2011年 大阪松竹座 壽初春大歌舞伎 昼の部
『玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)』『男の花道(おとこのはなみち)』
一月十七日、ひとり観劇。一月十三日に家族と見た夜の部に続き、今回は昼の部。
『吉田屋』の余韻がまだ消え去らぬ内の観劇だった。
まずは『玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)』
翫雀さんと染五郎さんが熱演。そして 橘三郎丈が二人を引き締めていた。
橘三郎丈のいつもの女形とはまた違った味が、印象深く、今も口調は心に残る。
好きな三人がトライアングルで歌舞伎らしさで楽しませてくれた。
うん、おもしろかった。
翫雀さんも染五郎さんもあっぱれじゃ。しっかりと歌舞伎に仕上がっていた。
よかったよかった きゃははは は
待ってました、御両人
藤十郎丈と幸四郎丈の『男の花道(おとこのはなみち)』、これ見たさに昼の部を見る。
感動した、そして おおいに 泣いた。なじみの芝居で思い通りに事は運ぶが、涙が筋となって溢れ出た。
藤十郎丈と幸四郎丈のクレッシェンドとデクレッシェンドと特徴的な間の撮り方が、芝居の広がりに奥行きをのせる。
昆布だしとカツオだしが効いた旨味のある煮物のようだ。
ただ、惜しい点がふたつ。役者さんたちには関係ない部分であった。
一点は舞台大道具のつなぎの間がのびていた。
二点目は芝居『男の花道』の芝居の性格からして当然だが、歌舞伎らしさが薄い。流される音楽が小芝居・大衆芝居のような気分にさせる。これはつらい。大音量のスピーカーから流れる品の感じられない音。これは、歌舞伎を見に行ったという満足感が失せるような気がして、口惜しい。役者の演技は良い。スピーカー音楽をオペラやバレーのように演奏を生にするとか、或は いつものように三味線や鼓などで工夫するとか、何とかならないのだろうか…。わたしは小芝居・大衆芝居は(芝居が上手い劇団であるならば)一概に嫌いではない。しかし、『男の花道』を見て、そんなようなことを感じた。
繰り返すが、役者は良かった。好きな役者さんばかりだった。
辛口、御免!
そんなこんなで、なかなか感想を書く気になれずにいた。
ああ!『吉田屋』をもう一回みたいなぁ!!!
帰り,ロビーには藤間紀子さんがいらっしゃった。
いつもながら、美しい。
女性の鏡のように品の良い藤間紀子さんは、わたしのあこがれの女性だ。
昼の部
一、玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)
俳諧師の其角(きかく)の家に、赤穂浪士の一人、大高源吾が仕官が決まった暇乞いに訪れます。其角が詠んだ「年の瀬や水の流れも人の身も」という上の句に対し、源吾は「あした待たるるその宝舟」と附け句をして帰って行きます。
その夜、吉良邸の隣、土屋主税の屋敷で行われた句会で其角から昼間の一件を聞いた赤穂贔屓の主税は、源吾が詠んだ下の句の意味を探ろうと思案するうちに、その真意を察します。やがて隣家の吉良邸から太刀音が鳴りわたるのを聞いた主税は、喜び勇んで要所に高張提灯を灯し、赤穂浪士へせめてもの力添えをするのでした。
「玩辞楼十二曲」の一つで、吉良上野介の隣家に住む旗本・土屋主税の屋敷が舞台となる忠臣蔵の外伝物です。翫雀が勤める土屋主税の、内心で討入りを待ち望む心情表現が見どころです。
二、男の花道(おとこのはなみち)
歌舞伎の女方、加賀屋歌右衛門は、失明寸前のところを旅の宿で出会った蘭方医の土生玄碩(はぶげんせき)の手術によって救われます。固い友情で結ばれた二人は、刎頸(ふんけい)の交わりを確かめ合い、後の再会を誓って別れます。
数年後、当代一の人気役者となった歌右衛門の元に、やむを得ぬ事情から、今すぐ歌右衛門に来て欲しいと苦境を知らせる玄碩からの手紙が届きます。折しも今は舞台の最中。役者にとって何よりも大事な舞台と、大恩人の狭間で悩む歌右衛門。決断を迫られた歌右衛門が取った行動とは・・・。
映画で評判を取り、昭和三十七年に初めて舞台化された作品です。江戸時代の人気女方歌右衛門と、将軍の侍医にもなった名医土生玄碩はともに実在の人物で、二人の男の友情を描いた心温まる名作です。
藤十郎が当たり役の歌右衛門、幸四郎が初役となる土生玄碩という話題の配役にご期待下さい。
昼の部
一、玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)
第一場 向島晋其角寓居の場
第二場 土屋邸奥座敷の場
土屋主税 翫 雀
大高源吾 染五郎
晋其角 橘三郎
落合其月 薪 車
侍女お園 扇 雀
二、男の花道(おとこのはなみち)
第一幕第一場 東海道金谷宿なる旅籠松屋の店先
第二場 同 裏の部屋
第三場 同 奥の離れ
第四場 同 奥の離れ
第五場 元の松屋の店先
第二幕第一場 茶屋むさし屋の二階座敷
第二場 山谷堀の料亭万八の離れ
第三場 中村座の舞台
第四場 元の万八の離れ
加賀屋歌右衛門 藤十郎
万八女将お時 秀太郎
加賀屋歌之助 染五郎
加賀屋歌五郎 錦 吾
田辺妻富枝 吉 弥
加賀屋東蔵 竹三郎
田辺嘉右衛門 翫 雀
土生玄碩 幸四郎