山を見ていると、ポツポツと枯れ木を見かけます。
このような枯れ木に近づいて、幹に直径2ミリほどの小さな孔から、きな粉の様な木くずが、
見つかったら、それは「ナラ枯れ」です。
ナラ枯れの被害を受けるのは、ブナ科の樹木、つまり「ドングリの木」なので、ナラ枯れの正式名称は「ブナ科樹木萎凋病」と言います。
そして、ナラ枯れの原因になるのは、「カシノナガキクイムシ」と言う非常に小さな昆虫です。
拡大すると、こんな感じの昆虫です。
幹の中に侵入したカシノナガキクイムシは、エサとなる酵母菌を増やします。
メスの体に「菌のう」という菌を保有する器官があり、菌を繁殖できるのはメスなので、メスが侵入しない限り、ナラ枯れは発生しません。
オスがメスを呼び込み、カップル成立!になると、夫婦共同作業で幹の中に孔道を掘り進み、幼虫を育てます。
カシノナガキクイムシの体長は5ミリ程度なので、こんな小さな虫が、1匹、2匹、幹に侵入したくらいで、木は枯れたりしません。
カシノナガキクイムシの恐ろしいところは「繁殖力」と「数」です。
1カップルで100匹以上の幼虫を育て、環境が良ければ500匹以上もの幼虫を育てることもあります。
地域差はありますが、5~6月頃、カシノナガキクイムシのオスが飛び立ち、集合フェロモンを出します。
この集合フェロモンは、オスもメスも呼び集めます。
7~8月あたりが、もっともカシノナガキクイムシの数が多くなる時期です。
こうして、多くのカシノナガキクイムシが、幹の中に侵入し、孔道を掘り進みます。
カシノナガキクイムシのメスが持ち込んだ酵母菌類が、幹の中で繁殖します。
これに対し、樹木の防御機能が働き、水を運ぶ導管を自ら塞ぎます(チロース)。
侵入したカシノナガキクイムシの数が多いほど、多くの導管を塞いでしまうため、水分を吸収できず、木が衰弱します。
特にコナラやミズナラといった環孔材(導管が環状に配置される木材のこと)は、水分を運ぶ機能が高い年輪の最も外側の導管が、カシノナガキクイムシによって被害を受けやすいので、枯れるリスクも非常に高いです。
9月、10月になるとカシノナガキクイムシの活動もだんだん鈍くなり、侵入した幹の中で、越冬します。
そして、翌年の5~6月に、新しい成虫が飛び出し、次の樹木へと侵入します。
ナラ枯れは、発生から5~6年後、もっとも被害が大きくなると思います。
ピークを過ぎると、徐々に被害が収まっていきます。
収まると言うより、枯れてしまったら、2度と侵入できないし、枯れなかった木に侵入しても、上手く繁殖できないので、被害が収まっていくという感じです。
そして、繁殖に適した別の地域に徐々に移っていきます。
ご神木や天然記念物など大切なドングリの木から、ナラ枯れ被害を防ぐ一番の方法は、カシノナガキクイムシの侵入そのものを防ぐことです。
←ただいま穿孔中
カシナガブロック、カシナガホイホイなど侵入を物理的に防ぐ資材を使うことが一番です。
人の手が届く範囲に限られてしまいますが、それでも、侵入を防ぐことが一番の対策です。
ただ、悲しいことに、被害を受けてから対策をとることが多いので、後手にまわるというパターンが多いです。
事前対策の重要性を訴えても、マジ相談は侵入された時が大半です。。。
侵入されたら、枯れない様に祈りましょう・・・・。
侵入された数が少なければ、まずは、これ以上の侵入を防ぐ様に努めましょう。
森林のように広範囲で守りたい場合は、ナラ枯れが発生する前に、しっかりと計画を練って対策に望まないと、後手後手の非効率な手段に陥る可能性が・・・(^_^;)。
ナラ枯れによって起こる問題は何か、何のためにナラ枯れ被害から守るのか。
それを実行するための課題は何か。
決して、ナラ枯れ被害を防ぐという行動そのものが目的にならない様に。
■関連記事■
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます