今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「ウソでかためた高校野球というコラムを以前私は書いたことがある。この世はウソでかためたところではあるけれど、高校野球はかためすぎである。しかも関係者はみんな大まじめで自他をあざむいている自覚がない。ほかのウソはとにかく『このウソ大きらい』と書いたゆえんである。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
「ウソでかためた高校野球というコラムを以前私は書いたことがある。この世はウソでかためたところではあるけれど、高校野球はかためすぎである。しかも関係者はみんな大まじめで自他をあざむいている自覚がない。ほかのウソはとにかく『このウソ大きらい』と書いたゆえんである。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
今日の「お気に入り」は、乙川優三郎さん(1953-)の小説の中から。
「絵を描くのに適当な齢というものはない。必要なのは情熱だ。」
「心の弾む日は弾むように描く。」
「憂鬱な日は、憂鬱を描けばいい。」
「描きすぎないことで表現が広がり、描こうとする本来の情景が見えてくるのではないか。すべてを描きながら何も見えなくなることもあれば、空間があるために見えてくるものもある。」
(乙川優三郎著「冬の標」文春文庫所収)
「絵を描くのに適当な齢というものはない。必要なのは情熱だ。」
「心の弾む日は弾むように描く。」
「憂鬱な日は、憂鬱を描けばいい。」
「描きすぎないことで表現が広がり、描こうとする本来の情景が見えてくるのではないか。すべてを描きながら何も見えなくなることもあれば、空間があるために見えてくるものもある。」
(乙川優三郎著「冬の標」文春文庫所収)
今日の「お気に入り」は、乙川優三郎さん(1953-)の小説の中から。
「平穏を退屈と思うな、無事ほど得難いものはない。」
「繊細な心と情熱があれば、人は丁寧に生きてゆくはずである。」
(乙川優三郎著「冬の標」文春文庫所収)
「平穏を退屈と思うな、無事ほど得難いものはない。」
「繊細な心と情熱があれば、人は丁寧に生きてゆくはずである。」
(乙川優三郎著「冬の標」文春文庫所収)
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「林真理子は自分が田舎者であること、英語ができないこと、太っていること、文化人にあこがれていること、そして何より不器量であること、つまりたいていの女がそうであってかくしていることをみんな自分のことにして言いふらして人気者になった。なったら女は嫉妬深いからじきあきられるよと憎さげに言うのである。けれども女ばかりが読者ではない。それに彼女のテーマは不朽である。何より彼女は聡明である。よく動く才筆の持主である。
彼女の小説はまだ読む機会がないが、これだけの才媛だものがらりと一変したものを見せてくれるだろう。私が新人の発見を怠っているうちに、彼女はあらわれて急成長してしまった。遅ればせではあるけれど、それと知って私は欣快にたえない。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
「林真理子は自分が田舎者であること、英語ができないこと、太っていること、文化人にあこがれていること、そして何より不器量であること、つまりたいていの女がそうであってかくしていることをみんな自分のことにして言いふらして人気者になった。なったら女は嫉妬深いからじきあきられるよと憎さげに言うのである。けれども女ばかりが読者ではない。それに彼女のテーマは不朽である。何より彼女は聡明である。よく動く才筆の持主である。
彼女の小説はまだ読む機会がないが、これだけの才媛だものがらりと一変したものを見せてくれるだろう。私が新人の発見を怠っているうちに、彼女はあらわれて急成長してしまった。遅ればせではあるけれど、それと知って私は欣快にたえない。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「林真理子嬢ははじめコピーライターだったそうで、『いつまでも世間知らず』『スキャンダル大好き』『早くなりたや文化人』などというタイトルにはその名残がある。彼女は有名になりたくてなったという、それはテレビに出たおかげで、出たら芸人になったような気分がしたという。
あこがれのタレントが自分より背が低いのにはじめ驚き、次いでテレビは真を伝えそうでいて伝えないと知ったという。私(林)はその犠牲者で誤って『チビのブス』と見られている。
――(いま)私って、なんだか大胆なことを口走ったみたい。けれども私を肉眼で見た人が、『あら、背が高くて素敵じゃない』っていうのは本当よ。本当だから。
――私は世間知らずだ。けれどもこの世の中には、知らなければならないことが充満している。それにいちいちかかわり合っていたら、遊ぶ時間も恋(!)をする時間もなくなる。だから私は『無知』とか『物しらずのクセして文章なんか書いて』などという陰口にもめげず書いていたの。そしたら知らぬまに『林真理子流、ブスでも結婚できる』。
忙しさのあまり電車に乗ることもなく、なんだかうきうきと『世間知らず』をしていた間に、これほど大きく『ブス』と電車の中吊りに書かれて、世間の物笑いになっていたのね。くやしい。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
「林真理子嬢ははじめコピーライターだったそうで、『いつまでも世間知らず』『スキャンダル大好き』『早くなりたや文化人』などというタイトルにはその名残がある。彼女は有名になりたくてなったという、それはテレビに出たおかげで、出たら芸人になったような気分がしたという。
あこがれのタレントが自分より背が低いのにはじめ驚き、次いでテレビは真を伝えそうでいて伝えないと知ったという。私(林)はその犠牲者で誤って『チビのブス』と見られている。
――(いま)私って、なんだか大胆なことを口走ったみたい。けれども私を肉眼で見た人が、『あら、背が高くて素敵じゃない』っていうのは本当よ。本当だから。
――私は世間知らずだ。けれどもこの世の中には、知らなければならないことが充満している。それにいちいちかかわり合っていたら、遊ぶ時間も恋(!)をする時間もなくなる。だから私は『無知』とか『物しらずのクセして文章なんか書いて』などという陰口にもめげず書いていたの。そしたら知らぬまに『林真理子流、ブスでも結婚できる』。
忙しさのあまり電車に乗ることもなく、なんだかうきうきと『世間知らず』をしていた間に、これほど大きく『ブス』と電車の中吊りに書かれて、世間の物笑いになっていたのね。くやしい。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「かいつまんで言う、手短に言う、ほとんど最短距離で言うことに熱中して何のトクがあるかというとあるのです。読者はずいぶんこみいった話が、こんなにすらすら分るのだからと一種の快感をおぼえます。ひそかに自分の頭はいいと思っていたが、案の定よかったと安心します。分ったのではない、分らせたのだからそれは書いたほうの手がらで読んだほうの手がらではないのですが、そう言うとカドがたちますから言いません。読者の頭がよくなるにまかせます。これを花を持たせると言います。花を持たせて二十なん年になります。
コラムの極はついにひとことで言うことで、そんなことが出来るかというと出来るのです。ためしに言ってみましょう。
『春秋に義戦なし』
『春秋に義戦なし』
念のために繰返しましたが口で言ってひとこと、字で書いて十字に足りません。これだけで分るひとには分ります。なぜ分るかというと分ろうと思って待ちかまえているからで、待ちかまえていない人には千万言を費しても分りません。故に費しません。費す人もありますがそれは別派です。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
「かいつまんで言う、手短に言う、ほとんど最短距離で言うことに熱中して何のトクがあるかというとあるのです。読者はずいぶんこみいった話が、こんなにすらすら分るのだからと一種の快感をおぼえます。ひそかに自分の頭はいいと思っていたが、案の定よかったと安心します。分ったのではない、分らせたのだからそれは書いたほうの手がらで読んだほうの手がらではないのですが、そう言うとカドがたちますから言いません。読者の頭がよくなるにまかせます。これを花を持たせると言います。花を持たせて二十なん年になります。
コラムの極はついにひとことで言うことで、そんなことが出来るかというと出来るのです。ためしに言ってみましょう。
『春秋に義戦なし』
『春秋に義戦なし』
念のために繰返しましたが口で言ってひとこと、字で書いて十字に足りません。これだけで分るひとには分ります。なぜ分るかというと分ろうと思って待ちかまえているからで、待ちかまえていない人には千万言を費しても分りません。故に費しません。費す人もありますがそれは別派です。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「世はいかさまというのはこの世はいかさまから成っているということで、商才とか企画とか言えば聞えはいいが、なにいかさまのことである。いかさまの才がなければ社員は出世できないし、またその社はつぶれる。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)
「世はいかさまというのはこの世はいかさまから成っているということで、商才とか企画とか言えば聞えはいいが、なにいかさまのことである。いかさまの才がなければ社員は出世できないし、またその社はつぶれる。」
(山本夏彦著「生きている人と死んだ人」文春文庫所収)