「新世紀エヴァンゲリオン」が、テレビ東京でオンエアされて半世紀。
このアニメは、いまだに若者、女子からオヤジまでの支持を得ています。
セブンイレブン、JR西日本、三井住友VISAカードからカゴメまで様々なタイアップ・・・異色のアニメです。
エヴァンゲリオン化する社会
常見陽平著 日経プレミアシリーズ 850円+税
著者は、千葉商科大学の専任講師。
リクルート社、玩具メーカーなどを経て大学院に入学、現在の大学の国際教養学部の教員をされています。
ガンダム世代でしょうか。
同書の中でも、エヴァとの対比の中でガンダムの記述が出てきます。
この新書、「新世紀エヴァンゲリオン」と日本の労働社会、働き方を重ね合わせて書かれています。
ブラック企業、非正規雇用、女性活躍社会、グローバル人材・・・エヴァの登場人物である碇シンジ、綾波レイ、アスカ・ラングレー、葛城ミサト、赤木リツコなどに、現代日本の労働問題、課題がオーバーラップしているとします。
なかなか面白い切り口だと思います。
◆目次
第1章 「新世紀エヴァンゲリオン」とは何か
第2章 「逃げちゃ駄目だ」と「僕はここにいていいんだ」の論理
第3章 「私の代わりはいるもの」の論理 エヴァが描いた人材像
第4章 女性の活躍とエヴァ
第5章 「使徒」が襲ってくるかのような世界
同書の帯では、
「逃げちゃ駄目だ」で軋む職場
報われない仕事
正体不明の「敵」
エヴァが予言していた労働社会・・・
と、エヴァ的レイアウトで表示、目を引きます。
著者の「エヴァンゲリオン化」の定義は、次のようになります。
1 若者に極度の期待と負荷がかけられ、世界の責任をかけて個人で背負っているように感じさせる社会
2 人が目標達成のための駒のように扱われる社会
3 「使徒」のような得体の知れない恐怖が常に忍び寄ってくる不安定な社会
確かに、そんなような気もします。
が、エヴァは、単に、エンターテイメントであり、サブカルであり、クールジャパンの一つであり、時間消費、暇つぶしのための娯楽でしかないと読みながら考えていると、「あとがき」の中で著者はエピソードを記します。
著者が尊敬する日本アニメ界のレジェンドとの対談で言われたそうです。
「所詮、ポップカルチャーなんだ。クールジャパンだの、サブカルだの言うのはやめろ」
著者はショックを受けます。
また、「新世紀エヴァンゲリオン」の企画書の引用から、同アニメは単に「巨大ロボットアニメ」であり、ターゲットは「小学生、中学生を中心に家族一般」、そして、ねらいは「自分の意思で生きること(を伝える)」ことを紹介しています。
難解、哲学的と言われた最終回も、実は、サブカル評論家の言うような、深い意味はない・・・ということになると思います。
ただ、時代のストリームの中で、アニメクリエイター、アニメ原作者は大きなインパクトを受けるわけで、役割、仕事、女性、国際化・・・など、織り込まれるメッセージは濃密に作品のコア、コンセプトになっていくようにも思います。
今回の一番の驚きは、「エヴァンゲリオン」というタイトルを持つ本が、日本経済新聞出版社の新書で出版されていたということ。
少子高齢化、人口減少、社会保障費の増大、ニッポンの国際競争力の低下、1100兆円と言われる国の債務、そして、そこを襲った新型コロナウィルス・・・。
若い人たちと話をしていると、2種類の層がいることに気づきます。
一つが、自分のキャリアを切り拓いていこうというポジィティブ派。
取り巻く環境を与件としてとらえ、立ち向かっていこうとする若者たちです。
そして、もう一つがネガティブ派・・・逃げ切ろうとする中高年、保守派を支持するシルバーデモクラシー・・・僕たち私たちは被害者だとする若者たちです。
比率として、3対7といったところでしょうか。
個人的には、逃げてもいいし、自分の個性を主張してもいいと思います。
ただ、若さの持つエネルギーを活かして、自分の可能性の追求、チャレンジを続けてほしいなあと思います。
若さの特権を活かさないなんて、もったいないです。
いずれは、齢を取って、おじいさん、おばあさんになります。
新型コロナウイルスに占領されそうになっているニッポンや世界・・・初号機の決起が待ち望まれています。