人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

高関健 ✕ 横山幸雄 ✕ 東京シティ・フィルでショパン「ピアノ協奏曲第1番」、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」を聴く ~ 都民芸術フェスティバル参加公演

2021年01月21日 07時18分49秒 | 日記

21日(木)。わが家に来てから今日で2303日目を迎え、トランプ米大統領は19日午後、約20分間にわたる退任演説の動画を公開し、「我々はだれもが想像していた以上のことを成し遂げた」と自画自賛を述べた上、「私は水曜日(20日)正午、新政権に権力を移譲する準備をしているが、我々の始めた運動は始まったばかりだ」と述べ、次の大統領選出馬も含めた自身の政治運動を今後も継続していくことを示唆した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     バイデン政権発足後の弾劾裁判で有罪となれば 次の大統領選には出馬できないよ!

    

         

 

昨夕はコンサートのため外食だったので、娘の夕食に「とんぺい焼き」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作っておきました 娘の好きなチーズをたっぷり乗せてあります

 

     

 

         

 

昨夕、東京芸術劇場コンサートホールで都民芸術フェスティバル参加公演「東京シティ・フィル」のコンサートを聴きました    今回は町田でピアノの先生をしているKIRIOKAさんをお誘いしました プログラムは①ショパン「ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調」、②ショスタコーヴィチ「交響曲 第5番 ニ短調」です 演奏は①のピアノ独奏=横山幸雄、指揮=常任指揮者・高関健です

 

     

 

席は1階F列23番・24番、センターブロック右通路側です コロナ禍の影響か後方席を中心に空席が目立ちます 拍手に迎えられて入場する楽団員を見渡して驚くのは、ヴァイオリン・セクションを中心に若い奏者が圧倒的に多いということです ここ数年でかなりメンバーが入れ替わったようで、私がシティ・フィルの定期会員だった約10年前と比べると知らない顔の方が多くなっています

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置=高関シフトをとります コンマスは戸澤哲夫です

1曲目はショパン「ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調」です この曲はフレデリック・ショパン(1810ー1849)が1830年に作曲、同年ショパンがポーランドを去りウィーンに出発する告別演奏会で、作曲者自身のピアノによりワルシャワで初演されました ヘ短調の協奏曲より早く1833年にパリで出版されたため第1番と呼ばれています この曲は当時の名ピアニスト、カルクブレンナーに献呈されました 第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「ロマンツェ:ラルゲット」、第3楽章「ロンド:ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

ソリストの横山幸雄は2019年に3日間でショパンの全作品を完奏、2020年にはベートーヴェンのピアノ・ソナタ32曲全曲演奏を達成するなど並外れたパフォーマンスで話題を呼んでいます

高関の指揮で演奏が開始されます 極めてオーソドックスなテンポで序奏が進みますが、横山の独奏ピアノが入ってくると、徐々にテンポアップし高速演奏になります 第2楽章の叙情的な演奏に続き、リズミカルな第3楽章が軽快に進みます

休憩時間にKIRIOKAさんにピアニストの立場から演奏の感想を聞いてみました 彼女の感想は「高速演奏でしたね 終始 速いテンポの演奏で、ゆっくり味わいたいところも高速でスルーしてしまうので、その点は不満が残りました 技巧的には優れているんでしょうけど、心をグッと掴むようなところがないように思います。オーケストラは懸命に演奏していて とても良かったです」というものでした     私はコンサート前にサンソン・フランソワの独奏によるCDを聴いて予習をしてきたのですが、これが 今にも止まりそうな超スローテンポの演奏なのです この演奏と聴き比べてみると、いかに横山の演奏が際立って速いかが分かります どちらが正しいかというよりも、高速演奏が現代にマッチしたスタイルになっているということだと思います この点に関しては、KIRIOKAさんも私もフランソワのような演奏の方が好きだ、ということで一致していました

 

     

 

プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲 第5番 ニ短調」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906ー1975)が1937年に作曲、同年11月21日にエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルにより初演されました オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」などが、スターリンの意向を受けた共産党機関紙「プラウダ」で「プチブル的」「形式主義的」と批判されたことに対する名誉回復を成し遂げた作品と言われています 第1楽章「モデラート」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「ラルゴ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

高関健の指揮で演奏に入りますが、全体を通して弦楽器群の渾身の演奏が光ります さらに首席フルート奏者の竹山愛をはじめとする木管楽器群の演奏が素晴らしい KIRIOKAさんの感想は、「コンサートマスターの演奏が素晴らしい 軸がぶれていないですね。若い楽団員の熱演が好ましく感じました。下手な演奏だと寝てしまうんですが、そんなことは全くなく、最初から最後まで熱意のある演奏に惹きつけられました 指揮者がいいんでしょうね。また、入場者数が少なめだったことが幸いしてか、ホールの響きがとても良かったと思います」ということでした 私の感想もほぼ同じでした

 

     

 

私はコンサートに関して「一人で聴く」ことを主義としていますが、たまには友人や知人と一緒に聴いてお互いの感想を語り合うのも良いものだと思います KIRIOKAさん、お付き合いいただきありがとうございました 「完全防音ピアノルーム」新設の準備でお忙しいとは思いますが、機会を見てまた行きましょうね

 

     

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ヴァィグレ✕読売日響でヒンデミット:交響曲「画家マチス」、R.シュトラウス:交響詩「マクベス」、ハルトマン「葬送協奏曲」を聴く

2021年01月20日 07時21分10秒 | 日記

20日(水)。わが家に来てから今日で2302日目を迎え、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は18日、上海で建造中の3隻目の新型空母が年末までに浸水する可能性があるとの観測を報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     軍事力を誇示することで 東南アジア地域を支配する 覇権主義を貫く方針の表れだ

 

         

 

昨日、夕食に「豚の生姜焼き」を作りました 最後にマヨネーズを加えたらいっそう美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで読売日響の第605回定期演奏会を聴きました    プログラムは①R.シュトラウス:交響詩「マクベス」、②ハルトマン「葬送行進曲」、③ヒンデミット:交響曲「画家マチス」です    演奏は②のヴァイオリン独奏=成田達輝、指揮=読響常任指揮者セバスティアン・ヴァィグレです

会場は、緊急事態宣言発令中ということもあってか、寂しい入りです 1階だけ見渡しても3分の1程度しか埋まっていません

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並び。コンマスは長原幸太です

1曲目はR.シュトラウス:交響詩「マクベス」です この曲はリヒャルト・シュトラウス(1864ー1949)がシェイクスピアの同名戯曲に基づいて1886年から88年にかけて作曲(その後2回改訂)、1890年にワイマールで初演されました

ヴァィグレの指揮で演奏に入りますが、全体として 後の交響詩を先取りした感があり、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」や「ドン・キホーテ」を彷彿とさせる管弦楽法が駆使され、とくに管楽器の咆哮が目立ちました

2曲目はハルトマン「葬送協奏曲」です この曲はカール・アマデウス・ハルトマン(1905ー1963)が1939年に作曲(59年に改訂)、1940年にスイスのザンクト・ガレンで初演された 独奏ヴァイオリンと弦楽合奏のための協奏曲です 第1楽章「イントロダクション:ラルゴ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ・ディ・モルト」、第4楽章「コラール:ラングサム・マーチ」の4楽章から成ります

ハルトマンはナチスに徹底的に反抗した作曲家のようです    彼は政府から「退廃音楽家」のレッテルを貼られ、この曲も国内では初演できずスイスで演奏されています

この曲は当初トーマス・ツェートマイアーの独奏で演奏される予定でしたが、コロナ禍の影響で来日不能となったため成田達輝の代演となりました     成田は読響の「ソリスト変更のお知らせ」の中で、次のようなメッセージを寄せています

「ハルトマンの葬送協奏曲を知ったのは、ヴァイオリニストのレオニダス・カヴァコスさんがこの曲の演奏を薦めてくれたのがきっかけで、実は既に2年前からスコアを買って読んでいました   この曲に込められた、惨禍とその鎮魂への思いが現在の世界と折り合わさり、大変意義深いものになることと思います    心を込めてお届けいたします

ヴァィグレの指揮で演奏に入りますが、成田はスコアの深い読み込みのもと、最弱音から最強音まで、ナチスによる惨禍とその犠牲となった人々への鎮魂の思いを全身を使って表現しました 最終楽章の最後の一音が終わっても、ヴァィグレはタクトを上げたまま、成田もヴァイオリンの弓を上げたままで向き合い、会場にしじまが訪れました 静寂は長いように感じましたが、実際には1分くらいだったと思います。2人の手が降ろされると満場の拍手が会場を満たしました この作品の趣旨からして、「演奏後の沈黙までが音楽である」ことを感じました 成田は、ハルトマンのスコアを掲げ、「作曲者にこそ拍手を」と言わんばかりにアピールしました

 

     

 

プログラム後半はヒンデミット:交響曲「画家マチス」です この曲はパウル・ヒンデミット(1895ー1963)が、中世ドイツの画家マティアス・グリューネヴァルトの祭壇画を題材として1933年から翌34年にかけて作曲、1934年3月12日にフルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルにより初演されました 彼は同名のオペラも作曲していますが、この交響曲は姉妹作と言える作品で、オペラの素材を再構成する形で並行して作曲されました 曲名の「画家マティス」とは、マティアス・グリューネヴァルトとして知られる16世紀のドイツの画家マティス・ゴートハルト・ナイトハルトのことです 第1楽章「天使の奏楽」、第2楽章「埋葬」、第3楽章「聖アントニウスの誘惑」の3楽章から成ります

全曲を通して、フルートのフリスト・ドブリノヴ、オーボエの金子亜未の演奏が素晴らしく、ホルン、トロンボーン、トランペットといった金管楽器群の演奏が冴え、厚みのある弦楽器が際立っていました

指揮者のカーテンコールが繰り返され、楽団員が舞台袖に引き揚げた後も拍手が止まないため、ヴァィグレだけが再度登場し、「コロナだろうが何だろうが 常任指揮者は責任を全うしなければならない」ということを身をもって示していました 彼の想いに 聴衆はスタンディングオベーションで応えました

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マウロ・リマ監督「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」を観る ~ ジョアン・カルロス・マルティンスの半生 / 読響アンサンブル(2月19日)、ウィーン・プレミアム・コンサート(3月24日) ⇒ 中止

2021年01月19日 07時22分01秒 | 日記

19日(火)。もう終わったと思っていた「払い戻し」が2件復活してしまいました 読売日響から「読響アンサンブル・シリーズ  2月19日(金)中止のお知らせ」のハガキが届きました 当日は上岡敏之氏が出演予定でしたが、コロナ禍の影響で来日できなくなったため中止することになったとのこと 会員には3月中旬に郵便局からの「払出証書」により返金するとしています しかし、今回の中止は私にとってはラッキーでした というのは、2月19日は午後7時からバッハ・コレギウム・ジャパンの「ヨハネ受難曲」のコンサートがあり、日時がダブっていたからです 行けなくなったチケットをどうしたものかと悩んでいたところでした 長いことコンサート通いをしていると、たまにこういうことがあります

また、サントリーホール・メンバーズ・クラブから3月24日開催の「ウィーン・プレミアム・コンサート」中止の案内メールが届きました  「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響および、現時点での新規入国停止の状況を踏まえ、公演を中止することになった」旨が書かれていました これで昨年から続く私に関わる「払い戻しドミノ」は114公演になりました

ということで、わが家に来てから今日で2301日目を迎え、毒殺未遂事件に遭ったロシアの反政権活動家、アレクセイ・ナバリヌイ氏が17日、療養先のドイツからモスクワに帰国し、直後に空港内でロシア当局に拘束された  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     世界4大独裁者の一人 トランプが去っても 金正恩と習近平とプーチンが残ってる

 

         

 

昨日の夕食は「牡蠣鍋」にしました 材料は牡蠣、海老、白菜、エノキダケ、シメジ、シラタキ、焼き豆腐です 今回は牡蠣鍋専用のスープを使ったのでとても美味しく出来ました 〆はうどんでしたが、スープによく合いました

 

     

     

 

         

 

昨日、神楽坂のギンレイホールでマウロ・リマ監督による2017年製作ブラジル映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」(117分)を観ました

ジョアン・カルロスは病弱だった幼少期(ダヴィ・カンポロンゴ)にピアノと出会い、才能を大きく開花させていく    20歳(ロドリゴ・パンドルフ)でクラシックの殿堂と知られるカーネギーホールでデビューを飾り、「20世紀で最も偉大なバッハ奏者」として世界的に活躍するまでになる 一流の演奏家として世界を飛び回っていたが、1965年、サッカーの試合中に右手の3本の指に障害を抱え、ピアニストとしての生命線である指が動かせなくなってしまう しかし、不屈の闘志でリハビリに励んだジョアン(アレクサンドル・ネロ)は、ピアニストとしての活動を再開、自身の代名詞ともいえるバッハの全ピアノ曲収録という偉業に挑戦する そんな中、ジョアンは1995年、ブタペストで暴漢に襲われて 頭を強打され 能に障害が残って右手の自由が利かなくなりピアノの演奏が出来なくなってしまう しかし、彼には左手があり、指揮者という道も残されていた

 

     

 

この映画は、「20世紀最高のバッハ演奏家」と称され、事故によるハンディキャップを抱えながら、不屈の精神で困難に立ち向かったブラジルのピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンス(1940年~)の半生を描いたドラマです

ピアニストの半生を描いた映画だけあって、冒頭から最後までクラシック音楽が絶え間なく流れます 冒頭の場面はバッハ「ヨハネ受難曲」」BWV245の演奏シーンですが、まるでピアノ協奏曲のようにオーケストラをバックに ジョアンのピアノがメインに据えられて演奏しています     チェンバロの代わりとしてのピアノでしょうが、脇役が主役に躍り出た いかにも "映画作品" だと思います

映画では「平均律クラヴィーア曲集第1巻」から第1番「プレリュード」BWV846、「イタリア協奏曲」BWV971、「ゴルトベルク変奏曲」BWV988、「フランス組曲第5番ト長調」BWV816,「パルティータ第2番ニ短調」BWV826から「シャコンヌ」、「管弦楽組曲第3番」BWV1068から「G線上のアリア」,「ピアノ(チェンバロ)協奏曲第1番ニ短調」BWV1052から第1楽章などのバッハの作品が 練習やコンサートのシーンで流れるほか、ショパンの「マズルカ」や「エチュード」、シューマンの「トロイメライ」、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」、ヒナステラの「ピアノ協奏曲」、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」などの楽曲が随所に流れます これらの曲はすべてジョアン・カルロス・マルティンス本人が演奏した音源を使っているそうです ヒナステラの超絶技巧超高速演奏が凄い ラヴェルは左手だけで弾いているとは思えない迫力です

この映画を観るまで、ジョアン・カルロス・マルティンスというバッハのオーソリティと言われるピアニストがいることを知りませんでした    彼には最後に指揮者としての道が開かれていたわけですが、クラシックの歴史を振り返ってみると、ピアニストから指揮者に転向したアーティストが何人かいます 真っ先に思いつくのはアルゼンチン出身のダニエル・バレンボイムです  次に頭に浮かぶのはドイツ出身のクリストフ・エッシェンバッハです    アジアでは、韓国出身のチョン・ミョンフン(1974年のチャイコフスキー国際コンクール第2位)がいます    一芸に秀でる者は何とか、とはよく言われる言葉ですが、すべての人がそうではありません やはり、それだけの才能を持っている人だけが 別の道で生き残るのだと思います

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飯守泰次郎 ✕ 新交響楽団でスメタナ「わが祖国」全曲を聴く / 「マスク +『2メートル』= 新様式の合唱 ~『第九』で飛沫1メートル超  密回避を」~ 朝日の記事から

2021年01月18日 07時20分23秒 | 日記

18日(月)。昨日の朝日朝刊「新型コロナウイルス」ページに「マスク+『2メートル』=新様式の合唱~『第九』で飛沫1メートル超  密回避を」という見出しの記事が載っていました 超訳すると、

「文部科学省は昨年12月、合唱について、原則マスクをつけ、前後左右の間隔を2メートル(最低1メートル)空けて歌うよう求める通知を出した この通知の背景には、歌い手からしぶき(飛沫)がどう広がるのか、実際に調べた実験のデータがある 全日本合唱連盟と東京都合唱連盟が12月に実験の報告書をまとめた。曲は、はっきりした強弱があり、卒業式などで人気の合唱曲『大地讃頌(さんしょう)』と、ドイツ語の『第九』で試した 5マイクロメートル以上の比較的大きな飛沫でみると、大地讃頌では男性で最大61センチまで飛んだ。ドイツ語の第九では遠くまで飛び、最大で111センチだった マスクをつけて歌うと飛沫は大幅に減った。実験を受けて全日本合唱連盟のガイドラインが改訂され、練習するときには前方向に1.5メートル程度、左右には『密が発生しない程度』を確保し、十分な換気をすることなどが盛り込まれた クラシック音楽公演運営推進協議会も12月、プロの声楽家8人の協力を得た実験の報告書を公開した 歌手や言語によって、飛沫の量は大きく違った。日本語より、ドイツ語やイタリア語の方が多い傾向があった テノールよりソプラノの方が多い傾向も見られた

この記事を見る限り、コロナが収まるまでは、オーケストラのライブコンサートにおける多人数による合唱は出来ず、極力人数を絞って少数精鋭の合唱で歌うしかなさそうです ますますアマチュア合唱団の出番はなくなり、プロの合唱団の出番が増えるように思います

ということで、わが家に来てから今日で2300日目を迎え、豊富な資金力をバックにトランプ大統領を支持してきた全米ライフル協会(NRA)が破産法の適用を申請した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     人殺しの武器で金もうけして トランプに献金してきた団体は トランプと共に去れ!

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで新交響楽団の「第252回演奏会」を聴きました プログラムはスメタナ:連作交響詩「わが祖国」全曲です 指揮は仙台フィル常任指揮者、東京シティ・フィル桂冠名誉指揮者、関西フィル桂冠名誉指揮者を務める飯守泰次郎です 「わが祖国」はスメタナ(1824ー1884)が1874年から1879年にかけて作曲した6つの曲から成る連作交響詩です 第1曲「ヴィシェフラド」、第2曲「ヴルタヴァ」、第3曲「シャールカ」、第4曲「ボヘミアの森と草原から」、第5曲「ターボル」、第6曲「ブラニーク」です   各楽曲の初演は1875年から1880年にかけて別々に行われており、全6曲の初演は1882年11月5日でした

 

     

 

自席は1階G列23番、センターブロック右から2つめです    市松模様配置なので実質的に右通路側です

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの新響の並び。コンミスは内田智子さんです 緊急事態宣言発令中ということもあってか、弦楽奏者は全員がマスク着用、譜面台は1人が1台を使用します 満80歳の飯守泰次郎がゆったりとした足取りで指揮台に向かいます

第1曲「ヴィシェフラド(高い城)」はプラハにあるヴィシェフラド城を題材としています この城はボヘミア国の国王が居城していたことこともある城でしたが、戦乱により破壊され廃墟となりました この曲は1872年から1874年にかけて構想され、1874年9月末から11月中旬にかけて作曲されましたが、この間、スメタナの聴力が徐々に衰えるようになり、それから間もなく完全に失聴してしまいます したがって、6曲のうちこの曲だけがスメタナが失聴する前に書かれた唯一の作品ということになります

ステージ左奥にスタンバイした2台のハープが「ヴィシェフラド」のテーマを抒情的に奏でますが、この演奏が素晴らしい   この動機は「わが祖国」全体を支配します

第2曲「ヴルタヴァ(モルダウ)」は1874年12月に完成されましたが、単独で演奏される機会の多い作品です ヴィシェフラド城の下を流れる川が「モルダウ」です 南ボヘミアの源流のしずくが小川になり、それが次第に大きな流れになり、エルベ川に向かって遠ざかっていく様々な場面が描かれています

冒頭、フルートによる冷たい水源とクラリネットによる温かい水源から流れ出しますが、この演奏が絵画的で素晴らしい また、流れの途中での村人たちの楽しい祭りの様子や、夜になって月光に照らされるモルダウ川の様子が目に浮かぶような演奏です

第3曲「シャールカ」は1875年2月に完成しましたが、シャールカとはプラハの北東にある谷の名前です その名前の由来は、男たちと女たちが死闘を繰り広げたというチェコの伝説「乙女戦争」に登場する少女の名前です 物語は「恋人に裏切られた少女シャールカは怒りに燃えて全男性に復讐を誓う 兵士たちが 思いあがった女たちを懲らしめるためにやってくると、シャールカはわざと木に縛り付けられて苦しんでいるように見せかる    ツティラートは彼女を見て恋に落ち、彼女を解放する    彼女は酒宴を催しツティラートと兵士たちに酒を飲まて眠らせてしまう シャールカの吹くホルンを合図に女軍が襲いかかりツティラートと兵士たちを刺殺し、復讐を果たす」というものです

シャールカを現すクラリネットの演奏が素晴らしかった そして兵士たちが眠っている様子を描いたファゴットの”いびき”が思わず笑いを誘いました 私は「わが祖国」の中では「モルダウ」とともにこの「シャールカ」が好きですが、具体的なストーリ―を音楽で表しているので分かり易いからだと思います

 

     

 

休憩後の最初は第4曲「ボヘミアの森と草原から」です 1875年10月に完成したこの曲は、ボヘミアの田舎の美しさを描写した音楽です 色彩感溢れる演奏がスケール感を伴って展開しました

第5曲「ターボル」は1878年12月に完成しましたが、次の「ブラニーク」とともに、15世紀のフス戦争におけるフス派信者たちの英雄的な闘いを湛えた曲です 「フス戦争」とは、ボヘミアにおける宗教改革の先駆者ヤン・フスが、堕落した教会を烈しく非難して破門され死刑にされた後、彼の教理を信奉する者たちが団結して起こした18年に及ぶ戦争です ターボルとは南ボヘミア州の古い町で、フス派の重要な拠点でした

冒頭の重く力強い音楽「タ、タ、ター、ター」はティンパニと低弦の刻みの上にホルンが奏で、曲全体を通して現れますが、これはフス派の有名な讃美歌「なんじら神の戦士」に基づくモットーです オーケストラは渾身の演奏を展開します

最後の第6曲「ブラニーク」は1879年3月に完成しましたが、第5曲「ターボル」のフィナーレのメロディーを引き継ぐ形で演奏されます ブラニークとは中央ボヘミア州にある山の名前で、ここにはフス派の戦士たちが眠っており、また讃美歌に歌われる聖ヴァ―ツラフの率いる戦士が眠るという伝説もあります 平和と自由を讃えるファンファーレが力強く演奏され曲を閉じます 聴きごたえのある素晴らしい演奏でした

ところで、「プログラムノート」は毎回 楽団員の方が交替で執筆されていますが、いつも充実した内容で感心しています 今回はコントラバス奏者の中野博行さんが書かれていますが、とても参考になりました 一例を挙げれば、中野さんは「わが祖国」について次のように解説されています

「奇数番目の曲(ヴィシェフラド、シャールカ、ターボル)は、歴史的あるいは回顧的な動機を用い、偶数番目の曲(ヴルタヴァ、ボヘミアの森と草原から、ブラニーク)は生きた現在の鼓動あるいは未来をあらわそうと意図されている これによって、人民と国土が離れがたく結ばれていることを示した

もちろん、いろいろな参考文献にあたって勉強された上で書かれているわけですが、それにしても熱心に勉強された跡が窺えます 新交響楽団はアマチュア・オーケストラですが、個々の楽団員の方々の音楽に対する情熱は、プロに負けないのではないか、とあらためて感じました

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ヨハン・シュトラウスⅡ世:オペレッタ「こうもり」の映画を観る ~ ヤノヴィッツ、ヴェヒタ-、ヴィントガッセン他 / 東京交響楽団第680回定期(1月24日・ミューザ川崎)開演時間を45分繰り上げ

2021年01月17日 07時22分35秒 | 日記

17日(日)。東京交響楽団から2021ー2022シーズンのチケットが届きました また、別のハガキで1月24日(日)ミューザ川崎で開催の「第680回定期演奏会」(5月30日 サントリーホールで開催予定で この日に延期された公演)の開演時間の変更通知が届きました 当初19:00開演予定だったのが18:15開演に45分繰り上げられました(開場17:45。終演20:00予定)。これは政府による緊急事態宣言に伴う措置です プログラムは①ボッケリーニ(ベリオ編曲)「マドリードの夜の帰営ラッパ」、②ベルク「ヴァイオリン協奏曲”ある天使の思い出に”」、③ベートーヴェン「フィデリオ」序曲、④⑤⑥同「レオノーレ」序曲  第1番、第2番、第3番 ②のヴァイオリン独奏は南紫音、指揮は下野竜也で変更ありません 変更により来場できない場合は払い戻しに応じるとしています。政府によるGo Toキャンペーンといい、緊急事態宣言に伴う措置といい、オーケストラと聴衆はコロコロ変わる方針に振り回されますね。困ったものです

ということで、わが家に来てから今日で2299日目を迎え、米調査機関ピュー・リサ―チ・センターは15日、トランプ大統領の支持率が過去最低の29%になったとの世論調査結果を発表、一方 米主要メディアは同日、下院で弾劾訴追されたトランプ氏が、バイデン次期大統領就任式が開かれる20日の朝にワシントンを離れると報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     自分の負けを絶対に認めないという意志表示だろうけど 待っているのは弾劾裁判だ

 

         

 

昨日、江東区住吉のティアラこうとう小ホールで「オペレッタ映画名作選 ~ ヨハン・シュトラウスⅡ世『こうもり』」を観ました 出演は ロザリンデ=グンドラ・ヤノヴィッツ、アイゼンシュタイン=エバハルト・ヴェヒタ-、オルロフスキー=ヴァルフガング・ヴィントガッセン、アデーレ=レナーテ・ホルム、ファルケ博士=ハインツ・ホレツェック、フランク=エーリッヒ・クンツ、アルフレード=ヴァルデマール・クメント、フロッシュ=オットー・シェンク他。合唱=ウィーン国立歌劇場合唱団、管弦楽=ウィーン・フィル、演出=オットー・シェンク、指揮=カール・ベームです

 

     

 

このオペレッタはヨハン・シュトラウスⅡ世(1825ー1899)が1873年に作曲、翌74年にアン・デア・ウィーン劇場で初演されました ヨハン・シュトラウスⅡ世の街ウィーンでは、年末年始の風物詩として「こうもり」が上演されています

物語の舞台はウィーン郊外。銀行家アイゼンシュタインは顧問弁護士の不手際で禁固刑が延長され大憤慨する しかし、悪友ファルケ博士に誘われ、妻ロザリンデには刑務所に出頭すると偽って、変装してロシアのオルロフスキー侯爵邸の夜会へ出かける そこでハンガリーの伯爵夫人を名乗る仮面の美女を 妻と気付かず口説くが、小道具の懐中時計を巻き上げられてしまう   翌朝、刑務所に出頭したアイゼンシュタインは、収監されている若い男アルフレートと、駆けつけた妻の浮気を疑うが、証拠物件の懐中時計を見せられ、自分の浮気がばれて逆にやり込められてしまう そこへ、茶番劇の仕掛け人ファルケが現れ、過去にアイゼンシュタインにからかわれた時の復讐劇だったことを告げ、一同で「すべてはシャンパンのせい」と歌い上げ、大団円を迎える

 

     

 

これはオペレッタをライブ録画したものではなく、映画作品として撮影したものです 自ら刑務所の看守フロッシュとして出演した演出家のオットー・シェンクが監督した1972年製作・ドイツ語・143分の映画で、この日の上映は休憩なしでした 会場のティアラこうとう小ホールは初めてでしたが、60人位の観衆が集まりました。これほど人気があるとは思いませんでした

映画ということもあり、台詞の部分はそのままで、歌の部分はスタジオ録音した歌に口パクで合わせています

映画の冒頭は、指揮者カール・ベームが「序曲」を指揮する姿が正面から捉えられています ベームは1894年生まれなので、この映画の撮影時はすでに78歳です 映像を観る限り78歳とは思えない矍鑠たる指揮ぶりです ロザリンデを歌ったヤノヴィッツはカラヤン好みのソプラノで、リヒャルト・シュトラウス「4つの最後の歌」をはじめ数々の名演が残されています この頃が歌手として絶頂の時期で、伸び伸びと歌い演技しています 一方、通常はメゾ・ソプラノで歌われることの多いオルロフスキー公爵を歌ったヴォルフガング・ヴィントガッセンはワーグナー歌いとして有名な歌手です 体形からして貫禄があり、いかつい顔付きの彼が侯爵の歌を歌うと、リアルの彼と役柄との落差が大きく、かえって笑いを誘います 刑務所長フランクを歌ったエーリッヒ・クンツは、カラヤン ✕ ウィーン・フィル ✕ シュワルツコップによるリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」でファ二ナルを演じた歌手として有名です 注目すべきは、この映画に登場する歌手陣は全員が「宮廷歌手」の称号を持っているということです 映画作品として後世に残すため当時の精鋭歌手を集めたということでしょう

「こうもり」で楽しいのは、もちろん歌手陣の歌と演技もありますが、私が一番ワクワクするのはオルロフスキー公爵邸のパーティ―でシュトラウスのポルカ・シュネル「雷鳴と電光」に乗って踊られるバレエです バレエ団の演舞に続いて歌手陣も加わってポルカを踊りますが、実に楽しいのです この音楽を聴くといつも思い出すのは、1986年に神奈川県民ホールで聴いたカルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団によるコンサート(ベートーヴェンの第4番&第7番)でアンコールとして演奏された「雷鳴と電光」です 「華麗な指揮」というのはまさにカルロス・クライバーのためにある言葉だと思います

次回は2月20日にカールマンのオペレッタ「チャールダーシュの女王」を観に行きます アンナ・モッフォがヒロインを歌います。すごく楽しみです

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佐渡裕 ✕ 田部京子 ✕ 新日本フィルでモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番」、ベートーヴェン「交響曲第6番」「同8番」を聴く ~ 第36回ルビーコンサート

2021年01月16日 07時29分34秒 | 日記

16日(土)。わが家に来てから今日で2298日目を迎え、朝鮮中央通信が15日に報じたところによると、北朝鮮・平壌の金日成広場で14日夜、朝鮮労働党の第8回党大会を記念した軍事パレードが開催され、「北極星5」と表記された新型の潜水艦発射ミサイル(SLBM)とみられる兵器などが登場、「世界最高の軍事力を証明した」と伝えた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     アメリカの独裁者が退場すると思っていたら  北朝鮮に厄介な独裁者が残っていた

 

         

 

昨日、夕食に「鶏のから揚げ」を作りました 栗原はるみ先生のレシピによる「うまみ醤油」を作り置きしてあると思っていたら、冷蔵庫には影も形もなかったので、ニンニク、ショウガ、削り節と醤油で急ごしらえして冷蔵庫で30分ほど寝かせ、鶏肉を20分くらい漬けてから 揚げましたが、圧倒的に時間が足りなかったせいで 味が薄かったのでレモン汁をかけて食べました

 

     

 

         

 

昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの「第36回ルビーコンサート」を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「交響曲 第8番 ヘ長調 作品93」、②モーツアルト「ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466」、③ベートーヴェン「交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 ”田園”」です 演奏は②のピアノ独奏=田部京子、指揮=佐渡裕(上岡敏之の代演)です

いつものように、午後2時の開演に先立って午前11時からホール隣のホテル6階の「チャペル」で音楽ライター・小室敬幸氏によるワン・コイン講座があり 参加しました 小室氏は「多様における統一 ~ ウィーン古典派の価値観を知る」と題して、この日の演奏曲目の解説を兼ねて①ウィーン古典派と「多様における統一」、②ハイドンの事例、③モーツアルトの事例、④ベートーヴェンの事例について音での再生を交えながら解説しました     私のような音楽素人にも分かり易い解説で毎回とても参考になります    主催者の新日本フィルにはずっと続けてほしいと思います

 

     

 

さて本番です。座席は市松模様を取らない通常配置です     オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの新日本フィルの並び。コンマスはチェ・ムンスです    オーボエには東京フィル首席の加瀬孝宏氏が客演しています。新日本フィルは たしかオーボエ首席候補の募集でオーディションをやっているはずですが、どうなったのでしょうか

さて、1曲目はベートーヴェン「交響曲 第8番 ヘ長調 作品93」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770ー1827)が1811年から翌12年にかけて作曲、1813年にウィーンのルードルフ大公 邸で私的に初演されました 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ・エ・コン・ブリオ」、第2楽章「アレグレット・スケルツァンド」、第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット」、第4楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります 他の交響曲が誰かに献呈されている中で、この曲だけが誰にも献呈されていません。ベートーヴェン自身は第7番よりも第8番の方が気に入っていたようですが、それだけになぜ誰にも献呈しなかったのか疑問です また、小室氏の解説によると、この曲は9曲の交響曲の中で奇数番の曲に比べて人気がないが、最近は専門家の間で見直されているとのことです

大柄な佐渡裕の指揮で第1楽章が開始されますが、彼はタクトを持ちません。たぶん目でアイコン・タクトを取るのでしょう 彼の指揮で聴くのは本当に久しぶりで、どこのオケを振って何を演奏したのかさえ思い出せませんが、その時に感じたのは「いかにも元気が良いが、ちょっと荒っぽいな」ということでした しかし、今回の第8番を聴く限りそうした印象は全くなく、歳を重ねて丸くなったのかな、と思いました 全体を通して感じたのは「力強くも包容力のある演奏」です。特に第3楽章を中心に温かく包み込むような感じを受けました

ピアノが右袖からセンターに運ばれてモーツアルト「ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466」に備えます この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756ー1791)が1785年に作曲、同年初演されました モーツアルトのピアノ協奏曲(全27曲)の中で、第24番ハ短調K.491とともに2つの短調作品の一つです モーツアルトは1782年から86年の間に15曲(第11~25番)のピアノ協奏曲を書いていますが、その中にこの2曲が入っています。モーツアルトが乗りに乗っていた時期に書かれたと言えます 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ロマンツェ」、第3楽章「ロンド:アレグロ・アッサイ」の3楽章から成ります

淡い藤色のエレガントな衣装の田部京子がピアノに向かい、佐渡の指揮で第1楽章に入ります モーツアルトのほとんどのピアノ協奏曲は、最初にオーケストラによる序奏があって、独奏ピアノは女王のごとくおもむろに登場します 序奏部の短調特有のデモーニッシュな音楽を聴くとゾクゾクします 続けて入ってくる田部京子のピアノはどこまでも美しくエレガントです カデンツァはどうやらベートーヴェンの作曲によるものと思われます。聴きごたえがありました 第2楽章に入ると、ピアノの美しさに優しさが加わります 田部さんはそういう人なのでしょう。人間性が音楽に表れています ピアノを弾く、というよりは音を紡いでいくという表現がぴったりするような演奏です 第3楽章はモーツアルトの「明」と「暗」が混じり合いながらドラマティックに展開し、華やかなフィナーレを迎えました ソリスト、オーケストラともども素晴らしい演奏でした

休憩時間にパトロネージュ部の登原さんと立ち話しましたが、幸運にも会場内でモーツアルトが聴けたようで、「ピアノがとても綺麗でしたね」とおっしゃっていました オーケストラのスタッフの皆さんも仕事に支障がない限り ”わがオーケストラ” を聴くべきだと思います そうしなければ、人に「うちのオーケストラはこんなに素晴らしいんですよ」とは言えないはずです どんどん聴いてほしいと思います

 

     

     

プログラム後半はベートーヴェン「交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 ”田園”」です この曲は1807年から翌08年にかけて作曲され、1808年12月22日にアン・デア・ウィーン劇場で初演されましたが、この日は歴史的な1日になりました この日のプログラムは次の通りでした

①交響曲 第5番 ヘ長調 『田園』(現在の第6番)

②アリア  ”Ah,perfido" 

③ミサ曲ハ長調(作品86)より「グロリア」

④ピアノ協奏曲第4番ト長調

 《 休 憩 》

⑤交響曲第6番ハ短調(現在の第5番)

⑥ミサ曲ハ長調(作品86)より「サンクトゥス」と「ベネディクトゥス」

⑦合唱幻想曲

この日のコンサートの記録によると、当日は「暖房もない劇場で、少数の観客が寒さに耐えながら聴いていた」とされています 上記のプログラムから想像できるように、全体で4時間を超える超ロング・コンサートになっており、演奏上のトラブルもあり大失敗に終わったようです 当時の人たちにとってはこの日演奏された作品の全てが「現代音楽」です それを考えると、どれだけの人がベートーヴェンの作品を理解できたか、と疑問が湧きます

CDや配信技術によって演奏を繰り返し聴くことが出来る現代から、1回だけ過去に遡って ある特定の日・場所にワープできるとしたら、1808年12月22日のアン・デア・ウィーン劇場が最有力候補になると思います

さて、この曲は第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ:田舎に着いて起こる晴れ晴れとした気分の目覚め」、第2楽章「アンダンテ・モルト・モッソ:小川のほとりの情景」、第3楽章「アレグロ:田舎の人々の楽しい集い」、第4楽章「アレグロ:雷鳴・嵐」、第5楽章「アレグレット:牧人の歌、嵐の後の喜ばしい、感謝の念に充ちた気持ち」の5楽章から成ります

佐渡の指揮で演奏に入ります 全体を通して聴いた印象は、特定の演奏者が目立つというよりは全体のバランスを重視した演奏だったということです 第4楽章ではフルートの野津、オーボエの加瀬、クラリネットのペレスといった木管奏者の好演が目立ちましたが、全体としてはアンサンブル重視でした 佐渡はこの曲でも包容力のある音楽作りに徹していました

ところで、プログラム冊子(1,2月号)の「楽団よりお知らせ」に「ソロ・コンサートマスターの豊島泰嗣氏が12月末でソロ・コンサートマスターを辞し、桂冠名誉コンサートマスターに就任することになった。今後の演奏会にも出演する」旨の告知が掲載されていました 豊嶋氏は1964年生まれの56歳なので定年というわけではないようです。これまで東京交響楽団の大谷康子さんの「名誉コンサートマスター」という例がありますが、「桂冠名誉コンサートマスター」というのは豊嶋氏が初めてではないか、と思います いずれにしても、今後のコンサートにも出演するということなので一安心です

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「エレファントマン 4K修復版」&「ウィッカーマン」を観る ~ 「エレファントマン」におけるバーバー「アダージョ」の使い方をあらためて認識:新文芸坐

2021年01月15日 07時20分12秒 | 日記

15日(金)。わが家に来てから今日で2297日目を迎え、トランプ米大統領の支持者が連邦議会議事堂を襲撃した事件を巡り 下院は13日、トランプ氏が扇動したとして、弾劾訴追する決議案を共和党議員10人を含めた賛成232 反対197で可決、トランプ氏は米国史上初めて 2回弾劾訴追された大統領になった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       米国史上初・前人未踏の大記録を残したんだから もう目立つ行動はしなくていいよ

     

         

 

昨日、夕食に「豚バラと野菜の味噌炒め」「生野菜サラダ」「チンゲン菜の中華スープ」を作りました 不手際で味噌炒めしか映っていませんが

 

     

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐で「エレファントマン  4K修復版」と「ウィッカーマン」の2本立てを観ました

「エレファントマン  4k修復版」はデビッド・リンチ監督による1980年製作アメリカ・イギリス合作映画(モノクロ・124分:2020年に4K修復)です

見世物小屋で「エレファントマン」として暮らしていた青年メリック(ジョン・ハート)の前に、ある日、外科医のトリーヴス(アンソニー・ホプキンス)という男が現れる メリックの特異な容姿に興味を持ったトリーヴスは、メリックを研究材料にするため、自分が努める病院に連れ帰ることにした 何も話さず怯え続けるメリックを、周囲は知能が低いと思っていた しかし、ある時、メリックが聖書の一節を暗唱するなど知性溢れた優しい性格であることが判明する トリーヴス医師は彼に会いたいという人々に面会を許すが、次第に自分も見世物小屋の支配人と同様メリックを見世物にしているのではないかと自問するようになる ある日、見世物小屋の支配人たちが夜中に乱入しメリックを連れ去ってしまう そして彼は再び見世物小屋で「エレファントマン」として暮らすようになるが、彼を虐待するのを見ていた仲間たちが助け出し逃亡させる 逃亡先で見つかった彼は新聞に載ったため、トリーヴスが迎えに行く そして永久にトリーヴスの勤める病院の一室を住家として暮らせるようになり、安堵してベッドに横たわるのだった

 

     

 

この映画は、19世紀末にイギリスに実在した奇形の青年ジョン・メリックの悲劇の人生を描いた感動的な作品です

この映画と切り離すことが出来ないのは映画のラストに流れるバーバーの「弦楽のためのアダージョ」です この曲はサミュエル・バーバー(1910ー1981)が1937年に作曲した「弦楽四重奏曲ロ短調」作品11の第2楽章を作曲者自身が弦楽合奏用に編曲した作品です 悲しみを湛えた静かな曲で、ジョン・F・ケネディの葬儀の際に流されて一躍有名になりました 日本では昭和天皇崩御の際にNHKテレビで流されました。映画ではオリバー・ストーン監督「プラトーン」、園子音監督「ヒミズ」などでも使われています

「エレファントマン」を観るのは今回が2回目ですが、1回目に観た時、この曲はジョン・メリックの悲劇の人生を象徴する悲しい音楽だと捉えていたのが、今回観て、それが間違っていたことに気が付きました この音楽が流れるラストシーンは、ジョンが逃亡先から助け出された後、安心して眠れる病院の一室でベッドに体を横たえて「すべてが終わった」と呟いて休む場面です つまり、悲劇の人生はもう終わったーという安堵の音楽としてバーバーの「アダージョ」が使われていたのです 名作は何回観ても新しい発見があります

 

         

 

「ウィッカーマン」はロビン・ハーディ監督による1973年製作イギリス映画(88分)です

ハウイー警部(エドワード・ウッドワード)は、行方不明の少女ローワンを捜しにスコットランドの孤島サマーアイルにやってきた 夕方から酔っぱらいが猥歌を大声で歌い、海岸では大勢の若者たちが乱交パーティーをしている その上、宿の娘ウイロー(ブリット・エクランド)は警部を誘惑し、敬虔なクリスチャンである彼は悶絶する ここでは島民たちの間で大地豊穣と男根崇拝が基本の原始宗教が信仰され、生活の隅々まで沁みわたっていた 100年前にこの島に原始宗教を普及させた一族の末裔で統治者サマーアイル卿(クリストファー・リー)を訪問した警部は、強引にローワンの墓を掘り返す許可を取ったが、掘り起こされた棺から出て来たのは何と野兎の死体だった 直感的にローワンが生きていると感じた警部は、彼女が翌日の豊作祈願の祭りで生贄にされるのではないかと推測する 当日、動物の面をかぶり、色とりどりの衣装を身にまとった島民のパレードに紛れ込んだ警部は、海の神に捧げる生贄となったローワンを助け出そうとするが、逆に藤で編んだ巨人ウィッカーマンの体内に押し込められ豚や鶏とともに燃やされる 実はすべて異教の神を信仰する無拓な人間を生贄にするための罠だったのだ

 

     

 

この映画は一種のミステリーホラーですが、当時のフォークソングがふんだんに歌われたり、ポルノチックな場面が出てきたりと面白い趣向の作品です

行方不明の少女を救う為にやってきた警部が、逆に罠にはまって生贄にされてしまい、敬虔なクリスチャンである彼は、燃える「ウィッカーマン」の体内で「神よ助け給え」と祈りますが、残念ながら神は存在しませんでした キリスト教もカルト的な原始宗教には敵わないということでしょうか

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エリアフ・インバル 指揮 東京都交響楽団で ワーグナー「トリスタンとイゾルデ~前奏曲と愛の死」 & ブルックナー「交響曲第3番」(初稿版)を聴く ~ 都響スペシャル2021

2021年01月14日 07時19分26秒 | 日記

14日(木)。わが家に来てから今日で2296日目を迎え、トランプ米大統領の支持者が連邦議会議事堂を襲撃した事件を巡り、ペンス副大統領は12日、民衆党のペロシ下院議長に書簡を出し、副大統領と閣僚が大統領の職務を停止させる手続きを定めた憲法修正25条は、懲罰や(大統領職の)剥奪ではなく、大統領の医療的・精神的な無能状態のときに使われるべきだと主張し、同条を発動しない意向を伝えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     まさにトランプが「精神的な無能状態」だからなのだ 4年後はペンスさん出馬して

 

         

 

昨日、夕食に「肉じゃが」と「生野菜とワカメのサラダ」を作りました あとは卵納豆と豆腐の味噌汁です。和食はいいですね

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで「都響スペシャル2021」1月度コンサートを聴きました プログラムは①ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」、②ブルックナー「交響曲 第3番 ニ短調 ”ワーグナー” 」(1873年初稿版)です 演奏はエリアフ・インバル指揮 東京都交響楽団です

 

     

     

オケは通常配置ですが、客の入りは市松模様配置と同様程度と思われます それでも、緊急事態宣言発令中にしては結構入っている方だと思います 自席は1階11列16番、センターブロック左通路側です。オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは矢部達哉、隣に四方恭子というダブル・コンマス態勢です この公演に賭ける都響の意気込みを感じます

1曲目はワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」です    この楽劇はリヒャルト・ワーグナー(1813‐1883)が1857年から59年にかけて作曲、1865年にミュンヘンで全曲が初演されました 

白髪のインバルが登場し指揮台に上がりますが、なぜか彼は指揮棒を2本携えています 指揮の途中で思い余って吹っ飛ばしてもいいようにという配慮でしょうか・・・まさか 2本人でもないのに・・・

冒頭の「トリスタン和音」が奏でられると、一気に現実から離れ、ある意味不安定な、夢心地の世界に持っていかれます こういう名演で聴くとワーグナーの毒にどっぷり漬かりそうです とりわけチェロ軍団が素晴らしい演奏を展開していました

 

     

 

プログラム後半はブルックナー「交響曲 第3番 ニ短調 ”ワーグナー” 」(1873年初稿版)です     この曲はアントン・ブルックナー(1824ー1896)が1872年から73年にかけて作曲しましたが、その後第2稿、第3稿が出されました   ブルックナーは1873年9月、交響曲第2番と第3番の楽譜を携えて、バイロイトのワーグナー宅 を訪問しましたが、ワーグナーは第3番の方に興味を示しブルックナーを激賞したため、この曲をワーグナーに献呈しました そのためこの曲は「ワーグナー交響曲」と呼ばれています 第1楽章「中庸に、神秘的に」、第2楽章「アダージョ/荘厳に」、第3楽章「スケルツォ:かなり急速に」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章から成ります

この演奏を聴くに当たって、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルのCD(1970年・第3稿)で予習しておきましたが、実際にインバルの指揮で初稿版による演奏を聴くと、第1楽章、第4楽章を中心にかなり違いのあることに気が付きます 最も顕著なのは初稿版ではゲネラル・パウゼ(全休止)が多用されているということです あるメロディーが演奏されたかと思うと、急に音楽が止まり、まったく別のメロディーが演奏され、するとまた急に音楽が止まり、今後は前のメロディーが再現される・・・と言った具合に、作品がブツ切りにされている印象があります いわばメロディーのパッチワークを聴いているような印象です それだけに作品全体が冗長になっているようです しかし、そうしたことを割り引いても、インバル指揮都響の演奏は素晴らしいものがありました

ブルックナーの交響曲では、とりわけ金管楽器の活躍が目立ちますが、冒頭からフィナーレまでホルンが素晴らしい演奏を展開しました そして、オーボエ、フルートを中心とする木管群、さらに厚みのある弦楽セクション、とくにチェロの活躍に目覚ましいものがありました

インバルは都響のメンバーの持てる力を最大限に引き出し、終始スケールの大きな演奏を展開しました

終演後、楽団員が楽屋に引き揚げた後も拍手が鳴りやまず、インバルだけが繰り返しカーテンコールに呼び戻されました 聴衆のスタンディングオベーションに笑顔で手を振っていたインバルがとても印象に残りました コロナ禍の中、よくぞ来日して名演を届けてくれました 世界中でコンサートが休止されている中、インバルの指揮によりフルオーケストラでブルックナーの交響曲が聴けるということがいかに素晴らしいことか、という思いを抱きながら家路につきました

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黒澤明監督「生きものの記録」を観る ~ 原水爆の恐怖から逃れるためにブラジル行きを決断した男とその家族の葛藤の物語:新文芸坐

2021年01月13日 07時22分39秒 | 日記

13日(水)。わが家に来てから今日で2295日目を迎え、北朝鮮の朝鮮労働党は10日、金正恩党委員長を党総書記に推戴するとの決定書を採択したが、祖父の金日成、父の金正日の権威と並ぶことで「最高尊厳」としての地位をより固める狙いとみられる  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     金正恩が委員長から総書記に昇格したことで 北朝鮮の国民は幸せになれるのかね?

 

         

 

昨日、夕食に勝浦市在住の大学時代の友人S君が送ってくれた鯵を塩焼きにして、「生野菜とアボカドのサラダ」「具沢山味噌汁(人参、大根、里芋、ジャガイモ)」を作り、前日の鍋料理の残り物とともに食べました 鯵は大振りで美味しかったです

 

     

 

         

 

新文芸坐で上映中だった「銀幕に甦れ!黒澤&三船 日本映画最高のコンビ」特集(全12本)は昨日が最終日でした 私にとって最後の12本目となる 橋本忍・小國英雄・黒澤明脚本、黒澤明監督による1955年製作映画「生きものの記録」(モノクロ・103分)を観ました

歯科医の原田(志村喬)は、家庭裁判所の調停委員をしている 彼はある日、家族から出された中島喜一(三船敏郎)への準禁治産者申し立ての裁判を担当することになる 鋳物工場を経営する喜一は、原水爆の恐怖から逃れるためと称して、ブラジル移住を計画し、そのために全財産を投げ打とうとしていた 家族は、喜一の放射能に対する被害妄想を強く訴え、喜一を準禁治産者にしなければ生活が崩壊すると主張する しかし、喜一は裁判を無視してブラジル移住を性急に進め、ブラジル移民の老人(東野英治郎)を連れてきて、家族の前で現地のフィルムを見せて唖然とさせる 喜一の「死ぬのはやむを得ん、だが殺されるのは嫌だ」という言葉に心を動かされた原田は、彼に理解を示すも、結局は申し立てを認めるしかなかった 準禁治産者となった喜一は財産を自由に使えなくなり、計画は挫折した。彼は家族に手をついてブラジル行きを懇願した後に倒れる 意識を回復した喜一は、家族が「工場があるうちは日本を離れない」という言葉を耳にし、夜半に工場に放火する 工場で働く職人たちから「自分たちさえ良ければ我々はどうなってもいいのか」と詰め寄られ、「お前達もブラジルに連れて行く」と言うが、家族から「そんな金はどこにあるんだ」と呆れられる 精神病院に収容された喜一を原田が見舞いに行くと、喜一は明るい顔をしていた 彼は地球を脱出して別の惑星にきたと思っていたのだった 病室の窓から太陽を見て、喜一は原田に「地球が燃えとる」と叫んだ

 

     

 

この映画は、米ソの核軍備競争やビキニ環礁での第五福竜丸被爆事件などで加熱した反核世相に触発されて、原水爆の恐怖を真正面から取り上げた社会派ドラマです 60歳の主人公・中島喜一を演じた三船敏郎は当時35歳でした しかし、映像からは60歳にしか見えません 三船敏郎という俳優は大したものだとあらためて思いました

この作品の構想は、「七人の侍」の撮影中に黒澤明が友人の作曲家・早坂文雄宅を訪れたときに、ビキニ環礁の水爆実験のニュースを聞いた早坂が「こう生命を脅かされちゃ、仕事はできないねぇ」と言い出したことがきっかけとなったといいます 音楽は早坂が担当していますが、この作品の音楽が遺作となりました

この映画は興行的に失敗し、黒澤も「自身の映画の中で唯一赤字だった」と語っていますが、その理由を「日本人が現実を直視しなかったからではないか」と分析しています しかし、その56年後の2011年の東日本大震災に伴う東京電力 福島原発の「メルトダウン」事故を経験した日本人、特に 何の罪もないのに故郷を追われた福島の人たちにとっては、リアルな極めてリアルな問題として捉えられると思います とても主人公の中島喜一を「誇大妄想狂」と笑うことはできないでしょう あと2か月すると東日本大震災の発生から10年になります

 

     

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「東京・春・音楽祭2021」のチケット発売 ⇒ 2月以降に延期 / 黒澤明監督「天国と地獄」を観る ~ シューベルト「五重奏曲”ます”」も流れる:新文芸坐

2021年01月12日 07時21分47秒 | 日記

12日(火)。昨日は3月から4月にかけて上野で開かれる「東京・春・音楽祭2021」のチケットの第1弾の発売予定日でした 対象は4月2日と3日に東京文化会館で開かれるワーグナー「パルジファル」(演奏会形式)公演です その後は、第2弾として1月17日にリッカルド・ムーティ―指揮による「マクベス」(4月19日、21日)が、第3弾として1月24日にモーツアルト「レクイエム」(4月11日)、プッチーニ「ラ・ボエーム」(4月15日)が、第4弾として1月31日に残りのすべてのコンサートのチケットが、それぞれ発売される予定でした

しかし、残念ながら「東京・春・音楽祭2021」のホームページによると、「緊急事態宣言の発令を受け、1月11日以降に順次発売予定だった同音楽祭のすべてのチケット発売を延期する。新たなチケット発売日程は、2月上旬に当サイト及びSNS(Facebook、Twitter)、音楽祭のメールマガジンで案内する」となっています

1年前の同音楽祭は、前売りチケットは売れたものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府による「大規模イベント自粛要請」と「緊急事態宣言」の影響を受けコンサートはほぼ全滅となり、数多くのチケット代払い戻しを余儀なくされました 主催者側としてはその二の舞は避けたいと考えるのはよく理解できます 同音楽祭がホームページで最初にプログラムの概要を発表したのは昨年12月4日でしたが、「新型コロナウイルス感染予防と拡散予防を徹底した上で実施する」旨を表明しており、また、これまでの「来場チケット」に加え、今回初めて「ライブ・ストリーミング配信視聴」も用意されているので、市松模様による座席配置で開催するものと思われます いずれにしても、払い戻しに次ぐ払い戻しは 今後一切まっぴらごめんです

ということで、わが家に来てから今日で2294日目を迎え、全米ゴルフ協会は10日、2022年にトランプ大統領の所有する東部ニュージャージー州のゴルフ場で開催予定だった全米プロ選手権の会場を変更すると発表したが、これは今月6日に発生したトランプ支持者による連邦議会議事堂乱入事件を受けた措置で、トランプ氏の名を冠した会場での開催は「協会のブランドに打撃となることが明らか」と説明している  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     やりたい放題やってきたが 権力から離れれば こういう事態がドミノ倒しで起こる

 

         

 

昨夕はあまりにも寒かったので夕食は「みそ鍋」にしました 材料は豚バラ肉、鶏肉団子、キャベツ、しめじ、モヤシ、豆腐です。お酒は熱燗ですね

 

     

     

 

         

 

昨日、新文芸坐で小國英雄・菊島隆三・久坂栄二郎・黒澤明脚本、黒澤明監督による1963年製作映画「天国と地獄」(モノクロ・143分)を観ました
ある日、「ナショナル・シューズ社」の常務・権藤金吾(三船敏郎)の元に、「子どもを預かった」という男からの電話が入る そこに息子の純が現れ、いたずらと思っていると住み込み運転手である青木の息子・進一がいない 誘拐犯は子供を間違えたのだが、そのまま身代金3000万円を権藤に要求する デパートの配送員に扮した刑事たちが到着し電話の盗聴に備える 妻の伶子(香川京子)や青木は身代金の支払いを権藤に懇願するが、権藤にはそれができない事情があった 権藤は密かに自社株を買い占め、近く開かれる株主総会で経営の実権を手に入れようと計画を進めていたのだ 翌日までに大阪へ5000万円送金しなければ必要としている株が揃わず、地位も財産もすべて失うことになる 権藤は誘拐犯の要求を無視しようとするが、その逡巡を見透かした秘書に裏切れられたため、一転して身代金を払うことを決意する 権藤は3000万円を入れた鞄を持って、犯人が指定した特急こだまに乗り込む しかし、同乗した刑事が見たところ車内に子どもはいない すると電話がかかり、犯人から「酒匂川の鉄橋が過ぎたところで、身代金の入ったカバンを窓から落とせ」と指示される 特急の窓は開かないと刑事が驚くが、洗面所の窓が、犯人の指定した鞄の厚み7センチだけ開くのだった 権藤は指示に従い、その後進一は無事に解放されたものの、身代金は奪われてしまう 戸倉警部(仲代達也)率いる捜査陣は、進一の証言や目撃情報、電話の録音などを頼りに捜査を進め、進一が捕らわれていたアジトを見つけ出すが、そこにいた共犯と思しき男女はすでにヘロイン中毒で死亡していた  これを主犯による口封じと推理した戸倉は、新聞記者に協力を頼み、共犯者の死を伏せ、身代金として番号を控えていた札が市場で見つかったという嘘の情報を流す 新聞記事を見た主犯は身代金受け渡し用の鞄を焼却するが、鞄は燃やすと牡丹色の煙が発する仕掛けが施されており、捜査陣はそこから主犯が権藤邸の近所の下宿に住むインターンの竹内銀次郎(山崎努)という男であることを突き止める 竹内の犯罪に憤る戸倉は、確実に死刑にするためにあえて竹内を泳がせる。竹内は横浜の麻薬中毒者の巣窟で、純度の高い麻薬使用によるショック死の効果を実験した後、生きていると思った共犯者を殺しにアジトに来たところを逮捕される 後日、竹内の死刑が確定する。権藤は竹内の希望により面会する。最初こそ不敵な笑みを浮かべながら語る竹内だったが、権藤邸が天国、自分が地獄にいたという恨みを語ったのち、突然金網に掴みかかり、絶叫する 竹内は刑務官に取り押さえられ、2人の間にシャッターが下ろされる

 

     

 

この映画は、エド・マクベインの「キングの身代金」(1959年)に触発された黒澤明が、「徹底的に細部にこだわった推理映画を作りたい」ということと、「当時の誘拐犯罪に対する罪の軽さ(未成年者略奪誘拐罪で3か月以上5年以下の懲役《刑法第224条》、営利略取誘拐罪で1年以上10年以下の懲役《刑法第225条》に対する憤り」が製作の動機だといいます 映画は興行的には成功したものの、公開された3月以降、吉展ちゃん誘拐殺人事件など、日本国内で誘拐事件が多発しました 映画の公開は中止にはなりませんでしたが、国会でも問題として取り上げられ、1964年の刑法の一部改正(「身代金目的の略取(無期または3年以上の懲役)」を追加)のきっかけになりました

最初はビジネスの命運をかけた金を他人の子どもの身代金に使うことを絶対に認めない権藤でしたが、性格的にそれができない彼は最終的に払うことを決断します しかし、そのために会社内の権力抗争で失脚し担保にしていた家屋が差し押さえられてしまいます すると、それがマスコミで報道され、権藤に対する同情が寄せられ一躍時の人となります 戸倉警部は犯人を憎む心と 窮地の権藤を救いたい一心で、犯人の竹内を確実に死刑にするためにあえて泳がせますが、これは死刑に値するほどの重大事件を犯人に起こさせることになるわけで、非常に危険な賭けです まあ、映画だから許されるストーリー展開です

列車が酒匂川の鉄橋にさしかかるシーンの撮影で、民家の2階部分が邪魔になったため、依頼して撮影の1日だけ2階部分を取り払わせ、後日復元させたそうです 頼む方も頼む方ですが、応える方も応える方です。CG全盛の現代においてはとても考えられない手間のかかる仕事をやっていたわけです なお、この映画に登場する「特急こだま」は新幹線ではありません。「在来特急こだま号」です。当時はまだ新幹線は開業していませんでした

この映画はモノクロですが、一瞬だけカラーが使われています 身代金の入ったカバンを燃やすとピンク色を発する薬剤を仕込んであるという設定になっており、犯人がカバンを焼却炉に持ち込んだため煙突からピンクの煙が立ち上がったというシーンです これはモノクロ画面にマスキング合成で着色したそうです。黒澤監督は「椿三十郎」で「椿だけカラーで映したい」と希望したものの技術的に出来なかったのを、この映画で実現したのでした

この映画では、犯人がボロアパートの部屋の窓から高台にある権藤の邸宅を見上げるシーンで、シューベルト「五重奏曲 イ長調 ”ます”」の第4楽章の明るいテーマがラジオから流れます 地獄から天国を見上げるシーンですが、この音楽の使い方も一種の「コントラプンクト」(悲しい時に あえて楽しい音楽を流すことによって悲しさを倍増させる手法)でしょう

新文芸坐で上映中の「銀幕に甦れ! 黒澤&三船 日本映画最高のコンビ」特集も今日が最終日です 私は「生きものの記録」を観に行きます

 

     

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