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「蟲麻呂が初のお目見えまず長歌お手並み拝見どんな人かな
(四年壬申ミヅノエサル、藤原宇合の卿の西海道ニシノウミツジの節度使に
遣はさるる時、高橋連蟲麻呂がよめる歌一首、また、短歌)」
「1.白雲の 龍田の山の 露霜に 色づく時に 旅行く君は()」
「2.幾重にも重なる山を越え行きて 最前線の 筑紫に至る()」
「3.山の果て 野の果て見んと 伴の部ベを あちこちやりて 国見をしたり()」
「4.山彦の 答へむ極み ひきがえる さ渡る極みを 知らんとしたり()」
「5.冬籠り 春さりゆかば 飛ぶ鳥が 還り来るよに あなたも帰れ()」
「6.龍田道に 花咲く時に 山釿タヅの 迎へ参ゐ出む 君が来まさば()」
「白雲の 龍田の山の 露霜に 色づく時に 打ち越えて 旅行く君は 五百重山
い行きさくみ 賊アタ守る 筑紫に至り 山の極ソキ 野の極見メせと 伴の部ベを
班アガち遣はし 山彦の 答へむ極み 蟾蜍タニグクの さ渡る極み 国形を
見メしたまひて 冬籠り 春さりゆかば 飛ぶ鳥の 早還り来ね 龍田道の 岡辺の道に
紅躑躅ニツツジの にほはむ時の 桜花 咲きなむ時に 山釿タヅの 迎へ参ゐ出む
君が来まさば(#6.0971)」
「千万チヨロヅの軍イクサなりとも言挙げせず討トりて来キぬべき男ヲトコとぞ思モふ
(反し歌一首#6.0972)」
「敵軍がいっぱいいても言挙げをせずに勝ちたる人材と見る()」
「宇合の面影伝うこの歌は戦上手の策士がうかぶ()」