彼岸の入りにお墓参りに行った時、
お寺の入り口に、見たこともない立札が立っていました。
「山門不幸」と書かれていました。
初めて聞く言葉です。
「不幸」の文字が入っているのだから、
何か良くないことが起きたんだろうとは思いました。
その場で、携帯で調べてみると
「寺の住職、または寺族が亡くなったことを表す。」
と書かれていました。
でも、ピンとこなかった。
このお寺に亡くなるような年齢の方はいらっしゃらないはず…。
本堂に入る玄関のところで、
ご住職の奥様が檀家さんと話している声が聞こえてきました。
「急なことで、救急車を呼んでも間に合わなかったのよ。」
そして、ご住職が今年の初めに亡くなられたことを知りました。
とてもスリムで、お若く見えるご住職だったので、
自分とあまり年が変わらないと思い込んでいましたが・・・。
29年前の祖母の葬儀の時に、
たしか42歳とおっしゃっていた気がします。
ということは、もう70歳を超えていらしたんですね。
29年前、火葬場でご住職にお昼ご飯をお出ししようとしたら、
「今、パソコンに檀家さんの名簿を入力している最中で、
すぐに続きをやりたいんで、もらって帰っていいですか?
うちの子供が育ち盛りで、このくらいおやつに食べちゃうんで。」
と、おっしゃって、お弁当を抱えて帰って行かれました。
今なら、檀家さんの管理にパソコンを使うことは珍しくないのでしょうが、
当時は、家庭にパソコンなどなかった時代ですから、
「えっ、お坊さんがパソコン?」
と、親戚のおばさんたちは目を丸くしていました。
あの時、お弁当をおやつに食べていた男の子は、
今や、立派なお坊さんになられて、
「こんにちは。ご苦労様です。」とご挨拶してくださいました。
ここのところ、人の死を数か月後に知るということが続き、
悲しい気持ちになっておりましたが、
このお父様よりも通る大きな声を聞いて、
少しホッとした気持ちになりました。