「ビジネス寓話50選 物語で読み解く、企業と仕事のこれから」
博報堂ブランドデザイン編
アスキー・メディアワークス発行 781円+税
出張の新幹線に乗り込む前に購入した一冊。
古今東西の寓話から教訓を飲み取り、ビジネスに活かしていこうという一冊です。
「はたらく」「売る」「つくる」「動かす」「つながる」という5つの章から構成され、古今東西の寓話、エピソードを取り上げ解説していきます。
時間つぶしには役立つ一冊でしたが、寓話自体が手垢のついたものが多く、「それ、知ってる!」という野暮な反応しか出来ない私がいました・・・。
一時期、イソップ童話をはまり、それを読み込み、先人の知恵を学ぼうとしたこともありましたが、現代のスピード感の中ではなかなか活用することができませんでした。
寓話の限界というものもあると思います。
若き日、わたしが広告代理店に入ったころ、仕事が終わると同期とともに喫茶店へ通っていました。
今だとカフェでコーヒー一杯で何時間も討論するという感じでしょうか?
今の広告業界は・・・がおかしい、わが社のトップの言うナニナニは違うのではないか・・・、といった広告会社がらみのテーマをエラソーに熱心に語り合っていました。
今思うと、社会人になった喜びと今から始まるであろう広告業界での活躍に胸躍らせていたのだと思います。
そうです。
メディアとクリエイティブとマーケティングを駆使すれば、どんなものでも売れる、われわれは広告業界にいる特権階級なのだ・・・といった変な自意識を持っていたものでした(笑)。
パンとサーカス(見世物)さえ大衆に提供すれば、世の中は動かせるものとさえ思っていました。
今回、出版された同書の著述者にも同様な空気が読み取れ、自分自身少し赤面した次第です。
今回取り上げた書籍も、「われわれは違う」という基本スタンスを持った広告マンの集団。
自信と特権意識を持った押し出しが感じられます。
でも、それでは今の世の中、モノやコトは売れません。
上から目線になっただけで消費者(博報堂さん流にいえば生活者)は、それを購入しませんし、説教くさいと感じただけで人々はソッポを向いてしまいます。
教養や知識知恵ではモノが売れない時代に入っているのです。
寓話やエピソードで社内の風土や仕組みを変えようという理想は十分に理解でききますし、また、マネジメント上十分に機能するものだと思います。
でも何かが足りない・・・。
やはり広告会社は、黒子として、知識とセンスと野心と行動力を持って、会社と社会に働きかけを行っていくことが必要だと思います。
黒幕の美学というのが必須のスピリッツだと考えます。
そして、そのほうがカッコいいと思います。
トム・ピータースではありませんが、そのブランドや商品を見た途端に言葉を失うもの、キッチンにいる主婦がオタマを落とすもの・・・を追及していくことが、これからますます必要だと思います。