調剤薬局で順番を待っていると、
目の前に老婆とその娘がいた。
娘といっても、僕より年上の女性である。
老婆は壁に貼られたポスターの文章を声に出して読んでいた。
大きな声ではないので別に迷惑ではなかったが、
延々と続けているのはさすがにどうかと思ったのか、
娘が「おしゃべりはちょっと止めましょう」と注意した。
しかし老婆は止めようとはしない。
僕にも認知症の伯母がいたのだが、
伯母もそんなことがしばしばあったのを思い出した。
「私の話、聞こえてる?」と娘。
「聞こえてません」と老婆。
聞こえてるじゃん。
娘もそう思ったようで「聞こえてるでしょ」と繰り返した。
すると老婆も「聞こえてません」と繰り返した。
端から見ると微笑ましくも思えるが、
これも同様の経験をしたことがあるからわかるけど、
家族はとてもストレスに感じていることだろう。
端から見れば喜劇でも当事者には悲劇。
世間ではよくあることだが、今日観たこの光景もその1つ。