今日の「お気に入り」は、萩原朔太郎(1886-1942)の詩集「氷島」より「我れの持たざるものは一切なり」と題した詩一篇。
我れの持たざるものは一切なり
我れの持たざるものは一切なり
いかんぞ窮乏を忍ばざらんや。
独り橋を渡るも
灼きつく如く迫り
心みな非力の怒に狂はんとす。
ああ我れの持たざるものは一切なり
いかんぞ乞食の如く羞爾(しゅうじ)として
道路に落ちたるを乞ふべけんや。
捨てよ! 捨てよ!
汝の獲たるケチくさき名誉と希望と、
汝の獲たる汗くさき銭を握つて
勢ひ猛に走り行く自動車の後
枯れたる街樹の幹に叩きつけよ。
ああすべて卑穢なるもの
汝の非力なる人生を抹殺せよ。
(角川春樹事務所刊「萩原朔太郎詩集」ハルキ文庫 所収)
我れの持たざるものは一切なり
我れの持たざるものは一切なり
いかんぞ窮乏を忍ばざらんや。
独り橋を渡るも
灼きつく如く迫り
心みな非力の怒に狂はんとす。
ああ我れの持たざるものは一切なり
いかんぞ乞食の如く羞爾(しゅうじ)として
道路に落ちたるを乞ふべけんや。
捨てよ! 捨てよ!
汝の獲たるケチくさき名誉と希望と、
汝の獲たる汗くさき銭を握つて
勢ひ猛に走り行く自動車の後
枯れたる街樹の幹に叩きつけよ。
ああすべて卑穢なるもの
汝の非力なる人生を抹殺せよ。
(角川春樹事務所刊「萩原朔太郎詩集」ハルキ文庫 所収)