大ファンである橘玲さんの新刊新書が出ました。
著者は「上級国民・下級国民」や「無理ゲー社会(「攻略できないゲーム」のこと)」などの新語を生み出した作家。
資本主義社会や格差社会、社会の矛盾を切れ味鋭い辛口、毒舌でバッサバッサと斬っていきます。
世の中に広がる格差社会・・・ユートピアとディストピアに驚くとともに、期待、希望、不安、不信を目に前に突き付けてくれる作家。
痛快、爽快であるとともに、この社会を生きていくためのヒントを多々与えてくれます。
裏道を行け ディストピア世界をHACKする
橘玲著 講談社現代新書 940円+税
同書のキーワードは「HACK」。
もともとはMITの学生が創ったコトバだそうですが、悪い意味だけではなく良い意味でも使われる言葉だそうです。
「ルールを破っている」という意味ですが、常識やルールを無視して「ふつうの奴の上を行く」ことを指していると著者は言います。
目次
プロローグ ふつうの奴らの上を行け
PART1 恋愛をHACKせよ 「モテ格差」という残酷な現実
PART2 金融市場をHACKせよ 効率よく大金持ちになる究極の方法
PART3 脳を HACKせよ あなたも簡単に依存症になる
PART4 自分を HACKせよ テクノロジーが実現する至高の自己啓発
PART5 世界を HACKせよ どうしたら「残酷な現実」を生き抜けるか?
「リベラル化」については良いイメージしか持たない小職ですが、「自分らしく自由に行きたい」という「リベラル」の価値観・・・それはそれで厳しい世界・・・自己責任を問われます。
サルトルの言う「自由の刑に処せられている」という実存主義のニュアンスに近いと思います。
PART1の「恋愛をHACKせよ モテ格差という残酷な現実」は、前著「無理ゲー社会」から続く応用編です。
著者は米国の学者の研究を受けて言います・・・「オトコは戦い、オンナが選ぶ」。
オトコは子孫を残すために最善を尽くし、オンナは自分と子どもを守ってくれるオトコを選ぶ・・・。
オンナは選ばれるためにものすごい努力をする。
問答無用、一刀両断です。
そして、結論はこうなります。
「オトコは経済力、オンナは若さ」
身もふたもない話ですが、これが残酷な現実です。
高校生、大学生を調査すると異性に求めるものは外見力・・・見た目、カッコよさ、可愛さです。
でも、同じ調査を社会人にすると「オトコは経済力、オンナは若さ」になるそうです。
米国では、女にとっての理想の男は、「トリプル・シックス」。
「身長6フィート以上(183センチ以上)」「収入6ケタ以上(年収1100万円以上)」「腹筋が6つに割れている」。
やれやれ・・・。
この条件を満たす男性は、わずか3%。
恋愛や結婚も「無理ゲー社会」になっています。
統計学的に「アルファ」と呼ばれる、選ばれしオトコ、オンナがいます。
自分の経験則からすると、それぞれ5%くらいでしょうか?
高校のオトコ20名オンナ20名の40名クラスで言うと、それぞれスポーツも勉強も出来るカッコいいオトコ1名、聡明で美人で愛嬌のあるオンナ1名がいます。
彼彼女たちは、大学へ進み、良い会社に入り、20歳代で早々と売れていきます(結婚)。
その次のクラスに所属するオトコ、オンナも、それに次いで徐々に売れていきます。
それから、やっとその下の階層(小職です・・・涙)に番が回ってくるかと思いきや、なかなかうまく行かず苦戦を強いられることになります(涙)。
齢を取れば取るほど、さらに恋愛、結婚の難易度が上がっていきます。
同書では、そこから外れた人間がブチ切れて、小田急線刺傷事件などを起こすと指摘します。
あってはならない、残酷な現実です。
著者は、従来の「ふつうに生きていたら何とかなる」という、これまでのベルカーブの世界は終わり、「普通に生きていたら転落する」ショートヘッド、ロングテールの世界に入っていると指摘します。
大多数の「ふつうの奴ら」はショートヘッド(恐竜の頭)で「下級国民」となります。
資本主義社会でのサバイバル術や自己啓発の話のあと、最終章では「どうしたら残酷な現実を生き抜けるか?」について解説していきます。
あまり書くとネタバレになりますが、キーワードは「ミニマリスト」と「FIRE」。
「効果的な利他主義」や懐かしいボボスというライフスタイルも登場します。
お金があふれている社会、反面、格差がどんどん広がる資本主義社会・・・。
著者は言います。
「人生の難易度が上がり、ふつうに生きていたら転落する」
「才能のある者は人生を攻略し、才能のない者は搾取される」
同書を読んで何かアクションを起こすか、はたまた現状を受け入れひたすら耐え忍ぶか、逃げ出すか・・・。
前著「無理ゲー社会」と合わせて、読んでいただきたい一冊です。