「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

日が暮れて鐘が鳴る 2007・07・28

2007-07-28 07:50:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」。

  鐘が鳴ろうと 日が暮れようと
     月日は流れ わたしは残る 
           アポリネール(堀口大學訳)

 以下は、Guillaume Apollinaire(1880-1918)作の Le Pont Mirabeau(ミラボオ橋)の全文(堀口大學訳)です。

 ミラボオ橋の下をセエヌ河が流れ
    われ等の恋が流れる
   わたしは思ひ出す
 悩みのあとには楽(たのし)みが来ると

    日が暮れて鐘が鳴る
    月日は流れわたしは残る

 手と手をつなぎ顔と顔を向け合(あは)う
    かうしてゐると
   われ等の腕の橋の下を
 疲れた無窮の時が流れる

    日が暮れて鐘が鳴る
    月日は流れわたしは残る

 流れる水のやうに恋もまた死んで逝く
    恋もまた死んで逝く
   生命(いのち)ばかりが長く
 希望ばかりが大きい

    日が暮れて鐘が鳴る
    月日は流れわたしは残る

 日が去り月が行き
    過ぎた時も
   昔の恋も、ふたたびは帰らない
 ミラボオ橋の下をセエヌ河が流れる

    日が暮れて鐘が鳴る
    月日は流れわたしは残る

  (堀口大學著「月下の一群」講談社文芸文庫 所収)


 
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