能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

8月9日 長崎原爆の日 ヒロシマとともに後世に伝えていかなければならない特別な一日・・・浦上天主堂を想う

2021年08月09日 | 社会・経済

76年前の今日。

1945年8月9日午前11時2分、広島市に続き一発の原子爆弾が米軍により投下され、7万人以上の人たちが亡くなりました。

生き残ったヒバクシャの人たちは、戦後も放射能の影響を受け、今もその災禍に苦しめられている人たちがいます。

きのこ雲の下、多く命が失われ、こどもも一般市民も無差別に殺されました・・・本当に無念だったと思います。

広島の地から、黙とうと祈りを捧げさせていただきました。

米軍の当初の投下目標は福岡県小倉市だったそうです。

当日曇天のため、急遽ターゲットを変更し長崎市に変更。

長崎市壊滅・・・広島の悲劇から、わずか3日間・・・許されない暴挙であり、国際法違反の反人道的な行為です。

あの日から、76年も経っているのに、未だに世界には1万3000発以上の核弾頭が存在しています。

新型コロナウイルスも直面する世界的課題ですが、一瞬にして人類を滅ぼす核の問題は決して忘れることは出来ません。

 

長崎の平和公園は、過去に二度訪れたことがあります。

碧い空が広がる九州の空気が、とても気持ち良かったのを覚えています。

平和祈念像の前で、手を合わせました。

平和祈念像は、高さ約10メートルの青銅製の像。

制作者の長崎出身の彫刻家北村西望さん。

天を指した右手は「原爆の脅威」を、水平に伸ばした左手は「平和」を表したものだということを聞きました。

その時、訪れた資料館で見たのが、被爆し破壊された浦上天主堂の写真。

浦上天主堂・・・1925年に30年かけて建造され、当時、東洋一の教会と言われていたそうです。

歴史的にも、敬虔なクリスチャンが多い長崎の町・・・そのシンボル、希望である天主堂。

原爆により破壊された、その無残な教会・・・すごい衝撃を受けました。

キリスト教徒が教会を破壊する・・・神につかえるキリスト教徒であれば許されない、さらに、いたたまれない気持ちになると思います。

なぜ、広島の原爆ドームのように保存できなかったのでしょうか?

キリスト教圏の米軍の指示により意図的に壊されたのかもしれません。

とっても残念だという気持ちが沸き起こったことを今でも覚えています。

 

広島の原爆ドームも、被爆者の人たちから「最悪の原爆の惨事を思い出すから、見るのも嫌だ」という声があがったと聞きます。

取り壊しの意見も多数あったと聞きます。

それでも、ヒロシマは原爆ドームをそのまま保存するという道を選びました。

長崎の町でも、同じような取り壊し、移設、再建築といった話になったのだと思います。

 

歴史に「もしも(if)」はありませんが、もし、浦上天主堂の破壊跡が保存されていれば、国際平和に向けて大きなインパクトがあったように思います。

すくなくとも、世界中のキリスト教徒に対して、強力な無言のアピールが届け続けることが出来たはずです。

昔、広島に荒木武さん(1916年~1994年)という市長がいました。

第27代~30代の広島市長をつとめた被爆者。

当時は、米ソの冷戦中・・・荒木さんは米ソの核実験があるたびに抗議の電報を打ち続けました。

核兵器廃絶は分かるけれども、その無力な抗議スタイルに広島市民もシラケムードだったことをこども心に覚えています。

荒木市長がやったことは、抗議の電報を打つことと、広島の街に木を植えること・・・。

そんな荒木さんは、「植木市長」とも揶揄されていました。

あれから約半世紀、広島の街は水と緑にあふれる国際平和都市になりました。

後世に残る仕事をされたことを、今では多くの広島市民は喜んでいます。

現在、広島市では被爆建物である旧陸軍被服支廠の建物(4棟)を保存するかどうか、国、県、市を交えて議論されています。

後世に伝えるべきだという解体反対派と崩壊の危険がある、管理責任をどうするかと主張する保存反対派もいます。

一つ言えることは、一度壊せば、もう二度と元には戻せないということ。

悲惨な歴史を忘れないためにも、後世に伝えるためにも残していただきたい被爆建物です。


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無理ゲー社会・・・橘玲の新刊新書 わたしたちは、なんとかしてこの残酷な世界(経済格差・性愛格差)を生き延びていくほかはない

2021年08月09日 | 本と雑誌

書斎の本棚には、橘玲(たちばなあきら)さんの本が7冊並んでいます。

なぜかというと橘さんの本は、新書であっても立ち読み、流し読みでは理解できないため、購入しなければなりません(笑)。

最近では売れに売れた「上級国民/下級国民」があります。

当初は、金融や財テクで作家としてデビューした橘さんは、資本主義や格差社会にスポットを当てました。

そして、最近ではスピリチュアル、心理学の世界に関心を持たれているようです。

無理ゲー社会 才能のある者にとってはユートビア、それ以外にとってはディストピア

橘玲著 小学館新書 840円+税

 

「無理ゲー」とは、ゲームマニアの間で使われている「攻略が極めて困難なゲーム」のこと。

現代の社会を生き抜いていくことの難しさを、この一語で表しています。

給料が上がらない中、進学、結婚、子育て、介護、そして超高齢社会で増え続ける老人を支えなければならないという難題を突き付けられた若者たち・・・まさにディストピアです。

 

目次

はじめに 「苦しまずに自殺する権利」を求める若者たち

Part1 「自分らしく生きる」という呪い

Part2 知能格差社会

Part3 経済格差と性愛格差

Part4 ユートピアを探して

エピローグ 「評判格差社会」という無理ゲー

あとがき 才能のある者にとってはユートビア、それ以外にとってはディストピア

 

著者は言います。

「世界は、リベラル化、知識社会化、グローバル化の巨大な潮流のなかにある。」

→リベラルとは、「自分らしく生きる」ことを価値とする思想

「ヒトの脳に埋め込まれた欲望のプログラムは変わらない。」

「リベラルな社会を目指せば目指すほど生きづらさが増していく。」

「きらびやかな世界の中で、社会的、経済的に成功し、評判と性愛を獲得するという困難なゲーム(無理ゲー)をたった一人で攻略しなければならないというのが、リベラルな社会のルール」。

「わたしたちは、なんとかしてこの残酷な世界を生き延びていくほかはない。」

同書では、人間社会の残酷さ、経済格差、性愛格差を世界の学者の最新研究をベースにしてあぶりだしていきます。

そして、橘さんならではの言葉の切り口に思わず頷いてしまう自分がいます。

・自分探しという新たな世界宗教

・遺伝ガチャで人生が決まるのか?

・「神」になった「非モテ」のテロリスト

・「評判格差社会」という無理ゲー

「モテ」「非モテ」・・・嫌な言葉です。

「アルファ」と呼ばれるエリートの男性。

昔、日本のバブル期に「3高」と呼ばれた選良・・・「高収入」「高学歴」「高身長」・・・たぶんトップ5%にしか過ぎません。

そして、それらの限られたエリートを目指して、女性たちは、美を競い、結ばれることを目指す激烈な競争をする・・・。

動物としての本能・・・優秀な子孫を残し、DNAを繋いでいくため予め埋め込まれたプログラムなのでしょう。

著者は、そのあたりを冷静に、ロジカルに綴っていきます。

(「3低」「非モテ」の小職は、ずいぶん苦しみました・・・涙)

 

「モテ」ならいいのですが、大多数の「非モテ」の場合どうするのか?

以前であれば、コンプレックスや劣等感をバネにして努力を積み重ねるという精神論と行動論で立ち向かいました。

でも、経済停滞やコロナ禍などで絶望的な状況に置かれた若者たちは、あきらめモードや草食系に走る傾向にあるようです。

積極的消極主義なら、まだいいものの、場合によってはテロリスト化することもあると著者は指摘します。

同書では、秋葉原殺傷事件、相模原の障がい者福祉施設殺人事件、米国での絶望した若いテロリストによる無差別殺人などを取り上げています。

昨日、小田急線の車内で起こった包丁で多数を切りつけ放火しようとした犯人も同じような文脈の中にあるように思います。

 

現代の若者たちの置かれている悲惨な現状から始まる同書・・・人類はディストピアに向かっていくのではないか?と危惧させます。

しかし、著者は後半で、人類の未来、ユートピア論についてもキチンと言及しています。

「無理ゲー社会」でも、それを受け入れ、前向きに生きていく方法はきっとあります。

夏休みに、じっくりと腰を据えて読むには最適の一冊です。


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