増える介護事業者の倒産 苦境の訪問介護
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いま介護事業者の倒産が相次いでいます。ことし1月~8月の倒産件数は114件と、前年同期比で4割以上増えています。
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深刻な人手不足や光熱費などの高騰に加えて、介護の現場からは“介護報酬の改定”の影響を懸念する声も上がっています。
洗濯・片づけ…サポート受ける高齢者
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訪問介護のヘルパーが、認知症で1人暮らししている東京都内の80代女性の自宅を訪れました。
ヘルパーは、デイサービスの迎えが来るまでに、着替えや洗濯物の取り込みや片付けなど日常生活のサポートを行います。
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ほかにも例えば…
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サービスを利用している80代の女性は次のように話しました。
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基本報酬2%程度引き下げ 利益率は低く…
この高齢女性に訪問介護のサービスを提供している介護事業所は、利用者の自宅20軒ほどを回っています。
いま経営に影響を及ぼしているというのが、2024年に訪問介護の基本報酬が2%程度引き下げられたことです。
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訪問介護には、サービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅で行うものと、利用者の自宅を一軒一軒訪問するものがあります。
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サービス付き高齢者向け住宅などは全体の利益率を押し上げていますが、一軒一軒まわる訪問介護は移動や待機の時間がかかるため、効率的に働くことが難しく、利益率が低いのが実情です。経営環境が違っても同じ訪問介護と位置づけられ、基本報酬が引き下げられたのです。
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経営に苦しむ小規模事業所
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取材した介護事業所では、売り上げの80%以上を人件費に回さざるをえない状況だといいます。
介護事業所代表 辻本きく夫さん
「私の給料は月に8万円くらい。そこに給料をちゃんと出したら当然赤字になってしまう。経営者がそんなに給料をとらないで回している事業所なんかいくらでもある」
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代表の辻本さんは来年75歳になります。自身の高齢化を理由に、ことし6月いっぱいで自分の事業所を閉鎖して、利用者を受け継いでサービスを提供してくれるほかの事業者を見つけようと考えていました。しかし、いまもほかの事業者が見つからず事業を続けざるをえない状況です。
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辻本さん
「いま働いている人たちに『後継者としてやってくれ』と言うのは、それはあまりにも酷な話。いつやめようか、どういうふうにやめようか、考えているところがすごく多いと思う」
「黒字化できる施策に転じないと」
専門家は次のように指摘しています。
介護行政に詳しい 淑徳大学 総合福祉学部 結城康博 教授
「地域型の小規模事業所は経営者のやりがい、社会的責任感で事業を運営していた。収支が黒字化できるような施策に転じないと、ますます地域型の訪問介護事業所は少なくなってしまう」
厚生労働省 9月から現状を調査
こうした状況について厚生労働省は「今回の報酬引き下げがどのような影響を与えているか、9月から調査を始めていて、現場の状況を把握、分析していきたい」としています。
高齢者の「住み慣れた家で暮らしたい」という願いにどう向き合っていくかが問われています。
(経済番組 村上由和)
【2024年10月1日放送】
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