原民喜という広島市出身がいたことは知っていました。
が、彼の詩や文学に触れたことはありませんでした。
ひっとしたら、小学校や中学校で習ったことはあったかもしれませんが・・・。
ひっとしたら、小学校や中学校で習ったことはあったかもしれませんが・・・。
原民喜 死と愛と孤独の肖像
梯久美子著 岩波新書 860円+税
梯久美子著 岩波新書 860円+税
広島の書店でベストセラーに入っています。
原民喜(1905~1951)は、広島市の裕福な商家に生まれ、慶応大学文学部英文学科を卒業、ほとんど仕事をすることはなく、小説家、作家、詩人を目指します。
しかしながら、生まれながらのお坊ちゃま・・・。
身の回りのことも出来ない、コミュ力もない本当に不器用な青年だったようです。
彼が変わったのが、見合い結婚した広島出身の貞恵という女性。
民喜とは正反対のポジティブで明るい性格・・・。
内助の功・・・売れない民喜を盛り上げていきます。
その妻と暮らした10年間が、民喜が最も幸せだった時期。
病で妻を亡くし、生きる希望のなくなった民喜は広島に帰省・・・。
1945年8月6日・・・広島市の中心部で被ばく。
人類初の原子爆弾さく裂・・・偶然にも民喜は無傷で生き残ります。
我ハ奇跡的ニ無傷ナリシモ、コハ今後生キノビテ
コノ有様ヲツタエヨト天ノ命ナランカ
サハレ、仕事は多カルベシ
民喜は、被爆体験に基づいた「夏の花」「原爆小景」を創作していきます。
梯久美子さんは、晩年の民喜を調べるため、丁寧な取材を展開していきます。
民喜を師と仰いだ遠藤周作、二回り年下の裕子という女性・・・。
このあたりは、中原中也や萩原朔太郎の人生ともオーバーラップしてきます。
梯久美子さん・・・カケハシさんと読みます。
梯さんは、「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林中道」で作家デビューされた方。
民喜への愛を感じさせる一冊になっています。
岩波文庫の「原民喜全詩集」の帯にも、「原爆文学の旗手は、こんなにやさしい詩人でした。」というコピーを書かれています。
ぐっと来たのが、「机」という4行詩。
机
何もしない
日は過ぎていく
あの山は
いつも遠いい
とても良い詩です。