はぐくみ幸房@山いこら♪

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架線集材 エンドレスタイラー ②

2015年07月15日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 この記事では、架線集材の仕組みについて、簡単に説明していますが、新たに書き直しましたので、こちらをご覧ください→ 架線集材 エンドレスタイラー 仕組み

 もちろん、このままお読みいただいても、結構です。

 よろしくお願いいたします。

 

 

【①のつづき】

  架線集材という技術は、林業の中でも上位クラスの技術だと思います。

 近年は、プロセッサ、タワーヤーダ、スイングヤーダなど高性能林業機械を使って、木材を搬出する方法が主流となっています。

 これら機械を導入したことによって、木材の生産性は向上しましたが、機械が走れる道が山にないといけません。

 和歌山県のように山が険しいところだと、高性能林業機械を使える場所が限られてしまいます。

 そこで、架線集材の技術が必要になってくる・・。というわけです。

 

 もっとも一般的な架線集材は、「エンドレスタイラー」というやり方。

 簡単に言うと、集材機で張り巡らせたワーヤーロープを循環的に回しながら、木材を集める方法です。

 Kasensyuzai05(←集材機)

 

 図にするとこんな感じ。

 Kasen_zu01


 

 でわ、それぞれの役割を。

 Kasen_zu02

 まず、木材を搬出するための搬器を乗せる「主索」。

 主索は、両端とも木に固定しているので、集材機と直接は繋がっていません。

 

 次に、搬器を動かす「エンドレスライン」。

 Kasen_zu03

 エンドレスラインは、集材機にあるエンドレスライン用のドラム(糸巻きみたいな物)を操作して、搬出したい木材の場所まで、搬器を送ります。

 搬器は主索に乗っているだけですので、エンドレスラインの操作1つで、搬器を奥に送ったり、手前に引き戻したりすることができます。

 エンドレスラインを単純に考えると・・・

 Kasen_zu06(←ちいさい円は集材機のドラム。)

 このように集材機の中を通って、グルグルと循環しています。

 つまり、集材機のドラムを左回転すると奥に、右回転にすると手前に搬器が動く・・という感じです(左回転が奥に動く・・・という表現は例えです。その通り動くという意味ではないです。)。

 

 ただし、搬器を木の真下に動かしてきても、搬器そのものは、空高くぶら下がっています。

 そこで、木を吊り上げる・吊り下げるための「リフティングライン」を設けます。

 リフティングラインは、片方は集材機と繋がっており、もう片方は木に固定されています。

 Kasen_zu04 Kasensyuzai06

 そして、集材機のドラムを回して、リフティングラインが張ったり、緩めたりすることで、木を吊り上げたり、下ろしたりすることができます。

 簡単に言うと、固定したロープを引っ張るとピンっと張り、緩めるとロープは垂れ下がる、それと同じ理屈です。

 リフティングラインを緩めると、ワイヤーロープが木の下まで降りる。

 リフティングラインを張ると、ワイヤーロープが木を吊り上げる。

 みたいな

  

 これに、もう1つ重要なものが「ロージングブロック」です。

 Kasensyuzai07

 このロージングブロックにリフティングラインを通します。

 加えて、このロージングブロックを狙ったところに下ろすための重りをつけます。

 上の写真は、専用に作った鉄製の物ですが、木の丸太を利用する人もいます。

 Kasensyuzai09(←ロージングブロックに木をつけている。)

 

 しかし、搬器やロージングブロックは、あくまで主索の線上でしか、木材を搬出することができません。

 

 

 主索の真下から離れたところの木を搬出するために、「ホールバックライン」というものを設けます。(アウトラインとかアウト線とも言います。)

 ホールバックラインは、ロージングブロックの重りに固定し、集材機のドラムと繋がっています。

 集材機のドラムを回して、ホールバックラインを引いたり、緩めたりすることで、ロージングブロックを動かすことができます。

 Kasen_zu05


 

 

 まとめです。

 ①搬器を乗せる主索。

 ②搬器を動かすエンドレスライン。

 ③ロージングブロックを下ろしたり、上げたりするリフティングライン。

 ④ロージングブロックを主索の真下から離れたところに移動させるホールバックライン。

 

 で、こうなります。

Kasen_zu01_2

 集材機が関係するのは、②~④の操作ですね。

 

 その集材機を正面から見てみましょう。

 Kasensyuzai08

 3つのドラムがあります。

 それぞれのドラムを操作することで、搬器等を動かすことができます。

 要は、ワイヤーロープを緩める・張るという動きが、吊り下げる・吊り上げるという働きになると考えてください。

 

 Kasensyuzai04
 実は、この架線集材ができる職人・技術者が減少しています。

 

 後継者がいないんです。

 

 特に、距離が1,000mを超える架線の設置ができる技術者は限られています。

 

 主に高知県で行われている「H型架線」という架線集材が注目を浴び、再び、架線集材が重要視されるようになりました。

 これを機会に、架線集材技術の後継者を育てつつ、集材機の改良も求められています。

 もしここで、架線集材の技術が途絶えたら、再び、その技術を取り戻すことは、本当に大変です。

 特に、今ある技術は先人たちの知恵や経験、そして、犠牲の上に積み上がってきたものです。

 先人たちの犠牲があったからこそ、何が危険なのか、今を働く人たちに伝わっているんです。

 この技術が途絶えたら、先人たちの犠牲が無駄になってしまいます。

 これは、大変無礼なことだと、個人的には思っています。

 誰かが犠牲になったからこそ、二の舞にならないよう、みんなが気をつけるようになったわけです。

 「こういう事故が多いから、気を付けよう。」

 「これは絶対にしてはいけない。」

 「ここには絶対に入ってはいけない。」

 誰かの犠牲が、今、技術として生きているわけです。

 

※本記事は、以前に掲載したものを修正し、改めて掲載したものです。

コメント (1)
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