生き上手死に上手

2023年05月10日 09時19分04秒 | 社会・文化・政治・経済

 

生き上手 死に上手 (文春文庫)

 

遠藤 周作 (著)

死ぬ時は死ぬがよし……だれもがこんな境地で死を迎えたい。でも死はひたすら恐い。

だからこそ死に稽古が必要になる。周作先生が自らの失敗談を交えて贈る人生セミナー。(矢代静一)

遠藤 周作

(1923-1996)東京生れ。

幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。

一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。1996年、病没。

遠藤 周作は日常生活の中で、ふとあることに気が付いた。

まるで「世紀の大発見」のような気がして日記にそっと書きつけた。

それは―どんな人も、自分の人生では主役であるが、他者の人生にとって脇役である―ということだった。

この<大発見>以来、周囲への不平がこぼれそうな時も「この人のワキヤク、ワキヤク」とつぶやくようになった。

すると、自らの振る舞いも自然と定まるようになっいたという。

脇役は「主役のそばにいて、主役のためにいる」存在である。

つまり、人はどこまでも主役に光を当てる使命があるということだ。

自分中心の狭い世界を破り、他者のために心を尽くし、動くことで、みずからの人生も境涯も大きく広がっていく。

「自他」と「自利」は一体なのだ。

「名脇役」として、目の前の人に心を尽くす。

その時、自分が「主役」である自分自身の人生のあらたな勝利の劇も幕を開けるだろう。

 
基督者で作家の遠藤周作のエッセイ集。1979年から85年にかけて、新聞・雑誌・文学誌・専門誌に寄せた47編が5つに分類されて整理・転載されている。
人としての心の在り方や生き方について、自身の洞察や体験を踏まえての思索を、気負わず衒わず率直に綴っている。テーマはどれも重い。
著者はあとがきで「読者も寝っ転がって、気楽な気持ちで読んで下さい」と言っているが、とてもそうはいかない。
ソフトな語り口なので、スーと読み進んでしまうが、名言や金言に値する意味深い語句や文章が点在している。
 
 
「死ぬ時は死ぬがよし」そのような大きなものにすべてを委せる気持ちになりたいと思って三十年。正直いうとこのようなゆったりとした心にはなかなかなれない。
しかしそれは私にとって目標である。何故目標かというと、そこには天の理、自然の動きに無意味に逆らわず、まるで年おいた樹木が寿命を受け入れるように受け入れる姿勢があるからだ。おそらく、私もいつか、最後の最後までジタバタして、最後の一日ぐらいで「死ぬ時は死ぬがよし」という気持ちになるだろう。
拝読していて、とてもほっとする本でした。
よりよく生き、よりよく死ぬために。何度も読み返したくなる作品です。素敵なエッセイ集に出逢えて良かったです。ありがとうございます。
 
 
延命治療のおかげで人は寿命以上に人工的に生きてる、又現代医学は
患者心理を軽視してる、患者は医学について素人、素人でもわかるように
病気について、薬について説明してほしいと願っている、同感である、
親切に説明してくれる医師を良医と思うし、信頼できることは確かである。
医療に言及した内容が随所にあるが闘病生活が長かった筆者ならではの
印象深いエッセイである。
 
延命治療のおかげで人は寿命以上に人工的に生きてる、又現代医学は
患者心理を軽視してる、患者は医学について素人、素人でもわかるように
病気について、薬について説明してほしいと願っている、同感である、
親切に説明してくれる医師を良医と思うし、信頼できることは確かである。
医療に言及した内容が随所にあるが闘病生活が長かった筆者ならではの
印象深いエッセイである。
「家族が茶の間に集って、その中で、父親が息子や娘に自分の人生経験をふくめてポツリポツリ無駄話をする。」
「読者も寝転がって気楽な気持ちで読んで下さい。」
とあとがきにあるが、
何の何の。
実に骨のあるエッセイ集である。
寝転がっては読めない作品なのだ。

老い、医療、医療者と患者、呼吸法、気、死に稽古、死に上手。
今世間で大きな話題になっているホメオパシーにも触れている。
もちろん、遠藤氏は肯定的だ。
荒唐無稽だ、などとは決して言わない(笑)。
さてと、もう一回読み直そうか・・・(笑)。
 
 
 
この本は、遠藤周作氏の人生観、死生観、ユーモアのセンスが一冊の中に凝縮されている秀逸のエッセイ集です。
初めて読んだときは40歳前で、わかったような気がしていましたが、10年以上のときを経て読み返してみて、あのときわかったつもりでいたことがようやく「腑に落ちた」感慨を覚えました。
死生観に関する章は、不治の病に陥った場合、その気持ちに寄り添ってくれるものと思います。自分が死に近いと思ったときに傍に置いておきたい一冊です。
本の裏表紙のところに紹介されている「文春文庫(が出版している) 遠藤周作の本」は、2007年に購入した版では17冊紹介されていたのに、今回購入してみて2冊になってしまっていることを知り、驚きました。
このエッセイ集が絶版にならないように願っています。

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