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「漁夫の利」

2016年10月18日 17時33分48秒 | 創作欄
競輪は走る格闘技であるので、失格すれすれのラフな競り合いもあるレース展開ともなる。
「漁夫の利」という表現を東剛志は実感しながら、車券師の道を歩んできた。
つまり、脚力上位の選手が脚力どうりに勝てるわけではない。
展開と仕掛けるタイミングに左右されるので、不確定要素が多い。
このため、9人で走るのであるが、車券は穴になりやすい。
それゆえに高高配も期待できるのだ。
東剛志は「漁夫の利」を想定しながら、買うべき車券の検討してきた。
力が拮抗した選手が二人レースに乗ってきた場合、やり合う場面、牽制しあう場面ともなる。
そこで「漁夫の利」を得る選手が台頭するのだ。
相手が強すぎるので、作戦の立てようもない場面である。
第三の立場の選手は、ダメ元で追い切り前で走るのである。
本命に推された実力一番の選手と言えど、ライバルを意識しすぎて、仕掛けるタイミングが遅れる。
しかも、後方や中断の位置でもがき合う最悪の展開となり、脚力をロスする。
勝負どころの4コーナーや直線で最大の瞬発力を発揮すべきところ、その余力を失う状況となる。
意地となって、相手のラインを前に出させない場合も多い。
「バカだな。行かせろ。何であんなところで競り合うのだ」と多くの競輪ファンは腹立たしくなる最悪のレース展開となる。
あるいは、本命ラインが逃げてしまう。
逃げて勝てるわけではない。
競輪は風圧に左右される競技であり、逃げたら惨敗する。
先行する選手の後ろが断然有利となる。
番手有利と競輪では評される。
だが、レースが追い込み(捲り)の展開となれば、番手選手は力が上位でないかぎり、2着となる。
軸となる選手が先行か追い込み(捲り)によって、結果は異なるのが競輪である。
利根輪太郎は東剛志が「漁夫の利」を狙って車券を買っていることを知る。
車券の軸となる選手を選び出す勝負勘、直感力が東剛志は非凡であった。

競輪談義をしながら酒

2016年10月18日 14時23分44秒 | 創作欄
利根輪太郎は松戸競輪場で出会った東剛志から居酒屋で車券師の所以を聞いた。
「ギャンブルでは、儲けられないと言うがそれが事実だ」
「そうですよね」輪太郎は肯いた。
東は日本酒の吟醸を飲んでいた。
「酒は、日本酒に限るね」
「そうですね」輪太郎は同感であった。
刺身の盛り合わせに日本酒は合っていた。
昭和50年代、まだ競輪場は賑わっていて、店の客の大半が競輪談義をしながら酒を飲んでいた。
当時の競輪ファンはまだ若く、生活にも余裕があったので、競輪場の周辺の各店はそれ相応に繁盛していた。
輪太郎は競輪場で初めて阿佐田哲也の姿を見かけて心が高揚していた。
聞けば東剛志は一人で麻雀店へ出はいりしていた。
裏の賭博場も知っていた。
「東さんも麻雀放浪記のような世界に身を置いてきたのですね」輪太郎は東の体験談に興奮してきた。
「自衛隊は一度も戦場に行かなかったが、賭博場は疑似戦場とも言えたね」
「そうですか」と応じながら、輪太郎は裏の賭博場を体験したくなった。
「浅草では突然、警察の手入れがありトイレの窓から逃げた。危なかった」
あくまで裏の賭博場は非合法の世界であるのだ。

松戸競輪場で阿佐田哲也の姿を見た

2016年10月18日 07時51分19秒 | 創作欄
利根輪太郎は、松戸競輪場で阿佐田哲也の姿を見た。
阿佐田はグレーの地に黄色の縦縞が入るダブルの背広を着ていた。
ボタンを止めていないのでラフな服装に映じた。
両手をズボンのポケットに入れ、穴場の手前でしばし立ち止った。
視線は前面に注がれており、眼光が鋭く光った。
この日は、1レースから車券の配当は低配当が続いていた。
「阿佐田さんは、車券を取っているだろうか?」輪太郎は阿佐田の大きな背中を見詰めた。
背中が放つ雰囲気は、勝負師の姿そのもに映じた。
「阿佐田哲也だね」と脇に立った男がつぶやく。
車券師を任ずる東剛志であった。
輪太郎は払戻場で大金を手にする東剛志の姿を何度も見かけていたが、まだ声をかけて居なかった。
東剛志は防衛大学卒の陸上自衛隊の元一佐であった。
日本の旧陸軍では大佐である。
彼は妻を乳がんで亡くし、自衛隊を退官してからいわゆる自由人になった。
子どもは居なかったので、勝手気侭な人生を選ぶことができたのだ。
その日、輪太郎は東剛志に声をかけられ、北松戸駅東口の坂の途中にある居酒屋へ誘われた。
「時々、あんたをみかけるね。どこから来ているの?」
「取手です」
「今日は、全レース堅く収まったね。珍しいことだ」
「そうですね。取りましたか?」
「50万円くらい浮いたかな」
東剛志が本命買いをしていたとは思わなかった。
「これも、縁だ。酒でも飲もう」東剛志の誘いに輪太郎は応じた。
母から1700万円の郵便貯金通帳を貰ってから、輪太郎は上昇しつつあった。
「運が着いてきた」と思っていた。

「一点突破」

2016年10月18日 07時14分35秒 | 社会・文化・政治・経済
★心が決まらなければ、力は出し切れない。
★力を存分に発揮するには?
戦いは、まず自らの一念が定まっているかどうか。
それが先決である。
★受け身の姿勢ではだめだ。
勝負には中途半端な姿勢が一番だめだ。
★「一点突破」から破竹の勢いが生まれる。
一つの壁を破れば、新たな歴史が開ける。
★どんな試練にも必ず勝つとの証を残すことだ。
★良書は善に対する意欲をかき立てる―トルストイ