みつとみ俊郎のダイアリー

音楽家みつとみ俊郎の日記です。伊豆高原の自宅で、脳出血で半身麻痺の妻の介護をしながら暮らしています。

ヴァージニア工科大学の乱射事件とAくん

2007-04-19 01:14:08 | Weblog
このアメリカ史上最悪の銃乱射事件の内容を知れば知るほど、私のアメリカ留学時代のことがオーバーラップしてくる。
私は、イリノイ、ミシガン、アイオワと3つの州に住んでいたことがあるのだが、最後の場所、アイオワ州では、その街の日本人会の会長をしていた(どういうわけか)。で、その街の大学(かなり大きな大学だ)に留学していた一人の留学生と今回の銃乱射事件の犯人の韓国人(というか、永住権を持ったアメリカ人学生なのだが)が重なって見えてしょうがない。
この日本人学生Aくんは、この街の問題児だった。今回の韓国人と同様、他の人たちと混じりあって交流することはまったくない孤立した人だった。このAくんが、問題児扱いされたのは、あるアメリカ人女性からのクレームからだった。彼女いわく、「Aさんが、毎日私のアパートのドアの前に立っていて、じっとしている。気味が悪いが、別に部屋に入ってくるわけでもなく、実際に危害を加えるわけでもないので、警察に被害届けもだせない。日本人のコミュニティの中で何とか処理してもらえないんだろうか?」ということなので、日本人会の会長としては、何らかの行動をおこさざるを得ない。ということで、早速そのAくんに会うのだが、彼は、「自分は何にもしていないし、別に誰に迷惑をかけているわけでもない」という主張をくり返すばかりで、自分がストーカー行為をしているという意識はまったくない。実際、誰かに危害を加えたわけではないし重大な問題をおこしているわけではないので、警察もAくんをつかまえるわけにもいかない。
ただ、彼に対するクレームは至るところで起こっていた。どうしたものかと思案している最中に、そのAくんがとうとう問題を起こしてしまう。彼が住んでいた寮の自分の部屋で放火騒ぎを起こしてしまうのだ(その前に、トイレ立てこもり事件なども頻繁におこしていたのだが)。この辺も今回の韓国人学生とまったく同じ。ストーカー騒ぎから、放火にまで至るとさすがの警察も乗り出してくる。Aくんは、とうとう留置場に入れられてしまう。そこで、私は早速面会に行くハメに(日本人会の会長なので、ある意味、それは義務だったわけだ)。留置場での彼の話しもまったく要領を得ない。最終的に、彼は精神病院に強制入院させられ、国外退去処分になってしまった。
このAくんの場合は、今回の銃乱射事件のような深刻な問題を起こす前に国外退去処分になってしまったからいいようなものの、もしA くんが、あのまま放置されていたら、今回のような事件を起こしていたかもしれない。
日本人や韓国人、中国人などの留学生などで外国で問題を起こす人たちは、本国でも問題をかかえていた人たちが圧倒的に多い(日本での失恋をひきずったまま、アメリカで自殺してしまった人を数人知っている)。問題は、アメリカ社会というのは、そういった社会生活上問題のある人たちも、普通の人たちの暮らしの中に同化させなければならない社会だということだ。基本的にすべての人に平等の権利と平等の義務を負わせるのがアメリカ社会。だからこそ、ある程度深刻な問題が起こることを前提に暮らしている社会でもある。そうした不安をかかえた社会だからこそ、自分の身は自分で守る、銃を持つのが当たり前という社会構造ができあがってしまうわことになる。要するに、自分以外の他人はすべて敵、という思想がアメリカ社会に存在しているということだろう。きっと、30人死のうが100人死のうがアメリカから銃を取り除くことは永遠にできないような気がする。