インターネット文明

2025年01月11日 13時24分07秒 | 社会・文化・政治・経済
 
もはや日々の生活のインフラと化したインターネットという科学技術なしに、私たちは生きていくことすらできない。全世界で利用者が50億人を超えたいま、インターネットは、趣味や仕事から医療や安全保障までを包摂するひとつの「文明」と化した。そこにはどのような人類史的な課題や使命があるのか。第一人者が語る。

目 次

プロローグ インターネット史に刻まれたふたつの大事件

第1章 インターネット文明とは何か

第2章 テクノロジーと共に生きる
 1 AIとインターネット
 2 IoTとインターネット
 3 5Gとインターネット

第3章 日常生活に不可欠となったインターネット
 1 インターネットにおける文化の多様性
 2 インターネットがビッグテックを生んだ理由
 3 オンライン課金の仕組みと暗号セキュリティ
 4 メディカルインクルージョンの実現に向けて

第4章 インターネット文明の政策課題
 1 プライバシー保護と監視社会
 2 インターネット規制と国際協調
 3 言語と出版文化
 4 サイバーセキュリティの三つの空間
 5 デジタル庁の発足と日本のDX

第5章 国際政治におけるインターネット
 1 インターネットと地理学
 2 インターネットと地政学
 3 米中摩擦とインターネットの未来

第6章 インターネット文明で果たすべき日本の役割
 1 日本の技術開発の底力を見せるとき
 2 インターネットの公共性と持続可能性

エピローグ インターネット文明の未来
 
あとがき

著者について

村井 純(むらい・じゅん)
1955年生まれ
1979年慶應義塾大学工学部数理工学科卒業,1984年同大学院工学研究科博士後期課程修了.工学博士.1984年東京工業大学,慶應義塾大学,東京大学を結ぶ日本初の大学間コンピュータネットワーク「JUNET」を設立
現在―慶應義塾大学教授,「WIDEプロジェクト」ファウンダー
著書―『インターネット』(岩波新書,1995年)
   『インターネットII――次世代への扉』(岩波新書,1998年)
   『インターネット新世代』(岩波新書,2010年)
共著―『角川インターネット講座』第1巻「インターネットの基礎」(KADOKAWA,2014年)
   『DX時代に考える シン・インターネット』(インターナショナル新書,2021年)
 

 1 人類がふたたび月面に立つ
 2 より良いインターネットを維持するために
 
 
「日本のインターネットー元年」とされる1995年から今年で30年になる。
「インターネットは<酸素>と同じ」ということを世界中が深く知ることになって出来事の一つが、新型コロナのパンデミックだったと解説する著者。
 
パンデミックは、地球規模で経済活動にダメージをもたらした。
「人とモノの流れ」が滞ったが「情報の流れ」は止まることはなかった。
 
自宅から出られなくなると、仕事、教育、買い物、各国の感染状況の確認もインターネットが頼りになった。
ワクチンは各国の研究機関がネットでつながっていたためにスピード開発ができた。
 
インターネットの未来は、人の健康、地球環境、経済発展に貢献するためには、グローバルな視点で取り組むべきだ。
一方「乱用・悪用」対策の重要性も指摘している。
 
ネット間には国境はない。
それが分断の危機にさらされてもいるとし、いま「生命と地球のために」という視点が大切だと訴えていう。
 
 
情報技術の進歩は驚くことばかりだ。別の図書の情報だが、2001年に世界最速だったスーパーコンピューターよりも2021年のスマホのほうが、処理速度が速くなっているという。
本書はインターネットの父と呼ばれた著者が、インターネットが数十年の間にどのように進化してきたかを語っており、これからの情報社会がどうなっていくのかを考える上で、押さえておかなければならないことを教えてくれている。
黎明期、自動車にパソコン機能をと考えて自動車メーカーに掛け合っても、歯牙にもかからなかったとか、Wi-Fiの周波数が電子レンジと干渉するとか、高周波の電波は雨に弱いが、赤道直下では静止衛星が赤道上を通るため、垂直にアンテナを向けることになり、雨の影響を受けにくかったなど、一般人があまり知らないでいることも、多く紹介されていて、非常に興味深い。
著者のご尊父は村井実先生という教育哲学の泰斗であられる。「すべての人間は善く生きようとしている」という基本理念のもとに多くの論を著された。
本著者も「すべての人にインターネットを」という基本哲学に則って長年、研究と社会貢献をしてこられた。その骨子となるお話の数々が、多くの短い文章のなかに詰まっている新書らしい新書だと思った。

 

『インターネット文明』という題に惹かれて、予約してしまった。
届いてみると、普通の本(?)だったので、ちょっと安心した一方、すぐに読もうという意欲をなくした。それで、ほかの本を読むスキマ時間にぽつぽつと読んだ。
器械等のしくみが苦手なので、第2章テクノロジーと共に生きるはちょっと難しく時間がかかったが、第3章日常生活に不可欠になったインターネットはすくすくと読め、第4章インターネット文明の政策課題は中間ぐらい、第5章以後はまたちょっと難しくなったが、あとは勢いで読めた。
ついでに、著者が29年前に書かれた岩波新書『インターネット』を読んでみた。とても懐かしい内容で、ノスタルジアの世界に入ってしまい、こちらのほうが楽しかった(困ったこと)。それはともかく、著者が29年前に未来予想的に書かれていたことのあれこれが、今日実現してしまっているのが面白いような、怖いような・・・。
 
 
著者の村井純氏(慶應義塾大学教授)は、50年前から日本のインターネット構築に際して、技術面・システム面・国際面で中心になって進められた方だ。その体験をもとにして、人類はいまインターネット「文明」と特徴付けられる時代に入っていること、そしてその将来がどんなものになるか、を論じた本。

技術的な側面をきちんと踏まえて論じて文明論を展開しているので、類書のないすばらしい本だと感じた。とくに第3章以降、どんどん引きこまれる話となっている。

ただ、第1章および第2章(合計70ページ)はインターネット初期の話であるうえ、技術的なことが中心(しかも関連図表も皆無)なので、評者は我慢して読んだ。

また「アマゾンで買い物をして、クレジットカードで決済しても(中略)カード情報が盗まれる心配はありません」(116ページ)、「メールの内容が第三者に漏れないのは、クレジットカード情報を安心して送れるのと同じ暗号技術をつかっているからです」(117ページ)などとしているが、我々は懸念を持ちながらもそのような利用をしているのではないか? 
また、例えば評者の場合、毎日100通近い「迷惑メール」が着信するがそれとどのような関係があるのか(あるいはないのか)、などが知りたかった。そのあたりも論じてほしかった。

だから、第1章および第2章はスキップして第3章以降だけ読んだほうがよいだろう。また凡人がいだく上記のような現実的な問題も平易に説明してほしかった。このため5つ星にせず4つ星と評価した。
 

 


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