出張帰りの福岡空港で、
手荷物検査を終えて、
財布やら鍵やらを戻していると、
係員の女性がこちらを凝視している。
え?
何故?
別にあやしいところなどないはずだ。
挙動不審というわけでもないだろうし。
なのに、何故、じっと見る。
すると、係員が近づいてきた言った。
「大福とか食べました?」
「は?」
「口元と、襟のところにも」
慌てて襟を見ると、
そこには白く粉が飛んだような跡が。
ということは、口元もそんなふうに白くなっているに違いない。
「ありがとうございます」
お礼を言って、その場を去り、
トイレで顔を洗う。
白い痕跡の正体は、
歯磨き粉だ。
朝、寝ぼけたまま豪快に歯を磨き、
それがついてしまったらしい。
それにしても、
手荷物検査で、
手荷物ではなく歯磨き粉で引っかかるなんて経験、
そうできるものじゃない。
というか、この事態、
いい歳した大人としてかなりまずいことになっている。