める)の要件の整理

遺産共有と物権共有の混在

繰り返しになりますが、

(1項とは違って2項では)条文上「持分が」(相続財産に属する)という文言になっている
「共有物の全部(が)」は除外されている
遺産共有と物権共有が混在していることを意味している

・相続から10年後の提訴

相続開始から10年を経過した後に共有物分割訴訟の申立がなされた

・共有者による異議がない

共有者(被告)が異議を出した場合には例外(遺産共有の解消を認める)は適用されない
異議を出すには、遺産分割調停・審判の申立が必要。

 

 

〔共有物分割訴訟の提起が相続から10年後であれば例外発動となる。この時点で、遺産
分割の手続が進行中(2つの分割手続の並走)というケースもあれば、進行中ではない(共有
物分割訴訟のみ単独進行)ケースもあります。〕
(詳細を知りたい方は、専門書・インターネットなどにある参照すべきもの、などで充たしてください)。



ところで、
遺産分割では、令和3年改正後は、相続から10年後には特別受益と寄与分を無視することに
なりました(民法904条の3)。逆にいえば、相続から10年以内は特別受益と寄与分の適用を保障す
るということ。
ここで、遺産共有を共有物分割で解消する手続(例外発動)では、特別受益と寄与分を無視することにな
ります(民法898条2項、前述)。
そこで
相続から10年以内では例外発動を認めない、という設計になっている




〈参考・・・とばしてもよいのですが、知識欲がありそうなら読んでみてください〉

遺産共有に共有の規定を適用する場合の共有持分割合のルールは、民法898条2項として新設されました。
条文には、900条から902条までの規定により算定した相続分(を適用する)と記述されています。
民法900〜902条には、法定相続分と遺言による指定相続分が規定されておりこの2つが適用されると
いうことになる。
民法903条と904条の2には、特別受益と寄与分が規定されていますが。

令和3年改正で、遺産分割の手続では、「相続開始から10年経過後」の場合だけ、(原則として)特別受益
と寄与分を反映させない
扱いとなる。(民法904条の3)




  (期間経過後の遺産の分割における相続分)
第九百四条の三 
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、

次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができない
やむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該
相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

(特別受益者の相続分)第九百三条  ・  第九百四条   
(寄与分)第九百四条の二
共有の規定の適用の場面では、この「10年制限」はなく、相続開始直後でも特別受益と寄与分を反映させ

ない扱いが発動することになる。




令和3年改正で新設されたルールをまとめると、遺産共有に共有の規定を適用する場面では、原則として
法定相続分を使い、遺言で相続分が指定されている場合には、その割合(指定相続分)を使う、というこ
とになる。

令和3年改正の前でも後でも、2つの分割手続(遺産分割と共有物分割)が同時に進行する(並走する)
ことは生じます。この場合には、連携することになる。
(詳細を知りたい方は、専門書・インターネットなどにある参照すべきもの、などで充たしてください)。


以上で説明してきた「例外発動」の中身を再確認すると、共有物分割訴訟の中で遺産共有の解消ができる
というものです。条文上「できる」という表現になっています。「しなくてはならない」という表現では
ありません。
裁判所の裁量であり、具体的には、例外発動のケースでも、裁判所は原則どおりに遺産共有は解消しない
(共有の状態で残す)ということも可能。
法改正とは関係なく、もともと、共有物分割訴訟で裁判所が一部の共有を残存させることは可能
(もちろんそれが妥当である状況は限られているけれど)。

異議を出すには、遺産分割調停・審判の申立が必要。

(詳細を知りたい方は、専門書・インターネットなどにある参照すべきもの、などで充たしてくださる
ようおねがいいたします。)

 

 

〈参考・・・とばしてもよいのですが、知識欲がありそうならマトメとして読んでみてください〉
判例は、遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、
又は協議をすることができないときは、「家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり、通常
裁判所が判決手続で判定すべきものではない」としていた(最高裁昭和62・9・4)。
共有物について遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合においては、遺産共有持分権者を含む共有
権者
が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は

258条に基づく共有物分割訴訟であり、さらに、共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与
された財産は遺産分割の対象になるとし、この財産の共有関係の解消について907条に基づく遺産分割
によらなければならない、としていた
                      (最高裁平成25・11・29)。   
けれども、事案によっては、共有物分割の中で、相続人間の分割を実施した方が、共有物に関する帰属が
迅速に定まり、相続人にとっても便宜であるケースもあると考えられる。
改正法は、原則として、上記判例法理に従い、遺産共有の解消は遺産分割の手続によらなければならない
としつつ(本条1項)、例外的に、相続開始時から10年を経過したときは、裁判所は相続財産に属する共有
物の持分について258条の規定による共有物分割をすることができると規定している(本条2項本文)。
ただし、相続人の遺産分割上の権利も考慮し、相続人が異議の申出をした場合には、共有物分割による処理
によることはできないものとしている(本条2項ただし書)。


本条2項本文に基づき、共有物分割請求訴訟の中で相続人間の分割もすることを前提に審理が進められてい
た場合に、たとえば弁論の終結間際に相続人から異議の申出がされると、それまでの審理が無駄となってし
まう事態も考えられる。
そのような事態を防止するということから、相続人が異議の申出をすることができる期間は、共有物分割請
求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内とされている(本条3項)。



 

相続の相談はサマザマな事柄が絡むことがあります
繰り返しになりますが、実務上でも重要なこと、なので・・・

遺産分割では、令和3年改正後は、相続から10年後には特別受益と寄与分を無視することになりました
(民法904条の3)。逆にいえば、相続から10年以内は特別受益と寄与分の適用を保障するということ。
遺産共有を共有物分割で解消する手続(例外発動)では、特別受益と寄与分を無視することになる
(民法898条2項)。そこで相続から10年以内では例外発動を認めない、という設計になっている。

(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定
した相続分
をもって各相続人の共有持分とする。

        ※ (特別受益者の相続分)第九百三条  ・  第九百四条   
          (寄与分)第九百四条の二

 



                                   
                                      

                                  はたけやまとくお事務所