ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授が書いた「ライフシフト」。
VUCAの時代、日本でもたくさんのビジネスパースンが「ライフシフト」の提唱するキャリア論について考えました。
今回ご紹介する一冊は、その「ライフシフト」を意訳、具体化した日本版。
サラリーマンの世界を知り尽くした二人のキャリア専門家が、悩める40歳代、50歳代のミドルシニア・・・社畜(失礼!)に語り掛けます。
ちょっと刺激的な一冊です。
ミドルシニアのためのライフシフト戦略
徳岡晃一郎・木村勝著 WAVE出版 1700円+税
帯には、大物のお二人・・・野中郁次郎さんと田坂広志さんの推薦のコピーが入っています。
「人生の知的コンバットこそ、ライフシフトの本質だ」野中郁次郎
「人生100年時代、生涯現役を目指す人、必読の書」田坂広志
なかなか期待できます。
著者の徳岡さんは日産自動車などを経て多摩大学大学院教授。
還暦を機にライフシフト社、ライフシフト大学を開校した実践家の方です。
木村さんは、同じく日産自動車などを経て、人事請負会社の代表。
お二人ともサラリーマンのプロであり、人事やキャリアのプロフェッショナルです。
同書のコアとなるのは、「5つのM」。
40歳代、50歳代のミドルシニアのサラリーマンが生き残るためには、「5M」・・・「マインドセット」「ミッション創造」「学び」「見える化」「マルチ化」が必要であると説きます。
「5M」は、著者が所属するライフシフト大学で学ぶ主要項目とのことです。
目次
第1章 このままだとミドルシニアは生き残れない 5年後の未来予想図
第2章 ミドルシニアに武器を提供する 今こそ「日本版ライフシフト」が必要だ
第3章 マインドセット 行動を変容する
第4章 ミッション創造 自分の軸を定める
第5章 学び(リカレント) キャリアを高く売る
第6章 見える化 経験・知識・スキルを商品化する
第7章 マルチ化 変化への順応力を高める
終章 ミドルシニアの皆さまと企業人事部へのメッセージ
第1章では、グローバル化、デジタル化、コロナ禍、人事制度の変化などスピードを上げて変わっていく環境を解説。
自分自身の「ボケ」度を測るための20のチェックリストもあります。
これは、役立ちそうです。
役職定年や再雇用でモチベーションダウン・・・「働かないおじさん」「妖精さん」と言われ、若年層からは蔑視されているミドルシニア世代。
就「職」ではなく新卒一括採用で就「社」するというメンバーシップ型雇用、解雇権濫用は許されず定年まで居続けなければならない悲しいミドルシニア世代。
同書では、それは本人にしても、会社にしても、社会・国にしても、実にもったいないことであると指摘します。
終章では、「これだけやればいい」と5つの提言が書かれています。
M1 マインドセット・・・「残るならしっかり、残らないなら急げ」の腹決めをする
M2 ミッション創造・・・雇用されているにしても個人事業主としての「自分会社」
M3 学び・・・ミッション達成に向けた新たな学びを開始する
M4 見える化・・・「自分会社」のパンフレットを作成してみる
M5 マルチ化・・・1年以内に3万円ビジネスを副業で一つ立ち上げてみる
そして、自分自身はどのようなベテランロール(役割)を担っていくのかという方向づけについても明快に示しています。
「レジェンド」・・・会社の「生き字引」
「コネクター」・・・職場の世話人
「イノベーター」・・・永遠の開拓者
日本の会社だと、若者が嫌がる面倒な仕事を率先してやるコネクターが多いのではないでしょうか?
特に気になったのが、本書のいたるところに出てくるキーワード。
刺激を受けます。
「40代から人生の後半のキャリアを強く意識して仕事をする」
「実務と最新技術の仲介者を目指す」
「マネジメントの力を磨いてきたか?それても単なる調整係だったのか?」
「現状維持、原状復帰は、明らかな後退!」
「消化試合に登板するマインドでは、これから生き残れない。次年度は戦力外通告を覚悟しておく」
なかなか実践的な一冊です。
悩める40歳代、50歳代のミドルシニア世代、必読の一冊です。