地球温暖化によって海水が膨張し、過去100年で世界の平均海水面は19センチ上昇しました。南太平洋の島国では浸水が進み、海岸線が内陸へ入り込んでいます。国によっては、国土全体が海に沈んでしまう危険も増大しています。
暮らしのための水がなくなる
たくさんの人々が、生活するための水を得にくくなります。特に、乾燥した地域に住む人々や、氷河や雪に生活用水を頼っている人々は、その被害を受けやすくなります。氷河や雪解け水から生活するための水を得ている人は、世界の人口の6分の1を占めます。
洪水が起きる
山岳地域では、氷河が溶けることによって氷河湖ができ、それが決壊することで、大規模な洪水が起こりやすくなります。また、これらの山岳地帯は、世界の大河川の源流にあたるため、氷がなくなると、その河川の流域全体で水不足が起きるおそれがあります。
災害が増える
嵐や大雨などの異常気象が増えるため、沿岸地域では洪水や浸水の水害がひどくなります。特に人口が集中する都市域では、極端な降水や内水洪水、沿岸洪水、地滑り、大気汚染、干ばつ及び水不足が、人々や、資産、経済、および生態的なリスクをもたらすでしょう。
自然への影響
生きものたちが消えてゆく
IUCN(国際自然保護連合:International Union for Conservation of Nature and National Resources)の「レッドリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)」(2017年)によると、地球温暖化が原因の一つとなって絶滅の危機に瀕している 野生生物は、ホッキョクグマなどをはじめ、1,750種以上にのぼります。
地球温暖化による野生生物への影響
生態系が変化する
生育に適した気温や降水量のある地域に育つ植物は、気温や降水量が変化すると、生育地域を変えざるを得なくなります。中には、気候の変化に適応でき ず、絶滅する植物も出てくるかもしれません。また、それに伴い、植物に依存して生きる動物も、生息域を変えなくてはならなくなり、変化に対応できない種が 減少・絶滅する可能性があります。
海の生態系にも影響が
気温と同様に生じる海水温の上昇は、海のさまざまな生物にも影響を及ぼします。特にサンゴは水温の変化に弱く、地域的に死滅する可能性が指摘されています。また、二酸化炭素が海洋に吸収されることで、海水の酸性化が進み、植物プランクトン、動物プランクトン、サンゴ、貝類や甲殻類など、海洋生態系の基盤を担う多くの生物がその打撃を受けると予想されています。これらは、さらに多くの海洋生物の成長や繁殖に影響を及ぼし、海洋全体の生態系に大きな変化が起きる怖れがあります。
森林火災が増える
乾燥化が進む地域では森林火災が増え、野生生物の生息地が広く失われるおそれがあります。
湿地の自然がなくなる
主に海面の水位が上昇することにより、沿岸部を中心とした地域に広がる湿原や干潟で、塩分濃度の上昇や水没といった被害が出ると考えられています。この結果、世界各地の湿地環境が、大幅に減少するとみられています。
これまでにないスピードで変化していく気候、多発する異常気象が引き起こす環境の変化は、ホッキョクグマをはじめ、さまざまな野生生物を、絶滅の淵へ追い込んでいきます。野生の生きものたちの危機は、地球上のあらゆる生き物を支える自然の崩壊へつながります。
暮らしへの被害
農業への打撃
気温や雨の降り方が変わると、農作物の種類やその生産方法を変える必要がでてきます。特に経済力の無い小さな規模の農家はこれらの変化に対応するのが難しいため、生産性が下がる可能性があります。乾燥地域においては、土壌水分が減少することで、干ばつに見舞われる農地が増加する可能性が高いとされています。
病気や飢餓が広がる
食料の生産性が下がると、病気にかかる人や、飢餓状態に陥る地域が増える可能性があります。特に食料の生産性が下がるアフリカ地域で影響がひどくなると予想されます。また、熱帯などの伝染病を媒介する生物の分布域が変わることで、免疫をもたない人々に病気が広がり、被害が拡大するおそれがあります。
異常気象が襲ってくる
異常気象による熱波・洪水・旱魃・森林火災などの自然災害が頻繁に起こり、被害を受ける人が増えると考えられています。自然災害の規模も大きくなり、被害が拡大すると予測されています。
地球温暖化による社会への影響
「適応」に直ちに取り組むことの必要性
これらの温暖化による悪影響は、産業革命前に比べて気温上昇を2度未満に抑えることができたとしても、ある程度の影響はすでに避けられません。
IPCCの第5次評価報告書は、温暖化により引き起こされる現象に、対応する手段も明記しました。これを「適応」と言います。
異常気象や食糧の生産が落ちるといった温暖化の影響は、適応の手段をとっていくことによってかなり軽減されることがわかっています。
温暖化は、原因である温室効果ガスの排出量を削減する努力だけではなく、影響に適応する準備も同時に行っていかなければならないところまで来ています。