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みつとみ俊郎のダイアリー

音楽家みつとみ俊郎の日記です。伊豆高原の自宅で、脳出血で半身麻痺の妻の介護をしながら暮らしています。

Susan Boyleという人のYou tube画像に

2009-04-20 18:23:38 | Weblog
いろいろと考えさせられた。
「アメリカン・アイドル」というタレント・オーディション番組はずっと見ていたので、この映像がそれの英国版だということはすぐにわかったし、このスーザンおばさんの美声に感動もしたけれど、私としてはどこかシックリこないところもあった。
私がアメリカ留学時代、声楽科の友人(女性)にかなり身体の大きな人がいた(オペラをやっている人は大体において体格のいい人が多いけれど、この人の体格は群を抜いていた。つまり、かなりのおでぶさんで身長もかなりあったのだ)。彼女の歌の力量はたぶんその時の声楽科の学生の中でもナンバーワン。ダントツにうまい人だった。
ある授業(音楽科の授業ではない一般教養のような授業)に彼女がデモンストレーターとして教授から抜擢され壇上に立った時だった(アメリカの大学は音楽学部だけでなくありとあらゆる学部が一つの大学にあるのが普通)。数百人入る大きな教室の中が一瞬にザワめいた。彼女の体格を見慣れない人たちがその身体の大きさに一瞬驚きたじろいだからだ。
それぐらい彼女はインパクトの大きな女性だった。
教授に名前を呼ばれ紹介された後、彼女はおもむろにアカペラでガーシュウィンの「サマー・タイム」を歌い始めた。途端に教室中のザワメキがパタっと止まった。教室の空気が本当に一瞬でガラっと変わってしまったのだ。
先ほどまで「なんであんなデブがこの教室に来んだよ」みたいな悪口雑言を言っていた男子学生も、明らかにその体型を侮蔑的に見ていた女子大生たちも、大きな口を開け唖然とした表情で彼女の歌声に耳を奪われているのがわかった。人々の同情という差別的な感情が明らかに羨望という感情に変わった瞬間だった。
私は、今でもその時の彼女の「サマータイム」の歌声が耳から離れない。それぐらい彼女の歌声は素晴らしかった。
その彼女は卒業と同時にシカゴのオペラ・カンパニーのオーディションに受かりその後も世界中のオペラステージに立ち続けている。
今回のスーザン・ボイルというオバサンの歌声を聞いて、私にはどうしてもその出来事が思い出されて仕方がなかった。
「人間、見た目じゃないよ」というのは簡単だが、人間というのはどうしても見た目で他人を判断してしまう。うかつに人間をジャッジしてしまう。そして、その人の中身を知ってはじめて自分のその判断の愚かさに気づかされる。多分、そんなことの繰り返しなのかもしれないと思う。
このスーザン・ボイルという47歳の英国のおばさんがこれからどういう風になっていくのか(スターとして活躍するのかどうなるのか)は私にもわからない。願わくば、その声を上手に使い一人でも多くの人に感動を与え、けっして愚かな使い方だけはされないようにして欲しいと思う。